先週は4-6月期決算の発表が好調となったことから、消費者物価の上振れや新型コロナの感染再拡大を懸念する流れが断ち切られ、主要3指数が揃って最高値更新に進みました。今週はGAFAMの決算、FOMCの結果発表、インフラ投資法案の進捗、などが注目されます。
今回は4-6月期決算発表で序盤の好決算銘柄から、コカ-コーラ(KO)、チポトレ メキシカン グリル(CMG)、アメリカン エキスプレス(AXP)、デルタ エアーラインズ(DAL)、インテューイティブ サージカル(ISRG)を今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
コミュニケーション・サービス | 3.2% | 4.5% | 9.9% |
一般消費財・サービス | 2.9% | 3.7% | 3.2% |
情報技術 | 2.8% | 6.4% | 7.7% |
ヘルスケア | 2.2% | 4.5% | 6.7% |
S&P500指数 | 2.0% | 4.0% | 5.4% |
資本財・サービス | 1.6% | 1.2% | 2.3% |
素材 | 0.8% | -0.6% | -2.0% |
生活必需品 | 0.4% | 2.5% | 4.4% |
金融 | 0.3% | -2.0% | 2.1% |
不動産 | 0.1% | 3.4% | 9.3% |
エネルギー | -0.4% | -12.2% | 1.7% |
公益事業 | -0.9% | 2.6% | -0.7% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
フェイスブック | 8.4% |
エヌビディア | 7.7% |
スターバックス | 6.1% |
イーライリリー | 5.0% |
アルファベット | 4.8% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
TモバイルUS | -3.6% |
インテル | -3.6% |
ネットフリックス | -2.8% |
デュポン・ド・ヌムール | -2.6% |
USバンコープ | -2.5% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
7/19(月)は新型コロナのデルタ変異株の感染拡大で新たなロックダウン(都市封鎖)が実施され、景気回復が頓挫するとの懸念が台頭、S&P500指数は全面安1.6%の大幅な下落となり、米10年国債利回りも1.2%割れまで急低下しました。
一方、7/20(火)は、新型コロナに関する市場の悲観は行き過ぎとの見方が優勢となり、米10年国債利回りは1.2%台へ切り返し、株式も反発に転じました。先々週来の新型コロナに対する懸念は、「利食いの口実」だったとみられます。その後は、主要企業に好調な決算が相次いだことを背景に上昇基調となり、7/23(金)にはS&P500指数は初めて4,400ポイント台に乗せました。
S&P500指数は週間で2.0%、NYダウは1.1%、ナスダック指数は2.8%の上昇でした。
業種指数では、フェイスブック、アルファベットを含む「コミュニケーション・サービス」、アマゾンドットコムを含む「一般消費財・サービス」、「情報技術」などが相場の上昇をけん引しました。「エネルギー」は原油価格が反発する中で続落となり、1ヵ月の下落率は10%を超えています。個別銘柄で上位の、フェイスブック A(FB)、スターバックス(SBUX)、アルファベット A(GOOGL)は今週の決算発表を控え、好決算をにらんだ先回りの買いが出ている可能性があるでしょう。
経済指標では、米国の6月住宅着工件数が前月比6.1%増の一方、6月住宅建設許可件数が同5.1%減とまちまちでした。6月の中古住宅販売件数は市場予想を下回ったものの、前月比1.4%増と5ヵ月ぶりにプラスに転じて、底入れの形となりつつあります。
今週の米国株式市場
GAFAMの決算、FOMCの結果発表、インフラ投資法案の進捗、などが注目されます。
今週の決算発表には、GAFAM(アップル、アルファベット、アマゾンドットコム、フェイスブック、マイクロソフト)のほか、テスラ、ビザ、3M、ボーイング、ファイザーなどが予定されており、4-6月期の決算発表で最も重要な週です。GAFAMに関しては、1-3月期決算ほどのポジティブサプライズは期待できないものの、引き続き好調を維持しているとみられます。
S&P500指数採用企業の4-6月期EPS(発表済み企業の実績と未発表企業の予想の混合)は、7/23(金)時点で前年同期比74.2%増の予想です。6月末時点の同63.3%増、7/16(金)の同69.3%増と日を追うごとに上方修正となっています。S&P500指数が高値を更新する原動力になっていると言えるでしょう。
