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“コロナショックは「リーマンショック級」なのか?”
“コロナショックは「リーマンショック級」なのか?”
2020/3/3
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“コロナショックは「リーマンショック級」なのか?”
- 新型コロナウイルス・ショックを受けてダウ工業株30種平均(NYダウ)が週間ベース(2/21終値から2/28終値まで)で12.36%の下落率に達し、週間下落率が2008年のリーマンショック以降で最大となった。「リーマンショック級」という言葉が色々な所で聞かれ始めたが、2008年の秋、当時のグリーンスパンFRB議長がその影響を「100年に一度」と形容したことが思い起こされる。奇しくも、2/28にビル・ゲイツ氏が新型コロナウイルスについて「100年に一度」発生するレベルの病原菌とし、感染拡大を遅らせるために富裕国が中・低所得国の医療制度強化を支援するべきと述べた。約100年前の1918年から1919年にはスペインかぜが大流行し、当時の人類の3割近くが感染したと言われている。当時と現在とでは医療水準も衛生環境も異なり同列に論じる意義はないのかもしれないが、パンデミックを回避するためのあらゆる努力がなされるべきであろう。
- 株式相場に関し、先週号(2020年2月26日号)の「2年前のVIXショックの時と似ているか?」で述べたとおり、2/28にVIX指数は2年前の2/6の日中高値50.30%に迫る水準である49.48%まで一時的に跳ね上がり、まさに2年前と似ている面が示された。ただし、2年前のVIXショックの際には、NYダウの1/26高値から4/2の安値23,344ドルまで3,272ドル安だったのに対し、NYダウの今年の高値(2/12の29,568ドル)から2/28安値24,681ドルまでの下落幅が4,887ドルに達するなど値幅では2年前を大きく超えた。これは、2018年の10/3高値26,951ドルから同年12/26安値21,712ドルまでの下落幅5,239ドルに匹敵する下落幅である。2年前のVIX指数の水準、および2018年10-12月の下落幅の両方がほぼ再現されたことから、売り方の立場から見れば達成感が出やすくなり、当面は買戻しが入りやすくなるという面も出て来るのではないだろうか。また、2/28にはパウエルFRB議長が「経済を支えるために適切に行動する」と述べ、3/2には日銀の黒田総裁が「市場に対し潤沢な資金供給に乗り出す」と談話を発表。金融市場の混乱に対し、世界の中央銀行が足並みを揃えて行動する可能性は高いと考えられる。
- 中国では新たな感染者数の伸びが減速していることから、スターバックス(SBUX)などの店舗が営業再開を進めている。また、シンガポールの大型ショッピングモールも感染拡大前と同水準まで来店者数が回復している。このような動きが他の多くの国に拡がって行くことが期待される。まずは、その瞬間を捉えて買いのチャンスとすることが投資家に求められていると言えよう。
- 3/3号では、
オートデスク(ADSK)、セールスフォース・ドットコム(CRM)、ホーム・デポ(HD)、スターバックス(SBUX)、AT&T(T)、ユニバーサル・ヘルス・サービシズ(UHS)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(2/28現在)
3月3日(火) | ノードストローム、ロス・ストアーズ、コールズ、オートゾーン、ターゲット |
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3月4日(水) | フラウン・フォーマン、キャンベルスープ、ダラー・ツリー |
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3月5日(木) | コストコホールセール、クーパー、H&Rブロック、クローガー |
3月3日(火) | - 米大統領選スーパーチューズデー
- 米シカゴ連銀総裁が質疑応答に参加、ニューヨーク連銀幹部が準備金に関して質疑応答、クリーブランド連銀総裁が講演(ロンドン)
- 米自動車販売 (2月)
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3月4日(水) | - 米地区連銀経済報告 (ベージュブック)、セントルイス連銀総裁が開会のあいさつ
- 米ADP雇用統計(2月)、米ISM非製造業総合景況指数(2月)、マークイット米サービス業・コンポジット PMI (2月)
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3月5日(木) | - OECD経済見通し
- 米新規失業保険申請件数(2月29日終了週)、製造業受注(1月)、労働生産性(4Q)
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3月6日(金) | - 米シカゴ連銀総裁・クリーブランド連銀総裁・セントルイス連銀総裁・米カンザスシティー連銀総裁・ニューヨーク連銀総裁・ボストン連銀総裁がニューヨークでのイベントに参加
- OPECプラス会合(ウィーン)
- 米雇用統計 (2月)、貿易収支 (1月)、卸売在庫(1月)、消費者信用残高(1月)
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3月8日(日) | |
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- 1982年設立。設計用ソフトウェアと関連サービスを、建設業、製造業及びデジタルメディア・娯楽産業向けに提供する。顧客は2D・3Dを通じて可視化・シミュレーション・分析しながら設計できる。
- 2/27発表の2020/1期4Q(2019/11-2020/1)は、売上高が前年同期比22.0%増の8.99億USD、純利益が同2.0倍の1.31億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同2.0倍の0.92USD。前年同期の買収が奏功し、サブスクリプション型の年当たり想定継続収入が同25%増の34.3億USDと堅調に伸びた。
