AI関連銘柄で半導体株への物色が一服する中、ソフトウェア株への物色が強まりつつあります。ここ数ヵ月で好材料が出たAI関連のソフトウェア株をご紹介いたします。
図表1 言及銘柄
銘柄 | 株価(9/17) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
サービスナウ(NOW) | 885.83ドル | 899.61ドル | 527.24ドル |
オラクル(ORCL) | 167.47ドル | 173.99ドル | 99.26ドル |
インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM) | 214.13ドル | 218.84ドル | 135.87ドル |
アクセンチュア A(ACN) | 337.04ドル | 387.51ドル | 278.69ドル |
パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 36.45ドル | 37.05ドル | 13.68ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今回はAI関連銘柄の物色が半導体株中心からソフトウェア株に移行しつつある可能性があるので、ご報告いたします。
〇AI関連のソフトウェア株が好調
図表2は、AI関連銘柄の年初来の株価動向を、【AI関連半導体】と【AI関連ソフトウェア】に分けてプロットしたものです。注目したいのは、6月以降の動向です。
半導体銘柄が、横ばい圏での推移、または、下落基調となっているのに対して、ソフトウェア銘柄は上昇基調となっているのが確認できます。
ソフトウェア銘柄については、この間に好材料が出て株価も堅調なものをリストアップしていますので、AI関連のソフトウェア株全体を反映しているわけでないことにはご注意ください。
例えば、AI関連として注目が高いアドビ(ADBE)に関しては、直近の四半期決算が失望され9/13(金)に8.5%下落したため含めていません。ただ、それでも同社の株価は6月以降は上昇基調となっており、やはり、AI関連の物色はソフトウェアに回ってきている可能性が高そうです。
9/16(月)にナスダック指数は0.5%の下落となっていますが、リストアップした5銘柄はいずれも前日比1%以上の上昇で、5銘柄平均では2.2%の上昇となっています。
〇ソフトウェア株が好調となる理由
2023年初めに生成AIがビジネスに有用だとの見方が広がり、実際に多くの企業がAIを利用するに至る段階は以下のように(1)、(2)、(3)の段階を踏んで進んでいくと考えられます。
(1)データセンターでのAIコンピュータへの投資
・エヌビディア、AMD、ブロードコムなどAIコンピュータを供給する半導体企業の活躍が期待されます。
(2)AIデータセンターを利用したAIモデルの開発・利用
・AIコンピュータに投資したクラウドサービスプロバイダー(マイクロソフト、アルファベット、メタプラットフォームズ、オラクルなど)が独自のサービスを展開したり、顧客企業に設備を利用してもらい投資を収益化すると期待されます。
・事業会社によるAIモデルの開発・運用に、エヌビディア、IBM、アクセンチュア、サービスナウなどが関わって活躍が期待されます。
(3)事業会社によるAI利用の広がり
・AI利用がIT大手だけでなく、幅広い産業の大手企業に広がっていく段階です。まだ、はっきりと成果が出た事例がなく、今後の注目点です。
・事業会社のAI利用とは異なりますが、アップルがiPhoneにAI機能を追加したことで、iPhoneの買い替えが促進されるがどうかは、一つの試金石として注目です。
最初はAIコンピュータの投資から始まるため、同市場を支配しているエヌビディアが物色の中心となりました。その後は、AIモデルの開発に関わる企業群へ物色が広がっていく見込みです。エヌビディアは半導体だけでなく、AIのソフトウェアの分野でも最大級のリソースを保有しているため、引き続き活躍が期待されます。最後に、生成AIを事業にうまく取り込んで、売上の拡大につなげたり、利益率を大きく改善する企業が注目されるでしょう。
現在、(2)〜(3)の段階に差し掛かっているとみられ、ソフトウェア株の活躍が期待される時期と考えられます。
図表2 AI関連銘柄の物色動向
注:データは9/17(火)まで。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
第1節でAI関連のソフトウェア銘柄としてピックアップした銘柄の最近のAI関連の好材料をご紹介いたします。
・サービスナウ(NOW)
4-6月期決算では、市場予想に対して売上が1%、EPSが9%上回って好調でした。マクダーモットCEOは「生成AI指向の製品の採用が売上の押し上げに貢献している」と述べました。
・オラクル(ORCL)
6-8月期決算では、AIサーバー需要の拡大を背景にクラウドインフラストラクチャの収入(全売上の17%を占める)が前年同期比45%増と全体の増収をけん引しました。また、同期に新たに42の企業と、30億ドルに達するAIサーバーの利用契約を獲得しています。
・インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)
4-6月期決算では、2023年半ば以降のAI事業の累計受注額が4月時点の10億ドルから7月には20億ドルに急拡大していると開示されました。顧客企業は「我々の技術とエンタープライズAIの専門性を理由に頼ってきている」とコメントしています。
・アクセンチュア A(ACN)
AI関連の3-5月期新規受注は9億ドルで、昨年央からの累計受注額が20億ドルに達しました。足もとで加速していることが確認され、企業からのAIに関する相談案件が増えていることがわかります。
・パランティア テクノロジーズ A(PLTR)
AI向けの好調で米国の民間向け売上が前年同期比55%増と1-3月期の同40%増から加速しました。AIソフトウェアには継続的な需要があるとして、通期の売上高および営業利益の見通しを上方修正しました。
サービスナウ(NOW) | 時価総額: 1,838億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
23.12 | 90 | 24% | 18 | 410% | 8.55 |
24.12予 | 109 | 22% | 29 | 63% | 13.77 |
25.12予 | 132 | 21% | 35 | 21% | 16.50 |
26.12予 | 158 | 20% | 43 | 23% | 20.03 |
株価(9/16): 892.46ドル | 予想PER(24.12期): 64.8倍 |
企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供します。同社の事業はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。4-6月期決算は、売上が前年同期比22%増、調整後EPSが同32%増、流動残存履行義務が同22%増と好調です。マクダーモットCEOは「生成AI指向の製品の採用が売上の押し上げに貢献している」と述べています。