7/28(水)のFOMC結果発表では、最近のインフレ指標の上振れに対する考え方、新型コロナの感染再拡大が経済再開に与え得る影響、FRBによる「テーパリング」(資産購入の縮小)の開始時期に関する示唆、などが注目されています。
インフラ投資法案に関しては、7/21(水)に米上院で審議開始に向けた動議の採決を行ったものの、共和党からの賛成は得られず否決されました。しかし、共和党が難色を示している財源問題に調整を施した上で、早ければ7/26(月)にも改めて採決が実施される可能性があるとされます。
経済指標では、7/26(月)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比4.0%増の予想)、7/27(火)に米国の6月耐久財受注(前月比2.0%増の予想)、7月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の127.3から124.0へ低下の予想)。
7/29(木)に米国の4-6月期実質GDP(前期比年率8.5%増の予想)、7/30(金)に米国の6月消費支出物価指数コア(前月比0.6%増、前年比3.7%増の予想)などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は4-6月期決算発表で序盤の好決算銘柄をご紹介いたします。
S&P500指数採用銘柄で、前年同期比増収・増益、かつ、市場予想を上回ったものから、コカ-コーラ(KO)、チポトレ メキシカン グリル(CMG)、アメリカン エキスプレス(AXP)、デルタ エアーラインズ(DAL)、インテューイティブ サージカル(ISRG)を選んでご紹介いたします。
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/23) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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コカ-コーラ(KO) | 57.01ドル | 25.5 | 【パンデミックによる打撃から回復】 ・ノンアルコール飲料の世界最大手で、炭酸飲料やジュース、コーヒー、ミネラルウォーター、スポーツドリンクなどを手がけています。レストランでの提供が多いため、パンデミックによる打撃が大きくなりましたが、売上は2020年4-6月期に底入れして回復基調となっています。 ・4-6月期の買収効果を除くオーガニック売上成長率は、前年同期比37%増と、市場予想の同29%増を上回りました。2021年12月期のオーガニック売上成長率は前年比12〜14%増、EPSは同13〜15%増を見込んでいます。CEOはデルタ変異株による感染再拡大について「感染率が高い州においても影響はみられていない」とコメントしています。 | ||
チポトレ メキシカン グリル(CMG) | 1830.92ドル | 72.1 | 【メキシコ料理のファーストフードチェーン】 ・ブリトー、タコス、ブリトーボウル(トルティーヤ無しのブリトー)及びサラダというメニューを提供するメキシコ料理のファーストフードチェーンです。集団食中毒事件をきっかけとして2016年〜2018年に成長が停滞した時期がありましたが、2019年から成長軌道に回帰しています。 ・4-6月期決算は、売上が前年同期比39%増、既存店売上が同32%増と順調な回復となりました。売上は2019年4-6月期との比較でも32%増えています。新メニューの投入やデジタル分野への投資が成果をあげたとしています。EPSは市場予想を14%上回って好感され、経済再開銘柄の一角として注目を集めているようです。 | ||
アメリカン エキスプレス(AXP) | 173.18ドル | 21.2 | 【グッズ&サービス分野の消費が好調】 ・クレジットカード発行の大手です。同社は自社でクレジットカードを発行して消費者に与信を行っていることから、電子決済のインフラのみを提供しているビザ、マスターカードに比べて、パンデミックによる業績への打撃が大きく、その分足もとの回復も大きくなっています。 ・4-6月期の売上は前年同期比33%増、1-3月期比13%増と順調に回復しています。2019年4-6月期との比較では5%減で、グッズ&サービス分野は16%増まで回復しているものの、トラベル&エンタテインメント分野の落ち込みが足をひっぱっています。4-6月期の純利益は、貸倒引当金の戻し入れにより22.8億ドルと高水準でした。同社のカード保有者の利用額は、1-3月期から加速し始め、6月には2019年のレベルまで回復したとしています。 | ||
