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“ドルインデックスの長期推移とエネルギー、自動車業界”
“ドルインデックスの長期推移とエネルギー、自動車業界”
2021/2/16
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、李一承
“ドルインデックスの長期推移とエネルギー、自動車業界”
先週末の2/12、NYダウ平均株価終値は前日比27ドル高と小動きだったが、米国金融市場は、30年国債利回りが2.0%を、10年国債利回りが1.2%を超えるなど、市場参加者が節目として強く意識する利回り水準を突破。また、S&P500株価指数に係る恐怖指数と言われるVIX指数が昨年2月以来の20%割れとなるなど、株式相場が不安心理から脱し、経済正常化に向けて景気敏感株を中心とした先行きの道筋に自信を深めつつあるように見受けられる。市場における最大10年間の年平均期待インフレ率を意味するブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も7年ぶりの高水準となる2.23%に達し、10年国債との利回り差となるマイナス実質金利幅は1%を維持。これがドル安要因として作用すると見込まれる。
ドルインデックスの長期推移は、貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」が問題視された1985-95年頃、およびBRICsなど新興国市場や原油ほか資源価格が高騰した2003-07年頃は米ドル安で推移し、インターネット興隆期の1995-2000年頃、およびEコマースやSNSほかITプラットフォームによる「データ経済」が力を増した2012-19年頃は米ドル高で推移した。コロナ禍を受けたFRBの債券買入れ強化によって名目金利上昇およびマイナス実質金利縮小が抑えられ、更に、財政赤字拡大が想定される相場環境では、ドル安が勝る可能性が高いだろう。2003-07年型の新興国市場やコモディティ主導型の株価上昇が想定されよう。
そのようなマクロ環境の下、かつてはエネルギーに係る変化の波の真っただ中にある業界の企業が注目される。まず、エネルギー業界における石油メジャーのエクソンモービル(XOM) とシェブロン(CVX) は、2/12終値の時価総額が各々2,138億USD、1,781億USD。これに対し再生可能エネルギーのネクステラ・エナジー(NEE) は1,628億USDに迫っている。エクソンモービルとシェブロンは昨年に合併を協議したと伝えられた。両社ともに配当利回りは高いが、財務内容はシェブロンの方が優れている。両社合併の先行きは不透明だが、周辺エネルギー業界の再編など時代の変化への対応の動きは投資チャンスをもたらそう。
次に、自動車業界のゼネラル・モーターズ(GM) とフォード(F)は、2/12終値の時価総額が各々772億USD、455億USD。これに対し電気自動車(EV)のテスラ(TSLA) は7,833億USDと圧倒している。GMはEVと自動運転に2025年までに270億USDを投じると発表。フォードもEVへ2025年までに220億USD以上を投資すると発表。追われる側から追う側に入れ替わった企業の底力に要注目だ。(笹木)
2/16号では、アリババ・グループ・ホールディング(BABA) 、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM) 、ネクステラ・エナジー(NEE) 、ファイザー(PFE) 、ペイパル・ホールディングス(PYPL) 、クアルコム(QCOM) を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(2/12現在)
2月16日(火) オキシデンタル・ペトロリアム、アジレント・テクノロジー、デボン・エナジー、エコラボ、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、エバーソース・エナジー、エクスペディターズInt'lオブワシントン、CVSヘルス 、バルカン・マテリアルズ、ゾエティス 、アレジオン、アドバンス・オート・パーツ、IPGフォトニクス 2月17日(水) マラソン・オイル、モザイク、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ、アルベマール、百度[バイドゥ] 、シノプシス 