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“米国中枢のコロナ感染とIPO企業のチャンス”
2020/10/6
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、李一承
- トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染した。病状に関し不透明な部分が多いなか、主治医が10/5にも退院する可能性があると説明したほか、トランプ大統領自身が入院先のウオルター・リード米軍医療センターから車に乗って突然姿を現すといったサプライズなどを受け、ダウ先物が時間外取引で上昇。株式市場に安心感が広がっているように見受けられる。また、米景気回復に向けて追加経済対策を取りまとめるようにトランプ大統領自身が病床からツイートしたことに加え、ペロシ下院議長が米航空業界向けの追加雇用支援策への合意が「目前に迫っている」と述べたことも株式相場を支える要因となっている。米中貿易摩擦の発生以降、悪材料に対し売りが先行するものの継続せず、問題解決に向けた何らかの「合意」や「期待」の兆しが見れれば買戻しが誘発されるパターンは、米国株式市場の基本的な構造として定着しつつあるように思われる。
- しかし、トランプ大統領の感染によって明らかになったのは、米国の中枢であるホワイトハウスが感染のクラスターと化しているという現実である。米国株式市場は、今年2月に中国で感染が拡大した際に自国には関係ないとしてあまり反応しなかったのと同様に、9月に欧州で感染が再拡大した際も本格的な売りには繋がらなかった。その一方、今年3月に自国で感染者が拡大し始めると相場が暴落を始めたこともあり、米国株が新型コロナウイルス感染動向に対し脆弱となりつつあるのではないかと見るべきだろう。特に、原油先物相場の下落やVIX指数上昇の動きが米国株下落に先行する傾向が見られる点に要注意だろう。
- 新型コロナウイルスの流行が収束しない中では、テレワーク普及に伴うクラウド関連、対面型ビジネスのデジタルへのシフト、医療ほか人手不足分野における業務効率化などでスタートアップ企業にチャンスが広がっている。今年6月以降にIPOを行った主な米企業は、(1)クラウドやセキュリティでは、データクラウドのスノーフレイク(SNOW)、ログ管理セキュリティ分析のスモーロジック(SUMO)、(2)医療・ヘルスケアでは、遠隔医療のアメリカンウェル(AMWL)、(3)業務支援グループウエアでは、タスク管理ツールのアサナ(ASAN)、B2B営業支援のズームインフォテクノロジーズ(ZI)、(4)スマホゲームなどに係るゲームエンジンでは、ユニティソフトウェア(U)、(5)フィンテックでは、クラウドバンキングのエヌシーノ(NCNO)、オンライン保険のレモネード(LMND)、(6)ECサイト構築では、ビッグコマースHD(BIGC)などがあり、事業機会が広がっていると言えよう。(笹木)
- 10/6号では、チェグ(CHGG)、コストコホールセール(COST)、カーマックス(KMX)、スラック・テクノロジーズ(WORK)、ゼンデスク(ZEN)、ジロー・グループ(ZG)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(10/2現在)
10月6日(火) | ペイチェックス |
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10月7日(水) | ラム・ウェストンHD |
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10月8日(木) | ドミノ・ピザ |
10月6日(火) | - 米シカゴ連銀総裁の講演、アトランタ連銀総裁の講演
- ノーベル医学生理学賞受賞者発表
- 米 ISM非製造業総合景況指数 (9月)
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10月7日(水) | - 米 FOMC議事要旨(9月15、16日開催分)
- 米ニューヨーク・シカゴ・アトランタ・ミネアポリ ス・ボストン各連銀総裁も講演
- 米副大統領候補討論会(ユタ州ソルトレークシティー)
- ノーベル化学賞受賞者発表
- IOC(国際オリンピック委員会)理事会(ロ ーザンヌ)
- 米消費者信用残高 (8月)
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10月8日(木) | - ノーベル文学賞受賞者発表
- OPECの世界石油見通し(WOO)
- 米新規失業保険申請件数 (3日終了週)
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10月9日(金) | |
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- 2005年に設立。定額制のネット学習プラットフォーム「Chegg Services 」を運営。「Chegg Services 」上でオンライン・文書テキストのレンタル、オンライン家庭教師、オンライン数学「Mathway」等を展開。
- 8/3発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比63.0%増の1.53億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同65.6%増の4,936万USD。調整後EBITDAも同78.6%増。会員数が同67%増の370万人と増加したことを受け、主力の「Chegg Services」が同57%増収(1.26億USD)と堅調に伸びた。
- 2020/12通期の会社計画は、売上高が6.05-6.15億USD(前期実績:4.11億USD)、調整後EBITDAが1.90-1.95万USD(同1.25億USD)。「Chegg Services 」の売上高が4.9-5.0億USD(同3.32億USD)。オンライン数学「Mathway」買収が増収に寄与する見通し。米国小・中・高校生は秋新学期の時点で約6割が在宅学習を継続し、2020年のデジタル教育ツール支出が前年比5割増と試算される。(李)
