“FRBの資産拡大が年末相場を支えるか?”
- 最近のFRBは、流動性注入によってドル資金調達市場を落ち着かせ、短期金利の制御を強めるため、レポ取引や短期国債(財務省短期証券)購入を実施している。短期国債購入はこれまでの資産購入プログラムと異なり長期金利を押し下げて景気を下支えするのが目的ではないため、QE(量的緩和)ではないとFRBは論じているが、株式市場はFRBのバランスシート拡大をQEとみなし、株価上昇を後押ししたのではないかという見方が株式市場で台頭している。
- 11/25週の米国株式市場は、11/28以降の米国感謝祭シーズン入りを前にして薄商いながら堅調に推移し、11/27にはダウ工業株30種平均株価(NYダウ)で28,174ドルの史上最高値を付けた。その後、トランプ大統領が香港基本人権法案に署名し同法が成立したことから、中国の反発で米中通商協議への影響が懸念された。11/29のNYダウは終値で前日比112ドル安となったものの、28,051ドルと節目の28,000ドルを維持して引けた。
- FRBのバランスシートは8月末の3兆7,600億ドルから11/20時点で4兆500億ドルに拡大し、2017年後半以来の圧縮幅の40%近くを取り戻した形となった。年末特有の資金需要への対応だけでなく、拡大する米国の財政赤字穴埋めに必要な米国債入札に伴う資金需要に対して手元流動性を確保するため、レポ取引実施とともに短期国債購入が行われていると見られる。その一方、11/18にはパウエルFRB議長とトランプ大統領、およびムニューシン財務長官の会談が行われ、マイナス金利を含む政策金利の水準について議論したと報じられた。FRBが政策金利の引き下げを当面停止すると見られていることに対し、米中貿易協議が合意に至らないことがあった場合に備えてバランスシート拡大によって景気を一定程度は下支えすることが期待されても不思議ではないだろう。
- ただし、ファクトセットのデータに基づく2019年のS&P500株価指数のEPS(1株当り利益)市場予想は、2019年初では174USDでPER(株価収益率)が14.2倍だったのに対し、11/15時点では163USDで対年初比6.3%減となり、PERは19.2倍となった。S&P500株価指数で11/15終値が対年初比26.0%上昇の3,120ポイントとなったこととは対照的に、市場の利益予想は悪化している。FRBのバランスシート拡大への安心感が株式市場のバリュエーション上昇を支えている面があると考えられるが、2019/12上旬に発表される各種景気指標次第ではバリュエーション面の割高感が目立つようになる懸念もあり、注意が必要であろう。(笹木)
- 12/3号では、オートデスク(ADSK)、ホーメルフーズ(HRL)、ターゲット(TGT)、ヴイエムウェア(VMW)、ウエイスト・マネジメント(WM);、 ウエスタンユニオン(WU)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(11/29現在)
主要企業の決算発表予定
12月3日(火) | セールスフォース・ドットコム |
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12月4日(水) | キャンベルスープ、シノプシス、H&Rブロック |
12月5日(木) | ティファニー、ダラー・ゼネラル、クローガー、ブラウン・フォーマン、アルタ・ビューティ、クーパー |
主要イベントの予定
12月3日(火) |
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12月4日(水) |
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12月5日(木) |
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12月6日(金) |
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12月7日(土) |
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12月8日(日) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
オートデスク(ADSK)市場:NASDAQ ・・・2020/2/27に2020/1期4Q(11-1月)の決算発表を予定
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ホーメルフーズ(HRL)市場:NYSE ・・・2020/2/20に2020/10期1Q(11-1月)の決算発表を予定
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ターゲット(TGT)市場:NYSE ・・・2020/3/5に2020/1期4Q(11-1月)の決算発表を予定
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ヴイエムウェア(VMW)市場:NYSE ・・・2020/2/27に2020/1期4Q(11-1月)の決算発表を予定
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ウエイスト・マネジメント(WM)市場:NYSE ・・・2020/2/13に2019/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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ウエスタンユニオン(WU)市場:NYSE ・・・2020/2/6に2019/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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