“米国一人勝ち状況がはらむリスク”
- 米国が欧州との比較で存在感を増している。米国の新型コロナワクチン接種回数は3/28時点で1億4,300万回台となり、人口比でも40%を超えた。バイデン大統領は3/25の記者会見で、大統領就任100日後の4月末までに米国内で2億回の接種を目指すと表明。これに対し、欧州では3/28時点でドイツが1,237万回で人口比約15%、フランスが1,039万回で人口比約16%にとどまり、ドイツでは新型コロナウイルス感染の再拡大がこれまでで最悪となる可能性が指摘され始めた。変異株は感染の伝播力が高くなる傾向があるとも言われており、新型コロナワクチンの普及が進まない中で従来よりも強力な都市封鎖が必要になれば、欧州と米国の経済成長見通しの差が開くことになろう。ユーロドル相場も1月上旬の1.23ドル台から3月下旬の1.17ドル台まで5%下落。また、債券市場でも、長期金利上昇が懸念される米国債と比べ、欧州中央銀行(ECB)はパンデミック緊急購入プログラム(PPEP)の債券購入ペースを加速し、利回り上昇を抑える姿勢を鮮明にしている。これにより米国の長期金利上昇圧力が緩和されることから、高PERグロース株売りに怯えがちな米国株式市場にとって朗報と言えよう。
- しかし、米国一人勝ちの状況は米国自身にとってもリスクを孕んでいる。既に、米国西海岸行きのコンテナ船の運賃は今年3月で前年同期比2.5倍の水準に跳ね上がるなか、米経済対策による現金給付で個人消費が盛り上がれば、米国を目指す輸送需要が更に膨らみ、運賃上昇加速がインフレへと波及していくリスクが高まろう。そのような事態が想定されるなか、3/23に海運の大動脈であるスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁し、物流混乱に拍車がかかっている。海運や航空貨物会社、あるいはフェデックス(FDX)のような物流会社は別として、輸送コスト増が幅広い企業業績に響く可能性があろう。企業によるコスト転嫁の動きが消費者物価に反映するのは遠い先のことではないように思われる。
- そうなると、米国目指して世界物資の輸送が殺到すれば貿易赤字が膨らむほか、新型コロナ経済対策の大盤振る舞いに加え、3兆ドル規模の環境インフラ投資が実現すれば財政赤字拡大も急速に進むこととなる。1980年代を彷彿とさせる「双子の赤字」の膨張の再来リスクが出てこよう。コモディティは、原油をはじめ貴金属、非鉄金属などの市況が昨秋より概ね堅調に上昇し、「デジタル・ゴールド」と呼ばれる暗号資産のビットコインも高騰するなか、金価格は昨年8月から上値が重い軟調な推移となっている。「双子の赤字」が問題視されることとなれば、インフレ・ヘッジの本命アセットとして再び輝きを増す余地もあろう。ニューモント(NEM)のような金鉱株も出番が近いのかも知れない。(笹木)
- 3/30号では、フェデックス(FDX)、コカ・コーラ(KO)、レナー(LEN)、ピンドゥオドゥオ(PDD) 、タペストリー(TPR)、ワークディ(WDAY)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/26現在)
主要企業の決算発表予定
3月30日(火) | PVH、ルルレモン・アスレティカ、マコーミック |
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3月31日(水) | ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、マイクロン・テクノロジー |
4月1日(木) | カーマックス |
主要イベントの予定
3月30日(火) |
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3月31日(水) |
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4月1日(木) |
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4月2日(金) |
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4月5日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
フェデックス(FDX)市場:NYSE・・・2021/6/24に2021/5期4Q(3-5月)の決算発表を予定
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コカ・コーラ(KO)市場:NYSE・・・2021/4/19に2021/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
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レナー(LEN)市場:NYSE・・・2021/6/15に2021/11期2Q(3-5月)の決算発表を予定
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ピンドゥオドゥオ(PDD)市場:NASDAQ/ADR・・・2021/5/21に2021/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
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タペストリー(TPR)市場:NYSE・・・2021/5/6に2021/6期3Q(1-3月)の決算発表を予定
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ワークディ(WDAY) 市場:NASDAQ・・・2021/5/27に2022/1期1Q(2-4月)の決算発表を予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は3/26現在であり、変更される可能性があります。