4−6月期の純利益が2.8倍に急増、本業好調で売上高は46%増 |
米市場への上場を控えた中国の電子商取引最大手、アリババ グループ ホールディング(ティッカーコード:BABA)の業績が好調だ。2014年4−6月期決算は中国でのネット通販事業の成長を背景に売上高が前年同期比46%増の157億7,100万元に拡大した。営業利益は同26%増の68億4,400万元。純利益は企業統合・買収(M&A)関連の評価益が加わり、前年同期の2.8倍に当たる123億4,400万元に急増した。
特に中国の消費者向けネット通販サイトでの取引が大幅に伸びている。総取引額は45%増の5,010億元で、内訳は通販サイト「淘宝網(タオバオ)」が33%増の3,420億元、「天猫(Tモール)」が81%増の1,590億元。6月末時点のアクティブバイヤー数は51%増の2億7,900万人と膨大で、1人当たりの取引回数は年52回に上る。日本の総人口の2倍超に相当する消費者が平均で毎週1回、アリババの通販サイトで注文を出している計算だ。
個人を対象にした通販サイトのうち天猫(Tモール)の伸びが際立っている。Tモールはもともと、タオバオ内に組み込まれた淘宝商城(タオバオ・モール)としてスタートしたが、2012年に独立し、名称も変更した。売り手が個人名義で登録できるタオバオと異なり、Tモールは法人登録が必須で、完全なBtoCの通販サイトに位置づけられる。出店費用や売買手数料など売り手側にかかるコストも高く、このため販売される商品はブランド品などの中・高級品が多い。Tモールの急成長は中国の消費者の購買力の高まりを反映したものであろう。
一方、アリババはモバイルユーザーの需要増にも迅速に対応している。中国ではスマートフォンの普及とともにモバイル端末を通じたネット通販が急速に拡大。アリババの消費者向け通販の総取引額に占めるモバイル取引の割合は4−6月期に32.8%となり、前年同期の12.0%から上昇した。売上高は10.2倍に当たる24億5,400万元に急増しており、消費者向けネット通販の売上高に占める割合は約2割に達している。
買収・業務提携を加速、ネット通販の利便性向上に重点投資 |
アリババは、企業買収や資本・業務提携を加速している。特にネット通販ビジネスの生命線ともいえる宅配サービスの強化に余念がなく、2013年5月には香港上場の復星国際(00656)などと共同で物流会社の設立を決定。同年12月には、ハイアール・グループの海爾電器(01169)と資本・業務提携に乗り出した。海爾電器の物流子会社に出資するとともに、海爾電器の株式2%を引き受け、同社が持つ家電の物流サービスを活用する方針だ。海爾電器は自社製品以外の物流サービスにも力を入れており、地方を網羅するネットワークを保有している。
さらに今年6月には、宅配サービスの一段の強化に向け中国の郵便局に当たる中国郵政集団と戦略提携したと発表した。中国郵政集団の全国ネットワークを利用し、通販利用者の利便性を高める狙いがある。物流以外の分野では2013年に中国で百貨店を展開する銀泰商業(01833)に出資した。ネット通販と実店舗での販売を融合するオムニチャネル戦略の実地試験に乗り出したとみられている。
一方、米国のIT企業への出資にも積極的だ。今年3月にはモバイル端末向けの通話・メッセージアプリを開発する新興企業、タンゴに2億1,500万ドルを出資。7月には携帯端末向けゲーム開発のカバムに1億2,000万ドルを出資する計画が明らかになった。中国のネット通販という観点では畑違いの分野ともいえるが、将来的な成長を見越し、有望分野に布石を打ったと受け止められている。
中国のネット通販市場の急成長続く、16年には2.5倍に拡大へ |
アリババは中国のネット通販市場で約8割という驚異的なシェアを握っているといわれるが、中国ではネット通販市場自体も成長途上で、一段の拡大が見込まれている。アリババが米証券取引委員会(SEC)に提出した上場申請書類によると、2013年の市場規模は1兆8,920億元で、2008年の1,280億元から14.8倍に拡大し、年平均の成長率は70%を優に超えている(iResearch調べ)。
しかもモバイル端末の普及に伴うネット利用層のさらなる拡大や消費者の所得向上、宅配網の整備などを背景に、市場の成長は当面、止まりそうにない。iResearchによると、市場規模は2014年に2兆7,600億元、2015年に3兆7,800億元、2016年に4兆7,720億元に拡大する見通し。3年にわたり実に毎年1兆元(17兆円)近くが上乗せされ、2016年には2013年の2.5倍に膨らむと見込まれている。この間の年平均の成長率は36.1%で、成熟市場には程遠い状況だ。
中国の国内総生産(GDP)に占める個人消費の割合は35.8%で、6割前後の日本や英国、7割近い米国に比べて低い水準。中国政府は内需型経済への転換を目指しており、経済の成熟化とともに個人消費のGDP比の上昇が見込まれる。さらに2013年時点で45.8%のネット普及率は今後、上昇する見込みだ。あらゆる観点で中国のネット通販市場は成長余地が大きい。
アリババ グループ ホールディングの企業概要
【中国のネット通販最大手】中国でインターネット通販サイトの運営を手掛ける。CtoCの通販サイト「淘宝網(タオバオ)」、BtoCの「天猫(Tモール)」が中核で、BtoBの卸売サイト「1688.com」も展開する。中国の消費者向けサイトのアクティブバイヤーは2014年6月末までの12カ月間で2億7900万人、売り手は個人・法人合わせて850万、総取引額は1兆8,330億元(約31兆4,600億円)に上る。国際事業ではBtoCの通販サイト「アリエクスプレス」、BtoBの卸売サイト「アリババ・ドットコム」を運営。