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“ダウ200MA到達!全体底上げから銘柄選別へ”
2019/2/5
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、増渕 透吾
- FRBは1/30のFOMC後の声明文で、「先行きの政策金利の調整を様子見する(be patient)だろう」と明記し、保有資産の縮小も「修正する用意がある」と明言、政策転換のスタンスを示唆した。一方で、2/1に発表された雇用統計では非農業部門の雇用者数が30.4万人増加し、市場予想を大幅に上回り、ISMの1月製造業景気指数も56.6と前月から上昇、市場予想を上回るなど、米国経済の景気の底堅さを示した。これを受けて、米国10年国債利回りも上昇する一方で、時間当たり賃金は前月比0.1%増と前月から伸びが鈍化した。以前よりデータ重視を明言していたパウエル議長からすれば、強い景気指標とインフレ圧力の落ち着きから、政策転換の必要に乏しいところだが、「株式市場こそ経済である」と公言するトランプ大統領の軍門に下り、株式市場に最大限の配慮・サービスだったのであろうか。奇しくも、トランプ大統領が「この30年でダウは最良の1月だった」とツイートして実績を誇示することへの支援となった。
しかしながら、急速な戻りを付けたこの1月でさえ、米国エクイティ・ファンドからの資金流出と債券への資金流入が続いている。特に1/30のFOMC以降は米国10年国債利回り低下と株価指数上昇という逆相関が見られるなど、株価上昇が安定した資金流入の基盤に立っているものではなく、12月下旬までの売られ過ぎに対する反動としての買い戻しの延長線の域を出ない懸念は残り、注意が必要である。
- また、個別銘柄を見ても、先週は、アップル(APPL)、フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、エヌビディア(NVDA)などの決算発表が相次いだ。元々の期待値が高かったアマゾンやマイクロソフト、並びに4Q業績見通しから先行き警戒が強まったエヌビディアは発表後に売られる一方、既に月初に下方修正で売りが先行、iPhone以外の事業が好調だったアップル、業績不安視に対して年末商戦の広告収入が好調だったフェイスブックは発表後に買われるなど、銘柄による違いが鮮明となった。今後の投資に際しては銘柄選別がより重要になるとの示唆かも知れないが、上記銘柄の中では、相次ぐ個人情報流出の苦境に対しても業績の頑強さを示したフェイスブックのような銘柄は、今後も下値抵抗力を期待できるものと考える。
株価指数の水準も、NYダウで見ると10/3高値26,951ドルから12/26安値21,712ドルの半値戻し24,332ドルを超え、200日移動平均の25,034ドル(2/1現在)に到達した。半値戻しを一気に超えてきた需給面は評価できるが、ここは慌てず、押し目の状況を見極めつつ、昨年前半に滞留期間が長かった24,000〜25,500ドルの範囲内で均衡水準・落ち着き所を探ってレンジ相場に移行する展開も想定すべきだろう。(笹木)
- 2/5号では、
ボーイング(BA)、フェイスブック(FB)、ハネウェルインターナショナル(HON)、イルミナ(ILMN)、KLAテンコール(KLAC)、エクソンモービル(XOM)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(1/25現在)
2月4日(月) | アルファベット、シーゲイト |
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2月5日(火) | BP、ディズニー |
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2月6日(水) | INGグループ、BNPパリバ、ダイムラー、GM、メットライフ |
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2月7日(木) | ツイッター、フィアット・クライスラー |
2月4日(月) | - メルケル独首相、訪日(5日まで)
- クリーブランド連銀総裁、講演
- 中国、春節の休場スタート(11日に取引再開)
- 製造業受注(11月)、米 耐久財受注(11月)
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2月5日(火) | - トランプ大統領、下院で一般教書演説
- ISM非製造業景況指数(1月)
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2月6日(水) | - パウエルFRB議長、教育者とのタウンホールミーティング主催
- 貿易収支(11月)、 労働生産性(10−12月)
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2月7日(木) | - セントルイス連銀総裁、講演
- 英中銀、政策金利・インフレ報告公表
- 新規失業保険申請件数 (2月2日終了週)、消費者信用残高 (12月)
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2月8日(金) | |
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2月10日(日) | - グラミー賞授賞式
- 中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ (1月、15日までに発表)
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- 1916年創業。航空・宇宙機器製造会社。民間航空機、防衛・軍用機、電子・防衛システム、衛星、衛星打ち上げ機、高度情報通信システムなどを手掛ける。150ヵ国以上で展開する。
- 1/30発表の2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比14.4%増の283.41億USD、純利益が同3.1%増の34.24億USD。調整後EPSは5.48USDと市場予想の4.59USDを上回った。売上高、純利益とも4Qとして過去最高を更新。商用機の引渡しが同14%増の238機と伸びた。
