- 9/3以降、大手ハイテク株価下落を中心として米国株式市場は下落局面を迎えている。単に割高に買われ過ぎた株価の正常化に伴う調整と言えないことも無いが、11/3の大統領選挙まで残り50日となり、投資の焦点をハイテク株の調整から大統領選挙へとシフトさせるべき時機が来つつあるのかも知れない。
- まず、世論調査データ収集サイトの「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、9/14現在の州ごとの戦況と獲得票の見込みは、バイデン氏212票、トランプ氏115票、トスアップ(五分五分の見通し)211票であり、バイデン氏が優位を固めつつあることが分かる。4年前に圧倒的に不利な戦況から逆転勝利した選挙戦の再現を期待する向きもあるが、8月に集めた献金の総額はトランプ氏が過去最高の2億1,000万ドルだったのに対し、バイデン氏は3億6,450万ドルと圧倒。更に、ブルームバーグ前ニューヨーク市場がスイング・ステートの1つとして選挙戦の鍵を握るとされるフロリダ州でバイデン氏を支援するために1億ドルを投じると伝えられるなど、現職のトランプ氏が厳しい立場に追い込まれつつある。
- 株式市場にとってのバイデン当選リスクの主な内容としては、①所得税の最高税率の37%から39.6%への引上げ、②法人税率の21%から28%への引上げ、③キャピタルゲイン課税として年100万ドル超の高所得者の税率の所得税と同じ39.6%への引上げ、などが挙げられる。特に③については、値上がりした資産を税率変更前に売却する動きを加速させると予想される。それに加え、民主党政権は歴史的に共和党政権よりも大企業による独占や寡占に対して厳しい姿勢を取る傾向があることも無視できない。GAFAMといった巨大プラットフォーマーの独占禁止法(反トラスト法)問題が厳しさを増すものと見込まれる。
- その一方、バイデン当選のプラス面として期待できる内容として、①育児や高齢者の介護に10年間で7,750億ドルを投じる新たな経済政策、②気候変動問題に対応するため太陽光発電や風力発電などクリーンエネルギーのインフラに4年間で計2兆ドルを投資する環境政策、③製造業を支援するため米国製品購入と5G通信や人工知能への研究開発に7,000億ドルを使うことを柱とした経済プランの3点が挙げられる。特に民主党リベラル派には、「ある条件下で政府は国債をいくらでも発行できる」とする「MMT(現在貨幣理論)」の信奉者が多く、民主党政権のほうが積極的な財政支出を期待できる面もあろう。(笹木)
- 9/15号では、アメディシス(AMED)、ボーイング(BA)、ブライト・ホライズン・ファミリー・ソリューションズ(BFAM)、ビヨンド・ミート(BYND)、ラスベガス・サンズ(LVS)、Vroom Inc(VRM)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(9/11現在)
9月15日(火) | アドビ、フェデックス |
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9月22日(火) | ナイキ、オートゾーン |
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9月23日(水) | シンタス、ゼネラル・ミルズ |
9月15日(火) | - FOMC(16日まで)
- 第75回国連総会(ニューヨーク、30日まで)22日から一般討論演説
- 米輸入物価指数 (8月)、鉱工業生産(8月)
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9月16日(水) | - 米FOMC声明発表、議長記者会見と経済予測
- OECD経済見通しの中間報告
- 米小売売上高 (8月)、企業在庫 (7月)、NAHB住宅市場指数 (9月)、対米証券投資 (7月)
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9月17日(木) | - 米新規失業保険申請件数 (9月12日終了週)、住宅着工件数 (8月)
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9月18日(金) | - 米セントルイ ス連銀総裁がバーチャル形式の討論会に参加
- 米経常収支(2Q)、景気先行指標総合指数 (8月)、ミシガン大学消費者マイ ンド指数 (9月)
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9月21日(月) | |
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9月22日(火) | - 中古住宅販売件数(8月)、リッチモンド連銀製造業指数(9月)
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9月23日(水) | - FHFA住宅価格指数(7月)、マークイット米国製造業・サービス業・総合PMI(9月・速報)
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- 1982年設立。主に米国南東部で代替医療サービスを提供。個人宅で治療を行う在宅医療、末期疾患患者向けのホスピス、および日常生活の活動を支援するパーソナルケアの3セグメントを営む。
- 7/28発表の2020/12期2Q(4-6月)は、純サービス収入が前年同期比1.6%減の4.85億USD、純利益が同2.8%減の3,467万USD、Non-GAAPの調整後EPSが同10.7%増の1.34USD。セグメント別営業収益では、在宅医療が同13.5%減、パーソナルケアが同54.2%減の一方、ホスピスが同49.3%増。
- 2020/12通期会社計画は、純サービス収入が20.40-20.70億USD(前期実績:19.55億USD)、調整後EPSが4.84-5.06USD(同:4.40USD)。バイデン民主党候補は、大統領選に向けた公約として育児や高齢者介護に10年間で7,750億USDを投じる経済政策を打ち出した。介護施設や在宅介護を利用しやすくし、家族の面倒を見ている人の労働市場復帰を後押しすることを目指している。(笹木)
