日経平均採用銘柄で年初来上昇率トップとなっているのはフジクラですが、株価上昇の主因は北米でのデータセンター(DC)向け光通信関連売上の好調です。そこで今回は、フジクラのように光通信関連で恩恵を受けている米国企業がないか、探ってみました。
図表1 注目銘柄
銘柄 | 株価(9/3) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
コーニング(GLW) | 40.67ドル | 46.39ドル | 25.26ドル |
コヒレント(COHR) | 71.88ドル | 80.93ドル | 28.47ドル |
ルメンタム ホールディングス(LITE) | 53.01ドル | 60.99ドル | 35.35ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
日経平均採用銘柄で年初来上昇率トップとなっているのはフジクラですが、株価上昇の主因は北米でのデータセンター(DC)向け光通信関連売上の好調です。そこで今回は、フジクラのように光通信関連で恩恵を受けている米国企業がないか、探ってみました。
〇フジクラは日本の主要銘柄で断トツの上昇
日本市場で光ファイバ大手のフジクラの株価上昇が目立っています。
年初来で3.9倍と、日経平均採用銘柄では、断然トップの上昇率となっています。同銘柄の2025年3月期予想EPSは年初に157円だったものが、四半期決算の発表ごとに上方修正が続いて、9/2(月)時点で251円へ60%も上方修正されています。
業績好調の背景は、SBI証券企業調査部の2024年3月21日付レポート「 【新規買い】質への方針転換を経て、優等生に変貌。データセンター投資の回復で、さらなる利益上積み」によると以下の通り、北米でのデータセンター投資に伴って拡大している光通信関連の売上好調が主因です。
「23/3期の情報通信事業の営業利益のうち、8割程度が北米地域(SBI推定)。同地域では大手クラウド事業者と取引関係があり、多芯光ケーブル、多芯光コネクタなどで競争力をもつ。大手クラウド事業者によるDC投資は23年1-6月を底に回復傾向。通信キャリア向けの光ケーブルは大きく苦戦していると推察されるが、DC向けでの各種製品の出荷増により、逆風下でも堅調な業績であった。」
〇米国にも類似の銘柄がある
データセンターの通信関連で売上が拡大しているとすれば、類似の事業を展開している米国銘柄も恩恵を受けることが想定されます。関連銘柄として、以下の3銘柄をピックアップして株価動向を確認しました。
・コーニング(GLW)(時価総額358億ドル)・・・光ファイバー、LCDガラス、スマホガラスなどに展開。
・コヒレント(COHR)(同119億ドル)・・・幅広い産業に光学部品を提供。
・ルメンタム ホールディングス(LITE)(同39億ドル)・・・光通信機器やレーザー機器などを製造。
株価はS&P500指数と比較して、ルメンタムホールディングスがやや下回るものの、他の2社は上回っており、市場の注目はある程度集まっているとみてよさそうです。特にコヒレントは、株価の上下が非常に激しいものの、年初来では65%の上昇と好調です。
しかし、フジクラが年初来3.9倍になっているのと比べると、まだまだ、出遅れているのかもしれません。事業構成比の違いによる光通信関連の比重の違いが影響している可能性がありますが、これを個別に確認していきましょう。
図表2 フジクラ(5803)の株価(週足、2年)
注:9/3(火)までのデータによります。
※当社WEBサイトをつうじてSBI証券が作成
図表3 米国の類似会社の株価動向
注:9/3(火)までのデータによります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
コーニング(GLW)は時価総額が358億ドルでS&P500指数にも採用されていることから、他の2銘柄に比べて日本の個人投資家にも投資しやすいと考えられることから、詳しくご紹介いたします。
【企業概要】
同社は1936年創業ですが、前身は1851年に設立されたガラス事業まで遡る歴史のある会社です。ガラス関連製品を様々な産業に提供しているため、会社全体の業績動向が把握しにくく、株式市場では投資テーマで取り上げにくい面があります。ただし、ITバブルが発生した2000年前後には、光ファイバー、ディスプレイ事業がともに注目されて、株価は100ドル超へ急騰したこともあります。
光ファイバー関連を含む部門をフジクラと比較すると、フジクラの2024年3月期の「情報通信事業部門」売上が2,970億円で構成比は37%、コーニングの「オプティカル・コミュニケーション」の2023年12月期売上が40億ドル(約5,880億円)で構成比は30%と、構成比ではフジクラのほうが大きい一方、売上の絶対額はコーニングのほうがかなり大きくなっています。
【事業部門】
・オプティカル・コミュニケーション (2023年売上構成比30%)・・・1970年に低損失光ファイバーを初めて開発した会社で、光ファイバー、同ケーブル、光コネクトの分野で引き続きパイオニアとなっています。顧客は通信事業者と大企業(データセンター)があり、足もとでは前者の市場は低調なものの、後者の市場は生成AI向けに活況となっています。
