皆さん、こんにちは。
イタリアの政局混迷が嫌気されマーケットが揺さぶられました。イタリアでは3月の総選挙以降、欧州連合(EU)への立場をめぐり、懐疑派の新興政党「五つ星運動」と右派政党「同盟」による連立政権樹立が不調に終わったものの、ばらまき政策を掲げるEU懐疑派へのイタリア国民の支持率が高く、マッタレッラ大統領に指名された国際通貨基金(IMF)の元局長カルロ・コッタレッリ氏による組閣が難航しており、数日以内に議会を解散するとの観測が浮上しています。今夏にも選挙が実施される可能性が出てきており、EU懐疑派政党政権を掌握すればEU離脱に向かいかねないとの警戒感が広がり、投資家のリスク回避の動きが強まりました。
イタリアショックの影響があったものの、翌日には過度な警戒感が薄らぎ、市場は落ち着きを取り戻しました。そして、米商務省が発表した2018年1〜3月期の実質GDP(国内総生産)改定値は2.2%増と市場予想を下回る結果でしたが、ほぼ横ばいの安定した数字となりました。また、米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した5月の民間就業者数も17.8万人増と市場予想を下回りましたが、市場の反応は限定的でした。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した12地区の連銀景況報告(ベージュブック)の内容は概ね市場予想の範囲内で市場は殆ど反応しませんでした。世界中のマーケット関係者が注目する5月の雇用統計が米労働省から1日発表されました。景気動向を反映する非農業部門就業者数が前月比22万3,000人増となり、前月の15万9,000人(改定)からの伸びが加速し市場予想も上回りました。失業率も3.8%という結果となり、実に2000年4月以来18年1カ月ぶりの低水準となりました。また、物価上昇の先行指標として注目度が高まってきている平均時給は前年同月比2.7%増となり、適度に伸びたことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が想定する利上げペースに沿う内容と受け止められたようで、NYダウは素直に反発しました。米サプライ管理協会(ISM)が発表した5月の米製造業景況指数や4月の米建設支出が市場予想の伸びとなったことも株価の上昇を後押ししました。
一旦は中止を発表していた米朝首脳会談開催に向けて、トランプ米大統領はホワイトハウスで北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長と会談を行い、米朝首脳会談を予定通り6月12日にシンガポールで開催すると発表しました。トランプ劇場などと揶揄されていますが、一先ず投資家にとっては懸念材料が一つ減少しました。一方、懸念材料として浮上してきているのが、トランプ政権が発表した、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置問題です。対象から一時的に除外していたEU(欧州連合)やカナダ、メキシコに対して、追加関税を発動すると発表し、この措置に対して、EUやカナダは世界貿易機関(WTO)に提訴しており貿易摩擦が激化、今週開催予定のG7サミットに注目が集まっています。
トランプアノマリーでは、トランプ関連でマーケットが失速したところが買いのチャンスになるケースが多いようですが、移動平均線大循環分析では日経225やNYダウ、DAX®のステージに変化が出てきています。ステージの変化を確認しながら対応していきましょう。
週間の概況
◆注目イベント
6月6日(水)10:30(豪国)1-3月期GDP
6月6日(水)21:30(米国)4月貿易収支
6月6日(水)21:30(米国)1-3月期非農業部門労働生産性・確報
6月6日(水)21:30(米国)1-3月期単位労働コスト・確報
6月7日(木) 日米首脳会談
6月7日(木)15:00(独国)4月製造業受注
6月7日(木)18:00(ユーロ圏)1-3月期GDP、確定値
6月7日(木)21:30(米国)新規失業保険申請件数
6月8日(金) G7首脳会議(カナダ、〜9日)
6月8日(金)04:00(米国)4月消費者信用残高
6月8日(金)08:50(日本)4月国際収支-経常収支、貿易収支
6月8日(金)08:50(日本)1-3月期GDP・2次速報
6月8日(金)08:50(日本)1-3月期GDPデフレーター・2次速報
6月8日(金)14:00(日本)5月景気ウォッチャー調査・現状判断DI、先行き判断DI
6月8日(金)15:00(独国)4月鉱工業生産
6月8日(金)15:00(独国)4月貿易収支
6月8日(金)15:00(独国)4月経常収支
6月8日(金)23:00(米国)4月卸売売上高
6月8日(金)未定(中国)5月貿易収支
6月9日(土)10:30(中国)5月消費者物価指数、5月生産者物価指数