、CFインダストリーズ・ホールディングス、アナログ・デバイセズ、ナイソース、ジェニュイン・パーツ、ガーミン、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス、ヘンリーシャイン 2月18日(木) アプライド・マテリアルズ 、ホスト・ホテル・アンド・リゾート、キーサイト・テクノロジーズ 、アメレン、アリスタネットワークス 、キャボット・オイル・アンド・ガス、アライアント・エナジー、フローサーブ、サザン、ウォルマート 、マリオット・インターナショナル 、ウェスティングハウスエアブレーキ・テクノロジーズ、ベンタス、ウエイスト・マネジメント 、LKQ、PPL 、ウエスト・ファーマシューティカル・サービシズ、ホーメルフーズ、ニューモント 、ファーストエナジー2月19日(金) ディア 、DTEエナジー 2月22日(月) ONEOK、エクストラ・スペース・ストレージ、ケイデンス・デザイン・システムズ、リパブリック・サービシズ 、ダイヤモンドバック・エナジー、SBAコミュニケーションズ、ウィリアムズ・カンパニーズ、インガーソール・ランド、リアルティ・インカム、ディスカバリー
2月16日(火) 対米証券投資(12月)、ニューヨーク連銀製造業景況指数(2月) 2月17日(水) FOMC議事要旨(1月26、27日開催分) 小売売上高(1月) 、PPI(1月)、鉱工業生産(1月)、企業在庫(12月)、NAHB住宅市場指数(2月)2月18日(木) 米下院金融委のゲームストップに関する公聴会、新規失業保険申請件数(13日終了週)、住宅着工件数(1月) 、輸入物価指数(1月)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(2月) 2月19日(金) 米中古住宅販売件数(1月) 、ユーロ圏総合・製造業・サービス業PMI(2月)2月22日(月) シカゴ連銀全米活動指数(1月)、ダラス連銀製造業活動(2月)
1999年に設立。電子商取引世界最大手。C2C(顧客間)のEコマースサイト「淘宝」と、B2C(企業対顧客)のEコマースサイト「天猫(Tモール)」を運営。電子決済(支付宝)やクラウド事業なども展開。 2/2発表の2021/3期3Q(10-12月)は、売上高が前年同期比36.9%増の2,210.84億元、Non-GAAPの調整後純利益が同27.3%増の592.07億元。主力のネット通販が同38.2%増収(1,955.41億元)、その内、中国リテール事業が同39.1%増収。また、クラウド事業が同50.3%増収(161.15億元)。 中国リテール事業の1年以内稼働ユーザー数が前四半期比2.9%増の7.79億人。Tモールの取扱高(GMV)が前年同期比19%増、その内、越境ECが同37%増。傘下のフィンテック大手アント・グループのIPO延期に関し、同社CEOはアリババのEコーマスには影響が及ばないとしたほか、規制当局との間で銀行と同様の資本要件が課される金融持株会社となる再編計画で合意と述べた。(李)
1799年設立。世界有数の国際総合金融サービス会社。投資銀行、証券取引、資金決済、証券管理、資産運用、PB、商業銀行、コンシューマーコミュニティバンキングなど幅広い業務を展開する。 1/15発表の2020/12期4Q(10-12月)は、総収益が前年同期比3.4%増の301.61億USD、純利益が同42.4%増の121.36億USD。カードローンが低調で消費者部門が同8.3%減収だが、債券・株式ともに好調で投資銀行・市場部門が同17.0%増収(113.52億USD)。内、市場手数料が同17.8%増収。 2021/12通期会社計画は、純金利収益が前期比0.9%増の555億USD。内、1Qが136億USD以下、4Qが140億USD以上。下期に向け貸出が伸び、低金利を相殺できると見込む。また、買収に伴う戦略投資などで調整後総費用が前期比3.8%以上増と見込む。与信費用の低下が想定されるなか、FRBのストレステスト通過で最大300億USDの自社株買いプログラムを決議し、1Qより再開予定。(李)
