11/11-11/18の香港市場は小動きでした。主要指数は11/18まで米中首脳会談を好感し、上昇しましたが、11/18にはインフレ懸念による米株安を嫌気し、反落しました。米中首脳会談は大きな進展はなく、市場予想通りの結果になったことも、主要指数の上値を押さえました。一方、個別銘柄では出遅れ銘柄を買い直す動きが活発でした。
今回は、反発の兆しをみせているカジノ関連銘柄についてご紹介します。カジノ関連銘柄は新型コロナの影響やカジノ法案改正の懸念で軟調が続きましたが、足元では見直し買いが入っています。きっかけはマカオ訪問者数の回復です。主な言及銘柄は、金沙中国(01928)や銀河娯楽(00027)、永利澳門(01128)、澳門博彩(SJM)(00880)、MGMチャイナ(02282)です。
図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
注:11/18(木)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。
図表2 香港市場の業種別指数騰落率(11/18(木)までの騰落率によります)
ハンセン総合指数業種別騰落率 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
ハンセン総合 | 0.7% | -0.5% | -1.7% |
生活必需品 | 4.0% | 6.6% | 3.4% |
ヘルスケア | 3.8% | -3.2% | -8.9% |
一般消費財 | 2.8% | 4.9% | 0.5% |
情報テクノロジー | 1.1% | 0.4% | 8.8% |
公益 | 0.6% | 1.1% | -4.9% |
金融 | 0.2% | -1.2% | -5.1% |
電気通信 | -0.4% | -2.1% | -6.8% |
素材 | -0.5% | -9.9% | -7.0% |
工業 | -0.7% | -0.5% | -7.1% |
コングロマリット | -1.1% | -2.6% | -10.1% |
エネルギー | -1.9% | -12.2% | 1.7% |
不動産 | -4.0% | -4.6% | -11.4% |
注:業種別騰落率はハンセン総合指数が母集団です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(11/18(木)までの騰落率によります)
ハンセン指数
騰落率上位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
01928 | 金沙中国 [サンズ・チャイナ] | 5.4% | 10.6% | -20.9% | カジノ大手。マカオ訪問者数の回復を好感し、カジノ関連銘柄が買われた。 |
02269 | 薬明生物技術[ウーシー・バイオロジクス] | 5.3% | -3.1% | -1.2% | バイオ医薬品開発受託大手。バイオ関連銘柄が成長期待で大きく買われた。中国大手証券会社が同社について、「調整は十分」と指摘したことも買い手掛かりとなったもよう。 |
00669 | 創科実業[テクトロニック・インダストリーズ] | 5.3% | 11.4% | 5.9% | 大手電動工具メーカー。地域別売上高構成比は北米が8割と高い。米ホームデポ(HD)の好決算を手掛かりに買われた。 |
00700 | 騰訊控股[テンセント・ホールディングス] | 4.0% | 0.0% | 13.9% | ゲーム大手。7-9月期決算は市場予想を下回ったものの、中国当局がゲームの新規リリース審査を間もなく再開すると伝わり、買いが優勢だった。 |
02020 | 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ・プロ] | 3.3% | 6.9% | -17.4% | スポーツ用品大手。「独身の日」イベントでの販売額が前年同期に比べて61%増加したことが好感された。 |
騰落率下位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
01997 | 九龍倉置業地産投資[ワーフ・リアルエス] | -4.7% | 1.1% | 6.9% | 香港地場の不動産会社。大手証券会社が投資判断を引き下げたことが悪材料に。 |
00101 | 恒隆地産 [ハンルン・プロパティーズ] | -5.2% | -5.7% | -21.8% | 香港の不動産会社。中国本土でも事業を展開している。テクニカル要因のもよう。ボリンジャーバンドの下部バンドを下抜けた後、下落が続いた。 |
00868 | 信義玻璃控股 [信義ガラス] | -9.3% | -10.9% | -29.3% | 大手ガラスメーカー。自動車用や建設用ガラスを手掛ける。10月の不動産投資が市場予想を下回り、建築用ガラスの需要減懸念が重しとなった。 |
02007 | 碧桂園控股 [カントリー・ガーデン・ホール] | -9.3% | -11.7% | -19.7% | 中国不動産最大手。前週は不動産業界に対する融資規制緩和の観測で買われたが、10月の不動産投資が市場予想を下回り、利益確定売りに押された。 |
