2020年5月22日の本レポートにおいて、第1四半期の米国家計債務の状況をチェックしました。しかし、当時は新型コロナウイルスやそれに伴う外出制限の影響が十分に反映されておらず(例えば、ニューヨーク州で外出制限が始まったのは3月22日からでした)、前四半期からの変化はわずかに留まっていました。
8月6日にニューヨーク連銀より第2四半期(4〜6月)のデータが新たに発表されましたので、新型コロナウイルス感染拡大以後でその傾向に変化があったのかを確認していきたいと思います。
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米国の家計債務は6年ぶりに減少
ニューヨーク連銀が8月6日に公表した2020年第2四半期の米国の家計における負債残高は14.27兆米ドルとなり、前四半期(14.3兆円)に比べ微減となりました。負債残高が前四半期から減少するのは2014年第2四半期以来の6年ぶりのことです。
主な区分のうち、前四半期からの下落率が最も大きかったのはクレジットカード残高で、-9.3%(-76億米ドル)となり、取得できるデータの中で最も急激な減少となりました。また、自動車ローンは前四半期比-0.2%(-3億米ドル)となり、2011年第1四半期以来、約9年3カ月ぶりに減少しています。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、連邦政府や州政府から外出制限を課され消費機会が減少したことや、失業に伴う所得減少懸念から不要不急の消費を手控えたことが要因と考えられます。
一方で、コロナ禍の中においてもモーゲージ・ローン、即ち不動産ローンはわずかながら上昇しています。FRBによる金融政策の影響を受けて住宅ローン金利が過去最低水準となっていることや、在宅勤務の増加で郊外を中心に住宅需要が発生していることがその影響と考えられます。
ローンの延滞状況は大幅改善
微減となったとはいえ、債務残高は依然として過去最高水準にあることは事実です。これらの債務が不履行(デフォルト)となった場合には、米経済に大きな影響を与える可能性もありますので、その兆候がないかどうかは確認しておきたいところです。
その点、ローン返済の不履行が発生する前にはローン返済の延滞があるだろう、ということでローン延滞状況について見たのが図2です。前四半期と大きく異なる点としては、ローンの延滞率がすべての期間で大幅に改善していることが挙げられます。
また、ローンの種類別に深刻な(90日以上の)延滞となった割合を表したのが図3です。米国では授業料が高騰する中で、学生ローン(奨学金)を利用することが一般化していますが、就職後にその支払いに苦慮する若者が増加しています。それに伴い学生ローンの延滞率は前四半期まで高止まりしていましたが、第2四半期に大きく改善しています。
延滞の改善は吉兆ではない?
第2四半期の延滞状況を見る限り、少なくとも目先で債務不履行が多発するという状況ではないのかもしれません。
しかし、2020年第2四半期といえば、3月後半から外出制限(ロックダウン)が続いており、5月頃より順次緩和されているとはいえ、感染拡大は続いている状況です。4月の失業率は14.7%と戦後最悪を記録し、その後は改善傾向が続いているとはいえ、6月時点でも11.1%とリーマンショック時のピーク(10.0%)よりも悪い状況が続いています。そのような状況の中で本当にローンの支払いを行うことができているのでしょうか?
実は延滞率改善の裏にはトリックがあります。それは「返済猶予」です。トランプ政権の下で成立した経済対策法「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)」や貸し手であるローン会社の救済により、一部の借り手は、返済を一定期間にわたって停止することが認められています。返済猶予が認められた場合、期間中の支払いを行う必要がなく、「延滞」に分類されることもなくなるので、延滞率は大幅に改善したというわけです。
しかし、ローン会社からすると、返済を猶予している間も融資可能枠は圧迫され続けることになるので、新規のローン申請に応じることができなくなる可能性があり、収益機会を失うことにもつながりかねません。また、該当のローンが猶予期間の満了後に返済されることになるのか、不良債権化してしまうか把握することができず、来期以降に想定以上の損失が発生してしまう可能性もありそうです。
返済猶予により目先の債務不履行頻発のリスクは後退したかもしれませんが、問題は先送りされたにすぎないとも言えるでしょう。雇用環境が改善し、借り手側の収入が回復しない限りは将来的なデフォルト懸念は燻り続けることになりそうです。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 多田 幸大
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