香港市場では足元で、マカオのカジノ関連銘柄が反発の兆しをみせています。きっかけは、マカオ訪問者数の回復です。また10月以降、カジノ免許をめぐる不透明感が和らいできたことも、投資家センチメントを下支えしています。今回は、カジノ関連銘柄をめぐる事業環境や業績動向について確認し、金沙中国(01928) や銀河娯楽(00027) などカジノ関連銘柄をご紹介します。
図表1 主な言及銘柄
銘柄 | 株価(11/23) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
金沙中国(01928) | 20.20香港ドル | 40.55香港ドル | 14.64香港ドル |
銀河娯楽(00027) | 47.95香港ドル | 80.30香港ドル | 38.30香港ドル |
永利澳門(01128) | 7.81香港ドル | 16.68香港ドル | 5.80香港ドル |
澳門博彩(SJM)(00880) | 6.31香港ドル | 11.90香港ドル | 5.05香港ドル |
MGMチャイナ(02282) | 5.90香港ドル | 14.62香港ドル | 4.81香港ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
香港市場では足元で、出遅れ銘柄を買い戻す動きが活発です。なかでも、カジノ関連銘柄が注目を集めています。きっかけは、マカオ訪問者数の回復です。マカオ政府の発表によると、11/5-11/11の1日平均マカオ訪問者数は25,443人で、10月の同時期の2.4倍になりました。
マカオ政府は中国本土での新型コロナの感染再拡大を受け、中国本土からの旅行者に対して14日間の強制隔離などを求めていましたが、10/19から解除しました。それ以降、マカオ訪問者数は回復傾向が続いています。なお、月間訪問者数でみた場合、現在はコロナ前の2-3割程度です。
図表2 マカオ訪問者数とホテル稼働率の推移(月次ベース)

- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
11月17日付の現地報道によると、マカオ行政長官は域内のコロナワクチン接種率が8割(現在は7割)に達した場合、中国本土(一部地域)からの団体旅行が再開される見込みだと発言しました。その他の国・地域については、世界でコロナワクチン接種が進むにつれ、来年には旅行制限が徐々に解除されるだろうとの見通しを示しました。新型コロナの感染状況は予測不可能ですが、ワクチン接種が世界で進んでいることを考えると、今後マカオ訪問者数は回復が続く可能性があります。
マカオのカジノ関連銘柄をめぐっては、新型コロナの影響による訪問者数の変動に加え、カジノ免許をめぐる不透明感も株価を抑える要因となっていました。今年9月に、マカオ政府がカジノ法の改正案を発表した際、「マカオカジノ関連銘柄指数」は急落しました(図表3)。カジノ法の改正案はカジノ免許の付与数や有効期限の変更が含まれていたため、カジノ業界の事業環境に不透明感をもたらしました。しかし10月以降、カジノ免許をめぐる不透明感が和らぐにつれ、「マカオカジノ関連銘柄指数」は回復基調が続いています。
図表3 「マカオカジノ関連銘柄指数」の推移

- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
なお、「マカオカジノ関連銘柄指数」は、マカオでカジノ事業を展開している金沙中国(01928)と銀河娯楽(00027)、メルコリゾート&エンターADR(MLCO)、永利澳門(01128)、澳門博彩(SJM)(00880)、MGMチャイナ(02282)、の6銘柄で構成されています。均等加重指数のため、構成比率は各銘柄が約17%となっています。マカオでのカジノ免許については、6社とも有効期限が2022年6月までとなっています。
図表4 「マカオカジノ関連銘柄指数」構成銘柄の詳細
銘柄 | カジノ免許の 有効期限 |
2019年売上高 (百万米ドル) |
2020年売上高 (百万米ドル) |
系列 |
---|---|---|---|---|
金沙中国(01928) | 2022年6月 | 8,808 | 1,687 | 米ラスベガス サンズ(LVS)傘下 |
銀河娯楽(00027) | 2022年6月 | 6,624 | 1,660 | 香港系 |
メルコリゾート&エンターADR(MLCO) | 2022年6月 | 5,737 | 1,728 | “マカオのカジノ王”スタンレー・ホー氏系列 |
永利澳門(01128) | 2022年6月 | 4,615 | 981 | 米ウィン リゾーツ(WYNN)傘下 |
澳門博彩(SJM)(00880) | 2022年6月 | 4,323 | 968 | “マカオのカジノ王”スタンレー・ホー氏系列 |
MGMチャイナ(02282) | 2022年6月 | 2,906 | 657 | 米MGMリゾーツ インターナショナル(MGM)傘下 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
カジノ法の改正で相場が最も懸念していたのは、2022年6月以降にカジノ免許を失う会社が出てくることでした。背景には、中国当局がマカオ経済の多元的な発展(カジノに過剰に依存しない)を促そうとしていることが挙げられます。しかし、カジノ法の改正案が発表されてから実施されたパブリックコメントの状況やマカオ政府高官の発言などからは、「カジノ免許を失う会社が出てくる可能性はそう高くない」ことが示されました。それを受け、市場では「マカオカジノ関連銘柄指数」構成銘柄の6社とも、2022年6月以降もカジノ免許が付与されるとのコンセンサスが形成されています。
一方、カジノ免許の期間については、従来の20年から短縮される見込みとなっています。極端に短縮された場合(たとえば5年以下)、カジノ運営会社6社にとって事業上のリスクとなり得ます。しかし、マカオ経済に占めるカジノ比率の引き下げは中長期的な課題であり、“ショック療法”ではむしろマカオ経済に打撃を与えかねません。したがって、マカオ政府は期間を極端に短縮するよりも、期間を交渉のカードにして、各社に対してマカオへの投資拡大を要求する可能性が高いとみられます。
「マカオカジノ関連銘柄指数」の一株当たり利益(EPS)は、新型コロナの影響で2020年は2019年の18.2ドルから一転して-26.8ドルとなりました。Bloombergがまとめたコンセンサスによると、2021年もマイナスが続く(-20.1ドル)と予想されていますが、2022年には1.5ドルのプラスに転じる見込みです。四半期ベースでみた場合、各構成銘柄の売上高は2021年7-9月期(Q3)は新型コロナの感染再拡大による影響で下落しましたが、10-12月期(Q4)以降は回復基調を取り戻すと予想されています(図表5)。また、来期はいずれも大幅な増収が見込まれ、純利益ベースでも大方の銘柄が赤字縮小、あるいは黒字転換が見込まれています(図表6)。マカオ訪問者数の回復やカジノ免許をめぐる不透明感後退、および今後の業績回復期待を考えれば、マカオのカジノ関連銘柄は見直し買いを探るタイミングかもしれません。
図5 「マカオカジノ関連銘柄指数」構成銘柄の売上高の推移(四半期ベース)

- *Bloombergがまとめたコンセンサスです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図6 「マカオカジノ関連銘柄指数」構成銘柄の株価と来期業績見通し
銘柄 |
株価 11/23 (香港ドル) |
52週高値 (香港ドル) |
52週安値 (香港ドル) |
来期予想 増収率 (%) |
来期予想 増益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
金沙中国(01928) | 20.20 | 40.55 | 14.64 | 93.99% | 黒字転換 |
銀河娯楽(00027) | 47.95 | 80.30 | 38.30 | 87.41% | 694.01% |
永利澳門(01128) | 7.81 | 16.68 | 5.80 | 71.67% | 赤字縮小 |
澳門博彩(SJM)(00880) | 6.31 | 11.90 | 5.05 | 148.56% | 黒字転換 |
MGMチャイナ(02282) | 5.90 | 14.62 | 4.81 | 57.34% | 赤字縮小 |
メルコリゾート&エンターADR(MLCO) | 11.52* | 23.65* | 9.64* | 70.93% | 赤字拡大 |
- 注:業績予想はBloomgergがまとめたコンセンサスで、増益率はEPSベース(調整後)です。メルコリゾート&エンターADR(MLCO)の株価は米ドルです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。