1925年に創業。米国における風力・太陽光発電の発電容量の10%を占め、再生可能エネルギーの世界最大手。原発、ガスプラント、発電所の運営からアイスクリーム製造まで様々な事業を展開。 1/26発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比4.2%減の43.95億USD、純利益が9.75億USDから▲500万USDへ赤字転落だが、Mountain Valley Pipeline投資に係る減損処理を除く調整後純利益は、主力のFPL(フロリダ発電)の燃油コスト低下が寄与し、同11.2%増の7.85億USD。 ・2021/12通期の会社計画は、調整後EPSが前期比14.8-21.5%増の2.40-2.54USD。更に22年が2.55-2.75USD、23年が2.77-2.97USDへ増益を見込む。20年末の再生可能エネルギー設備受注残が前期比13%増の13,500MWのほか、21-22年の新規稼働発電容量見通しが5,650-10,550MW(20年9月時点)から10,525-12,700MWへ上方修正など、新政権の環境政策が追い風となりそうだ。(李)
1849年創業、1942年設立。世界的な研究開発型の製薬企業で、循環器、中枢神経、疼痛、炎症・免疫、がん、希少疾病、ワクチン、感染症、泌尿器、眼科など幅広い疾患領域で事業を展開する。 2/2発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比11.8%増の116.84億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同15.1%増の23.66億USD。主力の腫瘍薬が同22.6%増(30.24億USD)のほか、ワクチンが同17.2%増(20.01憶USD)。うち、新型コロナワクチン「BNT162b2」(1.54億USD)も寄与。 2021/12通期の会社計画は、売上高(中間値)が前年同期比44.1%増の594-614億USD。うち、新型コロナワクチン売上高は約150億USDを見込む。同ワクチン販売に伴い、純利益予想を従来の3.0-3.1USDから3.1-3.2USD(同2.22USD)へ引上げた。年内ワクチン20億回分の生産を目指しており、米国へのワクチン供給前倒しで5月までに2億回分供給のほか、EUにも3億回分供給の見通し。(李)
2015年設立のフィンテック・カンパニー。消費者向けにショッピング決済や個人間送金ができるデジタルウォレットサービスを提供するほか、法人向けに幅広い決済ソリューションを展開する。 2/3発表の2020/12期4Q(10-12月)は、営業収益が前年同期比23.3%増の61.16億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同29.7%増の12.81億USD。1年以内に稼働した会員数が同23.6%増(3.77億人)。また、決済総額(TPV)が同39.0%増の2,770億USD。うち、決済アプリのVenmoが同60%増。 2021/12通期の会社計画は、売上高は前期比19%増、調整後EPSが同17%増、年間の決済総額(TPV)が同20%増。1Q(1-3月)は、売上高が前期比28%増、調整後EPSが同50%増。増収率は1Qを最大とし、2Q以降の伸びが緩やかになると見込んでいる。20年11月より加盟店でBTCほか暗号資産の決済サービスを開始。暗号資産購入顧客のログイン回数が購入前の2倍に増加した。(李)
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
1985年設立。モバイルデバイスなどのワイヤレス機器で使用される半導体製品の設計・開発および基盤的技術の商業化を手掛ける。3G・4G通信のパイオニアであり、5G通信でも先行している。 2/3発表の2021/9期1Q(10-12月)は、売上高が前年同期比62.2%増の82.35億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同2.2倍の25.10億USD。主力のチップ販売(QCT)は、ハンドセットの伸び(同79.3%増収)により同80.6%増収(65.33億USD)。ライセンス販売(QTL)は同18.2%増収(16.6億USD)。 2021/9期2Q(1-3月)の会社計画は、売上高(中間値)が前年同期比45.7%増の72-80億USD、うちQCT 部門が60-65億USD(前期実績41億USD)、調整後EPSが1.55-1.75USD(同0.88USD)。2021年の5G向けチップ販売がアップルの5Gスマホ向け需要増により4.5-5.5億台(同2.25億台)と見込む。世界的な半導体不足懸念が根強いが、外注先の受託生産業者は設備投資増の見通しだ。(李)
(※)決算発表の予定は2/12現在であり、変更される可能性があります。
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