• S&P500株価指数が2/19の取引時間中に付けた史上最高値3,393ポイントに並ぼうとしている。また、ナスダック総合指数の8/14終値は2/19に付けた高値を12％上回った。ダウ平均株価の8/14終値は2/12の取引時間中に付けた史上最高値29,568ドルから約5.5％低い水準にあるが、7月末終値からの騰落率が6.1％に達するなど堅調に推移。新型コロナウイルス感染拡大が続き、人々に対する行動抑制措置が長期化しそうな米国の株価が何故好調なのだろうか？
• その主な要因は4-6月決算にある。8/7発表のファクトセットのEarnings Insightによれば、S&P500構成企業の純利益（実績および予想の合計）は前年同期比33.8％減と2009年1-3月以来の悪い水準となった。その一方、既に決算発表済みの89％（445社）のうち、83％（369社）の企業のEPSが市場予想を上回り、全体では実績ベースのEPSが市場予想を22.4％上回った。対市場予想で上回った企業数、および全体のEPSの対市場予想比率ともファクトセットが2008年に調査開始以来で最高の水準となったことが明らかになった。市場予想に対する企業利益のポジティブ・サプライズの度合いが大きかったことが主要株価指数の堅調な推移を支えていると言えよう。それに加え、7月までの米景気指標が総じて回復基調を示していることや米財務省が新型コロナウイルス感染拡大への対応費を長期国債の増発で賄うスタンスを強化していることから長期金利が上昇基調に転じていることも債券から株式への資金シフトを促している面もあろう。
• ただし、当面懸念すべきこととして以下の点が挙げられる。先ず、週600ドルの失業給付上乗せ措置が7月末に失効したなか、追加の新型コロナウイルス経済対策で米政権と議会・民主党との合意が遅れることが経済活動を圧迫する重しとなって株価の上値を抑える要因となることが考えられる。8/18以降に発表予定のウォルマート（WMT）、ホームデポ（HD）、ターゲット（TGT）などの小売り大手の5-7月決算および8月以降の業績見通しが重要な意味を持つこととなろう。
• 次に、テクニカル分析上、以下の2点が株式相場転換を示唆する可能性があるものとして挙げられる。①ナスダック総合指数は、過去14日間において終値の上げ幅（前日比）の合計と下げ幅（同）の合計を足した値に対する上げ幅（同）の合計値の比率（％）であるRSI（相対力指数）が、年初に付けたピークの水準を下回って推移している。②S&P500のオプションの値動きを基に算出されるVIX指数は、低下しつつも20％を下回らずに推移しており、反転上昇に向けた買い圧力の高まりが見られる。これらの動きには注意が必要だろう。（笹木）
• 8/18号では、Lemonade Inc（LMND）、ラムリサーチ（LRCX）、マスターカード（MA）、クアルコム（QCOM）、スクエア（SQ）、テスラ（TSLA）を取り上げた。

8月18日（火）	アジレント・テクノロジー、ホーム・デポ、コールスﾞ、アドバンス･オート･パーツ、ウォルマート
8月19日（水）	シノプシス、Ｌブランズ、エヌビディア、アナログ・デバイセズ、TJX、ターゲット、ロウズ
8月20日（木）	ロス・ストアーズ、キーサイト・テクノロジースﾞ、エスティローダー
8月21日（金）	ディア

8月18日（火）	米住宅着工件数 (7月)
8月19日（水）	米FOMC議事録 (7月28、29日開催分)
8月20日（木）	サンフランシスコ連銀総裁が講演 米新規失業保険申請件数 (15日終了週)、 米景気先行指標総合指数 (7月)
8月21日（金）	米中古住宅販売件数 (7月)、マークイット米製造業・サービス業・コンポジットPMI (8月)
8月24日（月）	シカゴ連銀全米活動指数(7月)

• ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成

2015年設立。アプリで加入できるオンライン損害保険会社である。欧米で賠償責任保険、家財保険を提供。7/2現在、ソフトバンクグループ（9984）が約21％保有する筆頭株主。7/2に新規上場。 8/11発表の2020/12期2Q（4-6月）は、総収益が前年同期比2.2倍の2,990万USD、純利益が前年同期の▲2,310万USDから▲2,100万USDへ赤字縮小。主に保険加入者数が同84％増となったことが増収に貢献したほか、販売マーケティング費用を前期比15％減に抑えたことが赤字縮小に寄与した。 2020/12期3Q（7-9月）の会社計画は、売上高が1,400-1,500万USDと2Qから半減の見通し。会計処理変更により外部の保険会社への再保険料を売上高から差し引くことが影響する模様。同社は同じ保険の加入者同士が個人的に繋がることで保険料を抑える「P2P型保険」としてペット保険を7月より開始。同社の住宅・賃貸人保険保有者の約70％がペット所有者であることから注目される。（笹木）