- 2019/12通期計画は、売上高が1,095-1,115億USD、調整後EPSが19.90-20.10USD。通期市場予想は、売上高が前期比8.5%増の1,097.57億USD、当期利益が同16.6%増の121.94億USD。1/23、空飛ぶクルマとして開発している自動飛行航空機の初飛行実験に成功。(増渕)
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- 2004年にマーク・ザッカーバーグCEOらがサービスを開始。無料の登録制SNSで13歳以上が登録できる。ソーシャルネットワーク・ウエブサイトを運営、ユーザー間で情報、写真、ビデオなどの共有サービスを展開。アジア太平洋、欧州、米国やカナダを中心に展開している。
- 2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比30.4%増の169.14億USD、純利益が同61.2%増の68.82億USD。EPSは2.38USDと市場予想の2.18USDを上回った。年末商戦期の広告収入が伸び、個人情報保護などの規制対策費用を吸収した。
- 2019/12通期市場予想は、売上高が同23.4%増の689.0億USD。決算発表の電話会議で、傘下の「Messenger」、「Instagram」、「WhatsApp」の統合に関する計画も議題に上る。個人情報保護に係る規制対策費用への懸念は残るが、攻めの経営姿勢を評価したい。(笹木)
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- 1885年にサーモスタットを発明したアルバート・バッツが創業。テクノロジー・製造分野の複合企業で、航空宇宙、ビルや産業向け制御技術、パフォーマンスマテリアルズなど提供する。
- 2/1発表の2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比10.3%減の97.29億USD、純利益が17.21億USDと前年同期の▲25.19億USDから黒字転換。オーガニック売上高は同6%増。商用機や防衛、自動倉庫が牽引。調整後EPSは1.91USDと市場予想の1.88USDを上回った。
- 2019/12通期会社計画は、売上高が360-369億USD、オーガニック売上高が前期比2-5%増、EPSが7.80-8.10USD。2019/12通期市場予想は、売上高が同11.6%減の369.35億USD、当期利益が同14.1%減の48.08億USD。同社はソフトウエア・インダストリアル・カンパニーへの転換を図っており、ソフトウェアやコネクティッドなどの事業は2桁の伸びを示したもよう。(増渕)
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- 1998年設立。DNAシーケシング、DNAマイクロアレイなど遺伝子解析のグローバルリーダー。シーケンスキット、マイクロアレイキット、分子生物学用試薬、情報解析ツールなど提供する。
- 1/29発表の2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比11.4%増の8.67億USD、純利益が同3.1倍の2.10億USD。調整後EPSは1.32USDと市場予想の1.35USDを下回った。ハイスループットの「NovaSeq」からロースループットの「iSeq」まで幅広い機能帯で試薬販売が伸びた。
- 2019/12通期計画は、売上高が前期比13-14%増、EPSが6.07-6.17USD、調整後EPSが6.50-6.60USD。調整後EPSの見通しは市場予想の6.44USDを上回った。2019/12通期市場予想は、売上高が同13.3%増の37.75億USD、当期利益が同12.1%増の9.65億USD。同社はPacific Biosciencesを買収する。シーケンシング技術の統合により、ゲノム全体の解読を目指す。(増渕)
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- 1975年創業。半導体・ナノエレクトロニクス産業向けプロセス制御、歩留まり解析システムのサプライヤー。光学系、センサー、検査装置、計測装置、データ解析システムを提供する。
- 2019/6期2Q(10-12月)は、売上高が前年同期比14.8%増の11.19億USD、純利益が3.69億USDと前年同期の▲1.34億USDから黒字転換。売上高・EPSともに計画を上回って着地。税制改革に伴う一時費用の反動も出た。調整後EPSは2.44USDと市場予想の2.20USDを上回った。
- 2019/6期3Q(1-3月)会社計画は、売上高総利益率が60.9-61.9%(オルボテックの買収費用を除く調整後ベースで61.0-62.0%)、EPSが1.35-1.67USD(同1.39-1.71USD)。通期市場予想は、売上高が前期比2.9%増の41.54億USD、当期利益が同58.7%増の12.73億USD。(増渕)
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- 1999年にエクソンとモービルの合併により設立。スーパーメジャー6社の1社。世界各地で石油とガスの探査・生産を行う。発電、鉱山事業やガソリン、潤滑油の製造・販売も手掛ける。
- 2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比8.1%増の718.95億USD、純利益は同28.4%減の60.00億USD。EPSは1.41USDと市場予想の1.08USDを上回った。北米有数の油田地帯パーミアン盆地での生産が伸びたことから、利益が市場予想を30%余り上回った。
- 2019/12通期市場予想は、売上高が前期比10.9%増の2,976.83億USD、純利益が同9.0%減の189.58億USD。2019/12通期の会社計画は、投資採算の良いパーミアン盆地とガイヤナ国の油田を中心に、投資額を前年比16%増の300億USDとしている。(笹木)
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