06862 | Haidilao International Holdi | -10.4% | -33.8% | -30.9% | 火鍋チェーン中国最大手。不採算店舗300店の閉鎖に関し、前向きな評価より業界の厳しさを反映するとの認識が広がった。増資の発表も悪材料となったもよう。 |
ハンセンテック指数
騰落率上位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
09999 | 網易 | 6.9% | 19.1% | 37.4% | ゲーム大手。中国当局がゲームの新規リリース審査を間もなく再開すると伝わり、買い手掛かりとなった。 |
03888 | 金山軟件 [キングソフト] | 5.7% | 10.6% | 0.7% | ゲーム・ソフトウェア大手。中国当局がゲームの新規リリース審査を間もなく再開すると伝わり、買い手掛かりになった。 |
00285 | 比亜迪電子(国際) [BYDエレクトリック] | 4.9% | 16.5% | -20.5% | BYD(01211)傘下のスマホ部品メーカー。電子タバコ向け売上高が来年は倍になる可能性があると経営陣がコメントし、買い手掛かりとなった。 |
01347 | 華虹半導体[フアホン・セミコンダクター] | 4.8% | 18.2% | 10.6% | 半導体受託生産大手。堅調な7-9月期決算と証券会社による目標株価の引き上げが好材料となった。 |
00700 | 騰訊控股[テンセント・ホールディングス] | 4.0% | 0.0% | 13.9% | ゲーム大手。7-9月期決算は市場予想を下回ったものの、中国当局がゲームの新規リリース審査を間もなく再開すると伝わり、買いが優勢だった。 |
騰落率下位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
09988 | アリババ・グループ・ホールディング | -4.4% | -4.2% | -9.1% | EC大手。「独身の日」イベントでの販売額は過去最高となったが、伸び率は低下し、かつ競合のJDドットコム(09618)を下回ったことが嫌気された。11/18は7-9月期決算が市場予想を下回ったことを受け、大幅続落した。 |
00981 | 中芯国際集成電路製造 [SMIC] | -4.9% | 1.8% | -5.3% | 半導体受託生産大手。7-9月期の決算は堅調だったが、同時に発表された人事(数名の幹部が退任)が悪材料となった。同社は経営幹部の頻繁な交代が目立っており、マネジメントチームの再編・安定が大きな課題となっている。 |
00909 | Ming Yuan Cloud Group Holdin | -5.0% | -9.6% | -10.1% | 不動産会社向けソフトウェア大手。10月の不動産投資が市場予想を下回り、調整した。(SBI証券取り扱いなし) |
09961 | 携程旅行網[トリップドットコムグループ | -5.3% | -10.4% | 18.4% | 大手オンライン旅行会社。大株主による保有株売却を嫌気したもよう。(SBI証券取り扱いなし、米国ADR(TCOM)は取り扱い銘柄です) |
02518 | 汽車之家 | -8.6% | -29.3% | -8.7% | 平安保険傘下の自動車インターネットプラットフォーム会社。軟調な決算を嫌気した。(SBI証券取り扱いなし、米国ADR(ATHM)は取り扱い銘柄です) |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。
今週の中国株市況
香港のハンセン指数とハンセンテック指数は週間で(11/18まで)、それぞれ0.3%上昇、0.2%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は、5.1%下落(同)しました。ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の下落は主に11/17-11/18によるものです。米国市場でハイテク株がインフレ懸念で売られたことを嫌気したほか、中国動画配信大手のビリビリ ADR(BILI)とアリババ ADR(BABA)が市場予想を下回った決算で急落したことが響きました。
なお、香港市場の主要指数は11/18まで米中首脳会談を好感し、米中関係悪化懸念の後退で買い優勢でした。ただし、上値は限定的でした。11/15に実施された米中首脳会談は大きな進展はなく、市場予想通りの結果となりました。こうしたなか、11/17の米国市場は高インフレ懸念が重しとなり、主要指数が調整しました。その流れを引き継ぎ、11/18の香港市場は利益確定売りが目立ちました。
業種別では、不動産とエネルギーが調整しました。不動産は、前週は中国当局による融資規制緩和の観測で上昇しましたが、11/11-11/18は利益確定売りに押されました。11/15に発表された10月の不動産投資が市場予想を下回り、売り材料となりました。なお、10月の新築住宅価格は前月比で0.25%下落(市場予想なし)となり、9月に続き下落しましたが、下げ幅は限定的でした。