6月11日(月)17:30(英国)4月鉱工業生産、4月製造業生産
6月11日(月)17:30(英国)4月貿易収支
6月12日(火) 米朝首脳会談(シンガポール)(予定)
6月12日(火)08:50(日本)4-6月期景況判断BSI・大企業全産業・大企業製造業
6月12日(火)17:30(英国)5月雇用統計、4月ILO失業率
6月12日(火)18:00(独国)6月ZEW景気期待指数
6月12日(火)18:00(ユーロ圏)6月ZEW景気期待指数
6月12日(火)21:30(米国)5月消費者物価指数
※今週は日本やユーロ圏のGDPの結果に注目しましょう。日米首脳会談、米朝首脳会談、G7の内容にも注目しましょう。新規失業保険申請件数の結果も確認しましょう。
チャート分析による銘柄診断
日経225分析
※移動平均線大循環分析の見方はこのレポートの最後にまとめてあります。ご参照ください。
◆現在のステージ
第3ステージ
第3ステージは下降期の入り口です。短期移動平均線が帯を下抜けてきました。
◆今後を読み取る鍵
短期移動平均線と帯の関係に注目していきましょう。
・上昇トレンドに移行する場合は、短期移動平均線が帯を上抜けていきます。
・下降トレンドに移行する場合は、中期移動平均線が長期移動平均線を下抜けていきます。
そこに注目していきましょう。
◆重要な価格
高値24,238円 安値20,369円
※抵抗線・支持線となりやすい価格です。そこを突破することに意味があります。
NYダウ分析
※移動平均線大循環分析の見方はこのレポートの最後にまとめてあります。ご参照ください。
◆現在のステージ
第2ステージ
第2ステージは上昇期の終焉です。短期移動平均線が帯に絡んできました。
◆今後を読み取る鍵
短期移動平均線と帯の関係に注目していきましょう。
・上昇トレンドに移行する場合は、短期移動平均線が帯を上抜けていきます。
・下降トレンドに移行する場合は、短期移動平均線が帯を下抜けていきます。
そこに注目していきましょう。
◆重要な価格
高値25,895ドル 安値23,570ドル
※抵抗線・支持線となりやすい価格、そこを突破することに意味があります。
小次郎講師のVトレーダー養成講座
今週は「認知の歪み」四つ目の「値ごろ病」について図を見ながら検証していきましょう。
では、まず、下の図をご覧ください。価格変動を極端に単純化しています。では、ここで質問です。現在の「価格」は高いでしょうか。それとも安いでしょうか。
価格変動を見ると、安値でしばらくもみ合った後に急騰して、今は高値でもみ合いとなっています。こういう相場展開になったら、ほぼすべてのトレーダーは「高すぎるのですぐに売らなくてはならない」と思うでしょう。ところが、この先、下の図のようにさらなる急騰を見せることがあります。
こうなってしまうと、あのときの価格が高かったとは誰も言えません。つまり、「安いときに買って、高いときに売る」という大原則は「将来の価格と比較して安いときに買って、高いときに売る」ということなのです。現在の価格が過去よりいくら高くても、将来もっと上昇するならそれは安い価格であり、過去と比べてどんなに安そうに見える価格でも、将来もっと下落するなら、それは高い価格だというわけです。
では、来週はこの「値ごろ病」を更に見てきましょう。
移動平均線大循環分析の見方(簡易版)
移動平均線大循環分析とは?
3本の移動平均線の並び順と傾きで現状を分析し、今後の展開を予測する指標です。価格変動の中で買いにエッジ(優位性)が発生する局面、売りにエッジが発生する局面を見つけ出すことができます。
<移動平均線大循環分析>
ステージとは?
3本の線の並び順は全部で6種類。それをステージ1から6と名付けました。(下図参照)
価格変動の中でステージは基本的に時計回りで推移し、ときに一時的に反時計回りで推移します。
つまり現在がステージ1だとすると、次に移行するのはステージ2というのが基本で、ときにステージ6に戻ることがあるということです。これ以外の展開はありません。これにより今後の展開が読みやすくなります。
売買チャンス
ステージ1で3本の線が右肩上がりのときは買いトレードにエッジ(優位性)があります。ステージ4で3本の線が右肩下がりのときは売りトレードにエッジがあります。
帯
移動平均線大循環分析において中期移動平均線と長期移動平均線の間を「帯(おび)」と言います。帯は大局トレンドの状態を示します。
帯による分析
帯が傾きを持ち間隔が広がっている状態が、トレンドが勢いを持っている状態です。間隔が狭まったり傾きが緩やかになるとトレンドが勢いを失ったことがわかります。またもみあい相場では帯は横這いとなり、細くなります。
価格及び短期移動平均線が帯の上にいるのが買い時代、帯の下にいるのが売り時代を表します。
- ※3本の移動平均線は短期5日、中期20日、長期40日のEMA(指数平滑移動平均線)を利用しています。