デルタ エアーラインズ(DAL) | 40.41ドル | - | 【国内需要は完全に回復】 ・米国の航空大手の一角です。航空業界はパンデミックによる打撃で依然として赤字が続いていますが、経済再開を受けて改善傾向が継続しています。4-6月期の売上は、デルタエアーラインズ、ユナイテッドエアラインズが市場予想を大きく上回ったほか、アメリカンエアラインズもほぼ市場予想並みの回復となっています。 ・7/14(水)に発表された4-6月期の売上は、2019年4-6月期に比べて43%減と1-3月期の同60%減から改善、7-9月期はさらに同30〜35%減まで改善すると見込んでいます。調整後の純損失は1-3月期の22.6億ドルから6.8億ドルに縮小しています。CEOは「国内旅行については2019年の水準に完全に回復、ビジネス客、国際線についても改善の兆しがみられる。2022年の市場回復をにらんで投資を進めている。」と述べています。 | ||
インテューイティブ サージカル(ISRG) | 976.46ドル | 67.7 | 【パンデミックで先送りされた手術需要が回復】 ・手術支援ロボット「ダビンチサージカルシステム」などを販売し、同市場で約8割の世界シェアを持つと推定されます。同社の保有する特許が相次いで期限を迎えていることから競争環境は今後激化していく見通しですが、足もとの業績は好調が維持されています。 ・7/20(火)引け後に発表された4-6月期決算は、売上が新型コロナのパンデミックで落ち込んだ前年同期に比べて72%増となりました。2021年1-3月期比で13%増、2019年4-6月期比でも33%増と順調な回復で、パンデミックの影響で先送りされていた手術が実施されているとみられます。システムの稼働台数は6月末に6,335台で前年比10%増となっています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2021年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
26(月) | ・じぶん銀行日本製造業PMI(7月) ・ドイツIFO企業景況感指数(7月) ・米新築住宅販売件数(6月) |
テスラ |
27(火) | ・中国企業部門利益(6月) ・米耐久財受注(6月) ・米S&Pコアロジック住宅価格指数(5月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(7月) |
アップル、アルファベット、マイクロソフト、ビザ、3M AMD、ゼネラルエレクトリック、UPS アーチャーダニエルズミッドランド |
28(水) | ・米FOMC政策金利 | フェイスブック、ファイザー、ボーイング ペイパルホールディングス、マクドナルド ショッピファイ、ブリティッシュアメリカンタバコ フォード、クアルコム、ユナイテッドレンタルズ |
29(木) | ・ユーロ圏景況感(7月) ・米新規失業保険申請件数(7月24日に終わる週) ・米実質GDP(4−6月期、速報値) ・米中古住宅販売成約(6月) |
アマゾンドットコム、アルトリアグループ ギリアドサイエンシズ、ピンタレスト ロイヤルダッチシェル |
30(金) | ・日本鉱工業生産(6月) ・ユーロ圏失業率(6月) ・米個人所得・個人支出(6月) ・米消費支出物価指数(6月) ・米ミシガン大学消費者マインド(7月、確報値) |
P&G、エクソンモービル、アッヴィ、シェブロン |
8月 2(月) |
・財新中国製造業PMI(7月) ・米ISM製造業景気指数(7月) ・米自動車販売台数(7月) |
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3(火) | ・米製造業受注(6月) | アリババグループ、リフト、コノコフィリップス デュポン、イーライリリィ |
4(水) | ・ユーロ圏小売売上高(6月) ・米ADP雇用統計(7月) ・米ISM非製造業景気指数(7月) |
ゼネラルモーターズ、ブッキングホールディングス ウーバーテクノロジーズ、アルベマール |
5(木) | ・米新規失業保険申請件数(7月31日に終わる週) ・米貿易統計(6月) |
スクエア、ビヨンドミート、モデルナ、イルミナ |
6(金) | ・米雇用統計(7月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成