エネルギーは引き続き、石炭株が足を引っ張りました。石炭株は、石炭先物の下落や石炭会社による石炭価格の引き下げを嫌気し、ヤンジョウコール(01171)を筆頭に続落しました。現地報道によると、石炭会社数社は“みずから”石炭価格を引き下げました。おそらく中国当局による“圧力”があったとみられます。電力不足問題を解決すべく、中国当局は各地方政府や関連企業に対して石炭や電力の供給を増やすよう指示しており、また石炭先物市場にも介入しています。
一方、生活必需品やヘルスケアは騰落率上位に並びました。生活必需品の上昇は、主に飲料水メーカーの農夫山泉(09633)やビール大手の青島ビール(00168)に対する見直し買いによるものです。農夫山泉はハンセン指数への採用が有力視され、急騰しました。青島ビールは中国最大のECセール「独身の日」での販売好調が買い手掛かりとなりました。「独身の日」イベントの主催者であるアリババが運営する「Tモール」の販売ランキングでは、青島ビールがビール部門1位となりました。
ヘルスケアは、金斯瑞生物(GenB)(01548)などバイオ関連の中小型株が上昇をけん引しました。ヘルスケアは中国当局による規制強化懸念などで軟調が続きましたが、バイオ関連は成長期待を背景に見直し買いが入りました。その流れを受け、バイオ医薬品開発受託大手の薬明生物技術(02269)も買われました。薬明生物技術については、中国大手証券会社が「調整は十分」と指摘したこともあり、中国本土投資家による買いが目立ちました。
情報テクノロジーもゲーム関連銘柄の上昇で小幅高となりました。11/16に中国当局がゲームの新規リリース審査を間もなく再開すると報じられたことが、買い材料となりました。ゲーム大手のテンセント(00700)や綱易(09999)、キングソフト(03888)がそろって上昇しました。テンセント(00700)は7-9月期決算が市場予想を下回ったことを受け、決算発表の翌日(11/11)は1%下落しましたが、その後は直ぐ持ち直しました。決算動向を受けた調整幅が限定的だったことを考えると、規制強化による業績悪化懸念は「ある程度十分」株価に織り込んだ可能性があります。
今回のトピックス
11/11-11/18の香港市場では、出遅れ銘柄を買い戻す動きが活発でした。なかでも、カジノ関連銘柄については総じて買い優勢でした。きっかけは、マカオ訪問者数の回復です。マカオ政府の発表によると、11/5-11/11の1日平均マカオ訪問者数は25,443人で、10月の同時期の2.4倍になりました。
マカオ政府は中国本土での新型コロナの感染再拡大を受け、中国本土からの旅行者に対して14日間の強制隔離などを求めていましたが、10/19から解除しました。それ以降、マカオ訪問者数は回復傾向が続いています。なお、月間訪問者数でみた場合、現在はコロナ前の2-3割程度です。今後、世界でワクチン接種の完了を条件とした渡航規制が徐々に解除されるのにつれ、マカオ訪問者数は回復が続く可能性があります。
マカオカジノ関連銘柄指数の動き(図表4)を確認してみると、10月以降、上昇傾向にあります。同指数はマカオでカジノ事業を展開している金沙中国(01928)と銀河娯楽(00027)、永利澳門(01128)、澳門博彩(SJM)(00880)、MGMチャイナ(02282)、メルコリゾート&エンターADR(MLCO)の6銘柄で構成されています。均等加重指数のため、構成比率は各銘柄が約17%となっています。
同指数の一株当たり利益(EPS)は、新型コロナの影響で2020年は2019年の18.2ドルから一転して-26.8ドルとなりました。2021年もマイナスが続く(-20.1ドル)と予想されていますが、2022年には1.5ドルのプラスに転じる見込み*です。マカオ訪問者数の回復や今後の業績回復期待を考えれば、マカオカジノ関連銘柄は見直し買いを探るタイミングかもしれません。
(*Bloomberg集計のコンセンサスによります)
図表4 マカオカジノ関連銘柄指数の推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5 言及銘柄に関するデータ
銘柄 | 株価 11/18 (香港ドル) |
52週高値 (香港ドル) |
52週安値 (香港ドル) |
来期予想 増収率 (%) |
来期予想 増益率 (%) |
金沙中国(01928) | 19.14 | 40.55 | 14.64 | 93.99% | 黒字転換 |
銀河娯楽(00027) | 45.80 | 80.30 | 38.30 | 87.41% | 694.01% |
永利澳門(01128) | 7.20 | 16.68 | 5.80 | 71.67% | 赤字縮小 |
澳門博彩(SJM)(00880) | 6.20 | 11.90 | 5.05 | 148.56% | 黒字転換 |
MGMチャイナ(02282) | 5.47 | 14.62 | 4.81 | 57.34% | 赤字縮小 |
メルコリゾート&エンターADR(MLCO) | 10.94* | 23.65* | 9.64* | 70.93% | 赤字拡大 |
注:予想PER、予想増収率、予想増益率はBloomberg集計のコンセンサスによります。メルコリゾート&エンターADR(MLCO)の株価は米ドルです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。