- 2021/1通期会社計画は、売上高が前期比20-22%増、調整後EPSが4.21-4.44USD(前期実績:2.79USD)。前期は主力の建設業のほか製造業においても市場シェアを拡大。更に、今後はライセンス供与に係るルールに準拠しないユーザーへの課金を徹底する方針。同社の建設・製造業向け設計ソフトウェアは現場データ収集・加工・分析のデジタル・プラットフォームとして有望だろう。
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- 1999年創業。CRM(顧客関係管理)の大手企業。クラウドを通じ見込み客の開拓やマーケティングなど様々なソリューションを提供する。企業向けクラウドサービスの「Salesforce Platform」も展開。
- 2/25発表の2020/1期4Q(2019/11-2020/1)は、売上高が前年同期比34.6%増の48.51億USD、純利益が前年同期の3.62億USDから▲2.48億USDへ赤字転落。ただし、Non-GAAPの調整後利益は同9.9%増の6.02億USD。サブスクリプション収入に係る各種のクラウドサービスが堅調に伸びた。
- 2021/1通期の会社計画は、売上高が210-211億USD(前期実績:170.98億USD)、調整後EPSが3.16-3.18USD(同:2.99USD)。同社は決算発表と同時に顧客管理システム開発のVlocityを13.30億USDで買収することを発表。同社は6つの業界向けのCRMを開発しており、特定業界向けソリューションが多い他の企業には無い競争力を有する。今後の成長への原動力となることが期待されよう。
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- 1978年設立の世界最大のホームセンター。米国、カナダ、メキシコに2,200店舗以上展開。実店舗はDIYからプロの業者向けまで100万点以上の商品を揃えたeコマース事業と連携している。
- 2/25発表の2020/1期4Q(2019/11-2020/1)は、売上高が前年同期比2.7%減の257.82億USD、純利益が同5.8%増の24.81億USD。ただし、前年同期の営業日数が1週間多かったことに伴う特殊要因(17億USD)の影響を除けば実質増収。既存店売上高が同5.2%増と堅調だったことが寄与した。
- 2021/1通期の会社計画は、売上高および既存店売上高が前期比3.5-4.5%増、営業利益率が約14.0%(前期実績:14.4%)。2/25に発表された2019/12の全米住宅価格指数は、季節調整済みで0.6%上昇。伸び率が前月の0.3%から加速し、3ヵ月ぶりの大きさとなった。住宅価格の上昇は住宅の資産価値向上のためのリノベーション需要を喚起しやすく、業績へ追い風が期待されよう。
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- 1971年創業。世界的なコーヒーチェーン。世界78市場で展開。主力のStarbucks CoffeeのほかTeavana、Seattle’s Best Coffee、Evolution Fresh、La Boulangeなどのブランドがある。
- 1/28発表の2020/9期1Q(10-12月)は、売上高が前年同期比7.6%増の57.80億USD、純利益が同16.4%増の8.85億USD。既存店売上高は、全世界が同5%増、米国が同6%増、中国が同3%増。アプリで事前注文・事前決済を行うモバイルオーダー&ペイの注文増加が業績に寄与した。
- 2020/9通期の会社計画は、全世界の既存店売上高が前期比3-4%増、Non-GAAPの調整後EPSが3.00-3.05USD(前期実績:2.83USD)で期初計画と変わらず。中国国内において、同社は1/28に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて店舗の半数以上の2,000店超を一時閉鎖したが、2/27現在、85%の店舗が営業を再開。中国事業の落ち込みが一時的なものにとどまる可能性も考えられよう。
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- 1983年設立。通信・デジタルエンターテイメントサービスの世界的なプロバイダーで、無線通信、ブロードバンド、インターネット接続、通信機器、マネージドネットワークなどを提供する。
- 1/29発表の2019/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比2.4%減の468.21億USD、純利益が同50.7%減の23.94億USD、調整後EPSが同2.2%減の0.89USD。テレビ契約者の減少が響き減収となった。ただし、コスト削減が奏功しNon-GAAPの調整後EPSは同3.5%増の0.89USDとなった。
- 2020/12通期会社計画は、フリーキャッシュフローが280億USD(前期実績:290億USD)。同社は2020/5に新たな動画配信サービス「HBOマックス」を開始する予定。他社の動画配信サービスへの顧客流出に歯止めをかける効果が期待されよう。2019/12期の1株当り年配当金を基準にした2/28終値での年配当利回りは5.82%だが、配当性向は51%にとどまる。今後の増配が期待されよう。
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- 1978年設立の医療施設運営会社。一般および専門外科、内科、産婦人科、小児科のほか、救急病院、行動医学ヘルス・センター、外来手術センター、放射線腫瘍学センターを所有・経営する。
- 2/26発表の2019/12期4Q(10-12月)は、営業収益が前年同期比5.1%増の28.96億USD、純利益が同55.1%増の2.45億USD。Non-GAAPの調整後EPSは同17.7%増の2.79USD。セグメント別の営業収益では、救急患者治療が同7.9%増、行動医学ヘルス・センターが同4.5%増と業績に寄与した。
- 2020/12通期の会社計画は、営業収益が119.60-121.16億USD(前期実績:113.78億USD)、調整後EPSが10.30-11.00USD(同:9.99USD)。米国では2019/10以降、2/8現在でインフルエンザの感染者数が2,600万人、入院者数が25万人、死亡者数が1万4,000人に上った。それに加え、新型コロナウイルスの感染拡大など、当面は医療サービスへの需要が高まることが考えられよう。
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