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- 1976年創業。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型店舗)を運営しており、生鮮・加工食品、家電や自動車関連などを卸売価格で販売する。店舗数は787店舗(20年5月現在)。Eコマースも展開。
- 9/24発表の2020/8期4Q(6-8月)は、売上高が前年同期比12.4%増の533.83億USD、純利益が同26.6%増の13.89億USD。ガソリンや為替変動を除く調整後の既存店売上高が同14.1%増と市場予想(同11.0%増)を上回り、Eコマース調整後売上高も同91.3%増と前四半期(同66.1%増)から加速
- コロナ禍が長引くなか、旅行、外食の需要が減り、生活用品や日用大工などに消費を振り向ける動きが継続中。2021/8期1Q以降の既存店売上高伸び率は、引き続きコロナ禍の前の前年同期比5-8%増からの上振れが期待される。既存会員数に対する会員権更新率は世界全体で88%と同横ばいだが、会員料金の値上げを受けて4Qの会費収入は、同5.3%増の11億600万USDと伸びた。(李)
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- 1993年にCircuit City Storesの傘下で創業後、2002年に独立。米国最大の中古車販売会社で200以上の店舗を展開するほか、金融機関との取り決めを通じて個人顧客向けの代替融資も行う。
- 9/24発表の2021/2期2Q(6-8月)は、売上高が前年同期比3.3%増の53.72億USD、純利益が同27.0%増の2.97億USD。販売台数は個人向け販売が同3.9%増(217,330台)、法人向け販売が同5.1%増(132,980台)と伸びた。それに加え、ファイナンス収益が同29.0%増と増益に貢献した。
- 2021/2期通期の会社計画は非公表だが、新規出店を行わない予定。その一方、来年度に8-10店舗の出店を計画。2Qの個人向け平均販売価格が前年同期比2.9%減だった一方、法人向け平均販売価格は同15.7%上昇。米国ではコロナ禍の影響による生産休止で新車不足となっているほか、レンタカー会社の経営悪化で中古車供給が減っており、中古車価格上昇の要因となっている。(李)
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- 2009年設立。チームの調整や共有作業をサポートするコミュニケーションツール「Slack」を展開。主にエンジニアや開発者向けに強みを有する。新株を発行しない手法で2019/6/20にNYSEに上場。
- 9/8発表の2021/1期2Q(5-7月)は、売上高が前年同期比48.9%増の2.16億USD、Non-GAAPの調整後純利益が前年同期の▲5,153万USDから▲269万USDへ赤字縮小。有料顧客数が同30%増のほか、年間契約料10万USD超の顧客数が同37%増(985社)。その内、100万USD以上は87社だった。
- 2021/1通期会社計画(中心値)を上方修正。売上高を8.70-8.76億USD(従来計画:8.55-8.70億USD)、Non-GAAPの調整後EPSを▲0.13-▲0.14USD(同:▲0.19-▲0.17USD)へ引き上げた。顧客への請求金額を表すビリングは2Qが前年同期比25%増だったが、コロナ禍の影響により1H(2-7月)では計画比1,100万USD減少となった。既存客の契約アップグレードで収益拡大を目指す方針。(李)
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- 2007年にデンマークで設立。Zendeskと呼ばれるクラウド型のカスタマーサービス・プラットフォームを運営。電話やSNSなどの管理を単一画面上で効率的に行えるシステム・ソフトウェアを開発・提供。
- 7/30発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比26.8%増の2.47億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同2.7倍の1,636万USD。有料顧客が同約1割増の16万件強となったことが増収に寄与したが、先行投資が嵩んだことが響き、フリーキャッシュフローは▲2,092万USDへ赤字転落だった。
- コロナ禍による影響が不透明なため、通期計画は公表せず2020/12期3Q(7-9月)会社計画のみ公表。売上高が2.5-2.55億USD(前期実績:1.95億USD)、調整後営業利益が1,000-1,400万USD(同382万USD)。長期契約を含めた残存サービス必要提供契約額(RPO)の2Qは前年同期比35.6%増の7.13億USD。1年超の長期契約が全体の3割を占め、将来予想キャッシュフローの安定に寄与。(李)
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- 2006年設立。オンライン上で不動産・住宅情報サイトを運営。米国の1.1億物件以上のデータベース構築および不動産査定システム「Zestimates」の開発を行う。2018年より不動産買取仲介に参入。
- 8/6発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比28.1%増の7.68億USD、純利益が前年同期の▲7,198万USDから▲8,445万USDへ赤字拡大だったが、Non-GAAPの調整後EBITDAは同6.94倍の1,584万USD。2018年に買収した不動産買取仲介事業の「ホーム」セグメントが増収に貢献。
- 2020/12期3Q(7-9月)の会社計画は、売上高が5.43-5.81億USD(前期実績:7.45億USD)、調整後EBITDAが5,900-8,200USD(同1,584万USD)。コロナ禍に伴う住宅買取業務の停止の影響により在庫が減少したことが減収に響くものの、「IMT(インターネット、メディア&テクノロジー)」セグメントの増収が調整後EBITDA増益に寄与する見通し。住宅ローン低金利の追い風が続くと見られる。(李)
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- (※)決算発表の予定は10/2現在であり、変更される可能性があります。
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