オラクル(ORCL) | 時価総額: 4,720億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
24.5 | 530 | 6% | 110 | 22% | 3.88 |
25.5予 | 580 | 10% | 178 | 63% | 6.23 |
25.12予 | 510 | 20% | 188 | 23% | 4.19 |
26.5予 | 647 | 12% | 204 | 15% | 7.09 |
株価(9/16): 170.33ドル | 予想PER(25.5期): 27.3倍 |
企業向けデータベース管理ソフトウェアでトップの企業。最近はクラウドサービスへの展開にも注力しています。2023年5月期の売上は、クラウドサービス37%、ライセンスサポート37%、クラウドライセンス&オンプレミスライセンス10%、ハードウェア6%、サービス10%です。6-8月期決算は売上が前年同期比7%増、EPSは同20%増と堅調、残存履行義務が同56%増と好調です。AIサーバー需要の拡大を背景にクラウドインフラストラクチャの収入(全売上の17%を占める)が前年同期比45%増と全体の増収をけん引しました。同期に新たに42の企業と、30億ドルに達するAIサーバーの利用契約を獲得しています。また、アマゾンのクラウドサービス「AWS」とデータベースに関する広範な提携を結びました。
インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM) | 時価総額: 2,000億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
23.12 | 619 | 2% | 79 | 21% | 8.60 |
24.12予 | 632 | 2% | 95 | 19% | 10.15 |
25.12予 | 662 | 5% | 100 | 5% | 10.62 |
26.12予 | 691 | 4% | 106 | 6% | 11.34 |
株価(9/16): 217.16ドル | 予想PER(24.12期): 21.4倍 |
ITサービスの大手。クラウドサービスの台頭により、古いタイプのITシステムで大きなシェアを持っていた同社の売上が伸びない時期が続いたものの、事業の取捨選択を進めて業績モメンタムは改善しつつあります。4-6月期決算では、2023年半ば以降のAI事業の累計受注額が4月時点の10億ドルから7月には20億ドルに急拡大していると開示されました。同社CEOはAI関連の受注の約4分の3はコンサルティングで、残りはソフトウェアだと説明し、時間の経過とともに、ソフトウェア収入のシェアは高まる公算が大きく、この結果、利益率が高まる見通しです。
アクセンチュア A(ACN) | 時価総額: 2,221億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
23.8 | 641 | 4% | 74 | 7% | 11.67 |
24.8予 | 649 | 1% | 76 | 3% | 11.91 |
25.8予 | 685 | 6% | 81 | 7% | 12.83 |
26.8予 | 735 | 7% | 90 | 10% | 14.13 |
株価(9/16): 354.12ドル | 予想PER(25.8期): 29.7倍 |
ITサービスと経営コンサルティングが2本柱。企業が自社の事業にAIを取り入れようとするとき、どのような分野でどのように取り入れたらよいかについて相談する相手として同社が選ばれると期待されます。実際に3-5月期決算のAI関連の新規受注は9億ドルと、昨年央からの累計受注額が20億ドルということなので、受注が加速していることがわかります。受注額全体は211億ドルなので、まだ5%に満たないものの、今後も加速して存在感が高まることが期待されます。3-5月期の売上は前年同期比1%減と低調ながら、新規受注額は同22%増となっているため、2025年8月期は業績モメンタムの改善が見込まれます。なお、同社は9/26(木)に2024年6-8月期の決算を発表予定です。
パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 時価総額: 813億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
23.12 | 22.3 | 17% | 2.2 | 黒字転換 | 0.09 |
24.12予 | 27.6 | 24% | 8.7 | 295% | 0.36 |
25.12予 | 33.4 | 21% | 10.7 | 23% | 0.43 |
26.12予 | 40.2 | 21% | 13.2 | 23% | 0.52 |
株価(9/16): 36.31ドル | 予想PER(24.12期): 100.9倍 |
2003年に創業したビッグデータを分析するためのソフトウェアを提供する企業です。米国政府を中心とする政府向けの売上が55%を占め、45%が民間企業向けです(2023年12月期)。2023年からAI向けに需要が急拡大しています。AIモデルのトレーニングには大量のデータを使う必要があることから、同社ソフトウェアの応用範囲が広がっているようです。拡大する需要に対して「Palantir AIP(Artificial Intelligence Platform)ブートキャンプ」を企業向けに実施して、顧客需要の取り込みに努めています。4-6月期決算は売上が前年同期比27%増、調整後EPSが同80%増で、それぞれ市場予想を4%、10%上回って好調です。AI向けの好調で米国の民間売上が前年同期比55%増と1-3月期の同40%増から加速、さらに政府向けも防衛省向けの案件で伸びました。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
免責事項・注意事項
- 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
- レバレッジ型・インバース型 ETF等(ETN含む)は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。レバレッジ指標の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率のレバレッジ倍(又はマイナスのレバレッジ倍)とは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。上記の理由から、一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品といえます。投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。レバレッジ型・インバース型 ETF等に係る商品の特性とリスクについてはこちらのリーフレットをあわせてご確認ください。