表1:消費者物価指数(CPI)と貿易収支
物価上昇圧力の減速は予測できたが、消費財の輸入価格まで抑制されているとは予測していなかった
12月のCPIは前月比0.57%上昇となり、事前予想をわずかに下回った。 前年比で見てみると11月の4.15%上昇から12月は3.79%と、21ヶ月ぶ りの低水準まで減速しており、このベース効果が大きいと考えられる。 インドネシア中央銀行は欧州債務問題を背景とする世界景気の減速に 対応すべく、昨年10月以降2ヶ月連続で利下げを実施しており、金融 緩和後の物価コントロールの成果に注目が集まっていた。同国はASEAN の中でも内需の比率が高いため、金融緩和による物価上昇のリスクも 高いのだが、今回の結果を見るに、ひとまずは物価のコントロールに は成功していると見てよいだろう。ただし、CPIへの寄与度の高い食 品・エネルギー価格(主にコメ価格)や卸売物価指数内の項目である 農産物価格等は1年間を通じて高水準を維持していることや、直近の ルピア安によって輸入価格にも上昇圧力が残っていることから、依然 として物価上昇のリスクには慎重な見方をすべきであろう。
しかし、ルピア安が消費財(たとえば電気製品や医薬品)の輸入価格 に与える影響はやや遅れて出てくると考えている。卸売物価指数の内 訳を見ると国際商品市況高を背景に原材料や資本財の価格は上昇してい るにもかかわらず、それらの価格はわずかな上昇にとどまっているから だ。しかし、貴金属価格の急落が輸送関税やクリスマス休暇中の衣料品 価格の急騰を相殺した可能性も考えられ、ヘッドラインの数字は実態と 乖離している可能性があるため、今後も月次の数字には注目が集まる。
図1:項目別の前月比寄与度
多くの項目で物価上昇圧力が弱まるなかでも、食品価格の寄与度低下は大きい
図2:消費者物価指数と政策金利
物価上昇の減速はただちに政策金利の引き下げにはつながらないだろう
図3:インドネシアの貿易収支
輸入の減速によって貿易収支は改善