1980年設立の半導体製造装置メーカー。デポジション、エッチ、フォトレジスト除去（ストリップ）、ウエハー洗浄（クリーン）向けに製品を提供する。半導体エッチング装置分野では世界シェア首位。 7/29発表2020/6期4Q（4-6月）は、売上高が前年同期比18.2％増の27.92億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同19.3％増の7.04億USD。5G向け半導体需要増を受け、主力の装置部門が同18.8％ 増収（18.65億USD）。装置部門の内、ファウンドリ向けが同49.9％増収、NAND向けが同16.2％増収。 2021/6期1Q（7-9月）の会社計画は、売上高が29-33億USD（前年同期21.66億USD）、調整後EPSが4.75-5.55USD（同3.18USD）。同社CEOが「年末にかけてメモリ（NAND、DRAM）向けに顧客支出が拡大、来年度も続く」、「メモリサイクルは未だ初期段階」とコメント。半導体製造の微細化に伴う支出拡大で2023-24年までに19年比で5割増収、EPSが同2倍以上増との中長期の収益目標を示した。（李）

1966年に設立した国際的な決済テクノロジーカンパニー。「Mastercard」、「Maestro」、「Cirrus」、「Masterpass」などのブランド下でサービスを提供する。210以上の国・地域で事業を展開する。 7/30 発表2020/12期2Q（4-6月）は、売上高が前年同期比18.9％減の33.35億USD、純利益が同30.7％減の14.20億USD。カード決済総額は同10.0％減（1兆3830億USD）だったが、市場予想を上回った。クロスボーダー取引額が同45％減と前四半期の同1％減から悪化したことが減収要因。 コロナ禍の影響が不透明なため2020/12通期の見通しを撤回。決済件数、決済金額ともに4月に底入れして7月以降はプラス成長に転じるなど、足元の決済指標は改善傾向にある。一方で、クロスボーダー取引額は前年同月比▲40％前後で推移。同社は7月末にマイクロソフト（MSFT）と提携して電子決済による金融包摂を推進すると発表したほか、7月に10億USDの自社株買いを実施。（李）

1985年設立。モバイルデバイスなどのワイヤレス機器で使用される半導体製品の設計・開発および基盤的技術の商業化を手掛ける。3G・4G通信のパイオニアであり、5G通信でも先行している。 7/29発表の2020/9期3Q（4-6月）は、売上高が前年同期比49.2％減の48.93億USD、純利益が同60.7％減の8.45億USDだが、Non-GAAPの調整後純利益は同横ばい。前年同期のスマホ特許に係るアップル（AAPL）からの和解金収入計上の反動減で減収だが、自社株買いがEPSを押し上げた。 2020/9期4Q（7-9月）の会社計画は、調整後売上高が55-63億USD（19年4Qは48億USD）、調整後EPSが1.05-1.25USD（同0.78USD）。5Gチップセットの出荷が前年同期比15％減との見通し。その一方、中国ファーウェイとの特許対価に係る和解金18億USDが計上される見通しのほか、ファーウェイが2017年から停止していた特許使用料の支払いを7月から再開したことが業績に寄与しよう。（李）

2009年に設立。ジャック・ドーシーCEOはツイッター（TWTR）のCEOを兼務している。モバイル決済ソリューションを提供し、日本では三井住友FG（8316）と提携してキャッシュレス決済対応を支援する。 8/4発表の2020/12期2Q（4-6月）は、営業収益が前年同期比63.8％増の19.24億USD、純損失が前年同期の▲674万USDから▲1148万USDへ赤字拡大だが、Non-GAAPの調整後純利益は同9.7％減の9,073万USD。小口送金アプリ「キャッシュ」経由のビットコイン販売の売上高が同7倍増と伸びた。 コロナ禍による不確実性を考慮して2020/12期の業績予想を非開示とした。税還付、失業給付などに伴うアプリ「キャッシュ」の利用は7月も好調で、粗利益が前年同月比2倍増で推移。6月の「キャッシュ」のアクティブユーザーは3,000万人（昨年末2,400万人）に上り、取引頻度も月間15回と同2倍に増加。ポストコロナにおけるキャッシュレス決済の拡大が「キャッシュ」の成長を後押ししよう。（李）

2003年設立。電気自動車（EV）の設計・製造・販売、電気パワートレイン部品の他の自動車メーカーへの販売、および充電式リチウムイオン電池システムなどのエネルギー貯蔵製品の販売を営む。 7/22発表の2020/12期2Q（4-6月）は、売上高が前年同期比4.9％減の60.36億USD、純利益が▲4.08億USDから1.04億USDに黒字転換。Non-GAAPの調整後純利益が▲1.98億USDから4.51億USDに黒字転換。販売台数が同4.7％減だったが、温暖化ガス排出取引権の売却益計上により増益。 2020/12通期の業績見通しを見送ったが、2020年の販売目標50万台超えを堅持。中国新車市場の回復で販売台数が上振れる可能性もあろう。また、20年の排出取引収益が前年比倍増の見通しのほか、2021年末にかけて新たに3工場が稼働予定であり、2021年の年産能力は今期2Q末比1.4倍となる見込み。8/11に同社は、8/21時点の株主に対し1株を5株にする株式分割を発表。（李）

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