・ディスプレイ(同26%)・・・液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのガラス基板が主力。
・特殊素材(同14%)・・・ガラス関連の特殊素材を供給。スマホ用の強度を強めた「ゴリラガラス」が有名。
・環境技術(同13%)・・・排気ガス処理用のセラミック製品。
・「Hemlock」ほか新規事業(同10%)・・・太陽光発電パネル向けポリシリコンなど。
・ライフサイエンス (同7%)・・・ラボ用品、細胞培養製品。
【業績動向】
生成AI向けの光コネクト製品がけん引して、7-9月期のガイダンスは売上が約37億ドルで前年同期比17%増、調整後EPSは0.50〜0.54ドルで同11〜22%増と、それぞれ4-6月期の同3%増、同4%増から伸びが高まる見通しです。ただし、同ガイダンスは、売上・EPSとも市場予想を下回り、不調な事業も抱えている影響とみられます。
部門別には、オプティカル・コミュニケーション、ディスプレイ、特殊素材、ライフサイエンスは増収増益の一方、環境技術は減収減益、「Hemlock」ほか新規事業は大幅減収で赤字拡大でした。
注目のオプティカル・コミュニケーションは、前年同期比では売上は前年同期比4%増、純利益が同2%増ですが、1-3月期比ではそれぞれ、20%増、43%増と急改善しています。これをけん引しているのが生成AI関連の光コネクト製品で、企業向けの売上(主にデータセンター向け)は前年同期比42%増と伸びています。
2026年にかけて売上はコミュニケーション・サービスがけん引して拡大、純利益は2024年予想164億ドル、2025年予想195億ドル、2026年予想217億ドルと高い伸びが見込まれています(Bloomberg集計のコンセンサス予想)。
図表4 コーニングの部門別売上推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
以下の2社はコーニング(GLW)に比べると会社の規模が小さく、また、光通信関連は歴史的には変動の波が非常に大きく業績が安定しない傾向があり、投資先としては比較的リスクが高いと考えられます。
ただし、光通信の全体に占める割合がコーニングよりも高いため、生成AI関連の投資によって同市場が継続的に拡大する際にはその恩恵が大きくなると期待されます。両社とも2024年6月期までは厳しい業績となっていましたが、2025年6月期以降は売上・利益とも拡大する見通しになっており、注目できるでしょう。
〇コヒレント(COHR)
【企業概要】
光学部品メーカーで、加工素材および光電子部品を設計します。工業、光通信、軍事、ライフサイエンス、半導体装置の各業界のほか、消費者市場に製品を提供します。産業用高出力レーザー用の半導体レーザーや光学部品のほか、光通信システム、データセンター接続、および3Dセンシングの製造も手掛けます。2024年6月期の売上構成比は、ネットワーキング48%、レーザー30%、素材22%です。
【業績動向】
4-6月期の業績は売上が前年同期比9%増、調整後EPSが同34%増と好調でした。AI関連向けに800G光トランシーバーの売上拡大がけん引、1-3月期比でも売上は9%増となりました。7-9月期のガイダンスは、売上が12.7〜13.5億ドルで前年同期比21〜28%増、調整後EPSは0.53〜0.69ドルで同29〜68%増と業績モメンタムは大幅改善の見通しです。なお、同社のアンダーソンCEOは今年6月にラティスセミコンダクターのCEOから移籍しました。これが発表された6月3日に株価は22.9%の上昇と市場から歓迎されました。
〇ルメンタム ホールディングス(LITE)
【企業概要】
光通信やレーザーで使用される光学機器のデザインや製造を行っている企業です。2015年に通信ソリューションを提供するビアビ・ソリューションズ(旧JDSユニフェーズ)から独立しました。2024年6月期の売上構成比は、クラウド&ネットワーキングが80%、インダストリアルテックが20%を占めます。前者は通信事業者やデータセンター向けのオプティカル製品などで、主な顧客としてはグーグル、シエナ、アップル、ノキアなど(ただし、毎年安定して売上があがるわけではありません)があります。後者はレーザー関連製品などが中心になります。
【業績動向】
4-6月期決算は、売上が308百万ドルで前年同期比17%減、調整後EPSは0.06ドルで同79%減でした。7-9月期の売上が315〜335百万ドル(前年同期は318百万ドル)、調整後EPSは0.07〜0.17ドル(前年同期は0.35ドル)です。前年同期比では減益が続きますが、4-6月期からは改善の見通しです。CEOは、「データセンターで用いられるデータ通信半導体向けに史上最高の受注を記録した。クラウドおよびAI顧客のベースを広げる戦略において需要な進展をとげつつある。2025年暦年の成長加速につながるだろう。」とコメントしています。
図表5 コヒレントの業績推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表6 ルメンタムホールディングスの業績推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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