“データ主導経済がもたらす雇用の変化とは?”
- データ主導経済下の企業の競争力強化に伴う動きがマクロ経済を変質させているのだろうか?9/3週の米国株式市場は、9/3発表のISM製造業景況感指数(8月)が3年ぶりに50を割り込んだことを受けて9/3にNYダウで25,978ドルまで下落したが、9/4以降に立て続けに現われた好材料に後押しされて9/6にNYダウで26,860ドルと8/1以来の高値を付ける強い動きとなった。9/4発表の財新中国非製造業PMI(8月)が50を上回ったこと、香港政府による「逃亡犯条例」の改正案撤回、および英国の「合意なき離脱」回避の可能性の高まりなどの好材料が集中した。更に9/5発表のISM非製造業景況指数(8月)が56.4と市場予想を大きく上回り、9/6発表の8月雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったものの同日のパウエル議長発言と併せて0.25%ポイントの利下げ期待を高めるものと捉えられ、株価上昇を後押しした。米10年国債と2年国債利回りの「逆イールド」も解消されるなど市場に安堵感が拡がっている状態と言えよう。
- ISM製造業景況感指数(8月)およびISM非製造業景況感指数(8月)の個別項目である「雇用」は、製造業が前月比4.3ポイント低下の47.4、非製造業が前月比3.1ポイント低下の53.1と大幅低下が目立つ。8月雇用統計では製造業の2019/1-8の就業者数増加幅(月平均)が前年同期の2万2千人から6千人に減少し、小売業もネット通販台頭から2019/1-8で合計8万人縮小するなど楽観視できない状況と言える。しかしながら、データ主導経済において企業がプラットフォームに大量かつ多様なデータを収集してAIや機械学習・深層学習などを駆使し、ビジネス効率化によって競争力を高めていけば、雇用者数は増加しにくいのが道理であろう。プラットフォーマーとしての地位を確立した企業は生産性を高め、賃金上昇の余地も生まれる。雇用統計における平均時給伸び率の高さと製造業や小売業の就業者数伸び悩みが両立する背景には、このような企業の競争力強化に伴う大きな構造変化があるものと考えられる。
- 9/6にNY州など複数の州と地区が
フェイスブック(FB)を反トラスト法違反で調査すると発表するなど、巨大プラットフォーマーとして覇権を握ってきた「GAFA」への逆風の兆しが見える。その一方、
IBM(IBM)のようにRed Hatの買収によりオープンソース技術を通じて世界のプラットフォーム総取りを狙う「ポストGAFA」の動きも出始めている。企業間競争の行き着く先は、一部の企業への富の集中とビジネス効率化の代償としての雇用減少なのかも知れない。(笹木)
- 9/10号では コストコホールセール(COST)、 イリノイ・ツール・ワークス(ITW)、 ルルレモン・アスレティカ(LULU)、 パロアルトネットワークス(PANW)、 タンデム・ダイアベティス・ケア(TNDM)、 ウエスタンデジタル(WDC)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(9/6現在)
主要企業の決算発表予定
9月12日(木) | クローガー、ブロードコム、オラクル |
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主要イベントの予定
9月10日(火) |
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9月11日(水) |
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9月12日(木) |
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9月13日(金) |
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9月16日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
コストコホールセール(COST)市場:NASDAQ ・・・2019/10/4に2020/8期4Q(6-8月)の決算発表を予定
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イリノイ・ツール・ワークス(ITW)市場:NYSE ・・・2019/10/21に2019/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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ルルレモン・アスレティカ(LULU)市場:NASDAQ ・・・2019/11/27に2020/1期3Q(8-10月)の決算発表を予定
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パロアルトネットワークス(PANW)市場:NYSE ・・・2019/11/27に2020/7期1Q(8-10月)の決算発表を予定
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タンデム・ダイアベティス・ケア(TNDM)市場:NASDAQ ・・・2019/10/28に2019/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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ウエスタンデジタル(WDC)市場:NASDAQ ・・・2019/10/24に2020/6期1Q(7-9月)の決算発表を予定
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