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- 1916年創業。航空・宇宙機器製造会社。民間航空機、防衛・軍用機、電子・防衛システム、衛星、衛星打ち上げ機、高度情報通信システムなどを手掛ける。150ヵ国以上で事業を展開する。
- 7/29発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比25.0%減の118.07億USD。純利益は前年同期の▲29.42億USDから▲23.95億USDへ赤字縮小だが、3四半期連続で最終赤字。資金面でもフリーキャッシュフローが同▲10.11億USDから▲56.3億USDへ赤字拡大と厳しい状況が続いた。
- 4-6月の納入機数は前年同期比78%減の20機。787型機に水平尾翼などに不具合が見つかり、2011年以降出荷した1,000機のうち900機が調査対象になるという。同社CEOは商用機需要が2019年水準を回復するのは23年までかかるとの見方を示した。一方で、今年の防衛関連売上見通しは12年ぶりに商業機関連を上回る。カナダ向け戦闘機受注を含め、防衛関連の伸びに期待。(李)
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- 1986年設立。雇用主と家庭向けに仕事と育児の両立支援のため保育・早期教育サービスを提供。従業員福利厚生制度としてこども保育を提供する企業向けに、主に複数年契約でサービスを提供。
- 8/5発表の2020/12期2Q(4-6月)は、営業収益が前年同期比44.3%減の2.93億USD、純利益が同99.2%減の35万USD。Non-GAAPの調整後EPSが同62.7%減の0.44USD。新型コロナウイルス感染予防措置のため6月末時点で運営が停止された保育所は、全世界で1,076箇所中400箇所に上った。
- コロナ禍の業績に及ぼす影響が不透明であるため通期会社計画の発表を見送った。米英2ヵ国合計で1,015箇所の保育所のうち一時閉鎖は6月末が670箇所だったのに対し、7月末は360箇所に減少と3Q以降の業績回復が見込まれる。会社は9月末までに一時閉鎖の割合が全世界で15%以下への減少を見込む。育児支援はバイデン民主党候補が掲げた公約の柱として注目される。(笹木)
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- 2009年創業。植物由来の代替肉を開発・製造を手掛ける食品テクノロジー大手。ハンバーガーやソーセージなどを製造し、スーパーマーケットやマクドナルドなどに提供。2020/6から中国にも進出。
- 8/4発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比68.5%増の1.13億USD、純利益が▲944万USDから▲1,021万USDへ赤字拡大。米国小売向けが同2.9倍の増収と好調だったが、外食需要の低下で米国レストラン向けが同60.7%減収だったこと、および販促費の倍増が利益面で響いた。
- コロナ禍の影響が不透明なため、2020/12通期会社計画の発表を見送った。8/27、小売戦略の補完のため新しいEコーマスサイトを立ち上げて代替肉の直販を開始したほか、販売地域を2019年の51ヵ国から84ヵ国に拡大。また、9/8、中国浙江省嘉興で2つの代替肉生産拠点を設置。21年初頭に本格的に生産を開始する見通しであり、中国市場での販売拡大への貢献が期待される。(李)
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- 2004年にネバダ州で設立。統合型リゾート(IR)を米国、アジアで展開する。運営施設には、「The Venetian」や「Sands Expo」、マカオの「Cotai Strip」、シンガポールの「Marina Bay Sands」等がある。
- 7/22発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比97.1%減の9,800万USD、純利益が前年同期の11.1億USDから▲9.85億USDへ。調整後EBITDAが同12.66億USDから▲5.47億USDへ赤字転落。コロナ禍による旅客機運航停止に伴い、主力のマカオが前年同期比97.8%減収だった。
- 同社CEOは、2020年残り期間のコンベンションやバンケットビジネス収入がゼロとの見通しを示したほか、21年見通しの算定も困難と言及。マカオの外国人入国制限が維持されるなか、中国当局がマカオ観光再開につき、8/10に珠海市民を対象としたほか、9/23から対象を中国本土全域に拡大する方針を示した。10月国慶節の大型連休を控え、この規制緩和は同社業績への恩恵となろう。(李)
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VroomInc(VRM)市場:NASDAQ・・・会社発表およびBloombergともに決算発表予定日の記載なし
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- 2012年設立。新車・中古車の売買のほか部品購入や修理のためのEコマースプラットフォームを運営。同時に車を購入するための資金調達ソリューションを提供。今年6/9にナスダックに新規上場。
- 8/12発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比3.0%減の2.53億USD、IPO関連費用を除くNon-GAAPの純利益が前年同期の▲5,921万USDから▲4,070万USDへ赤字縮小。Eコマースは同45.2%増収だったが、店舗中古車販売のTDA事業が同68.9%減収だったことが売上に響いた。
- 2020/12期3Q(7-9月)の通期会社計画は、Eコマースの販売台数が8,500-8,800台(2Q実績:6,713台)、1台当たり平均販売価格が23,500USD(同:25,393USD)。米国の中古車価格の動向を示す「マンハイム指数」は今年8月に163.4と4月から約3割上昇。コロナ禍の影響による生産休止で新車が不足するなか、消費者の節約志向による中古車需要増も見られる。業績への追い風となろう。(笹木)
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