“最高裁判事の後任指名カードはジョーカーか?”
- 米大統領選挙まで残り約6週間となった。米世論調査データ収集サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、9/23現在の州ごとの戦況と獲得票(確実、優勢、やや優勢の合計)の見込みは、バイデン氏222票、トランプ氏125票、五分五分が191票であり、トランプ氏の逆転の可能性は小さいように見える。その一方、五分五分とされる州で、トランプ氏が前回と同じ結果(180票)を獲得すれば計算上は上記の獲得見込み票と合わせて過半数(270票)を超える305票に達する。ただし、前回獲得分から落とせるのは計算上35票までであり、トランプ氏の現状は、五分五分州の内、テキサス(38票)、フロリダ(29票)、ペンシルベニア(20票)といった票数上位の州を落とせば当選が難しくなる立場と言える。
- ところが、9/18、米国最高裁のギンズバーグ判事の死去に伴う後任の指名を巡り、情勢が変わる可能性が出てきた。現在の最高裁は長官を含む9人の判事のうち保守派が5人で多数を占めているが、リベラル派のギンズバーグ判事の後任が保守派になった場合、判事の構成が圧倒的に保守寄りとなる。最高裁判事の任期が終身であることから、将来的に長期にわたって米国の司法判断が保守に傾き、妊娠中絶や同性結婚など国民生活の多岐にわたってキリスト教保守派の立場からの憲法判断が行われる可能性があろう。それは米国民にとって大統領選挙よりも重要な問題となる面もあることから、現職大統領に後任判事の指名権があるとしても、大統領選挙の直前に指名を行うことはリベラル派にとって道義上納得し得ないだろう。バイデン氏も、後継指名は新政権が行うべきと主張している。
- これに対し、トランプ氏は9/26に後任を指名する考えを示している。共和党支持者および保守派にとっては願ってもないチャンスであり、トランプ氏による指名を投票によって全力で後押ししようとする動きに向かってくることが容易に想像される。その一方、民主党支持者およびリベラル派のデモなどの反対運動の動きが加速化することが考えられるが、デモの過激化・暴動化はバイデン氏に不利に働くことも考えられよう。その意味では、最高裁判事の後任指名はトランプ氏にとって大統領選の形勢を一挙に逆転できる切り札となるかも知れない。
- ただし、トランプ氏による後任判事指名に対し民主党が反発すれば、追加の新型コロナウイルス対策の実現が遠のくことは避けられないだろう。この切り札は米国景気の腰折れという犠牲を伴う懸念があることも無視できまい。(笹木)
- 9/24号では、セールスフォース・ドットコム(CRM)、新東方教育科技集団(EDU)、ルルレモン・アスレティカ(LULU)、オラクル(ORCL)、ターゲット(TGT)、ウエイスト・マネジメント(WM)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(9/22現在)
主要企業の決算発表予定
9月24日(木) | コストコホールセール、トリップドットコムグループ(携程旅行網)、ダーデン・レストランツ、カーマックス、アクセンチュア |
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主要イベントの予定
9月24日(木) |
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9月25日(金) |
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9月27日(日) |
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9月28日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
セールスフォース・ドットコム(CRM)市場:NYSE ・・・2020/12/3に2021/1期3Q(8-10月)の決算発表を予定
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新東方教育科技集団(EDU)市場:NYSE(ADR) ・・・2020/10/22に2021/5期1Q(6-8月)の決算発表を予定
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ルルレモン・アスレティカ(LULU)市場:NASDAQ ・・・2020/12/11に2021/1期3Q(8-10月)の決算発表を予定
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オラクル(ORCL)市場:NYSE ・・2020/12/13に2021/5期2Q(9-11月)の決算発表を予定
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ターゲット(TGT)市場:NYSE ・・・2020/11/19に2021/1期3Q(8-10月)の決算発表を予定
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ウエイスト・マネジメント(WM)市場:NYSE ・・・2020/10/23に2020/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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