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“テスラリスク、伝統的バリュー株、コモディティ銘柄”
“テスラリスク、伝統的バリュー株、コモディティ銘柄”
2021/5/25
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、李一承
“テスラリスク、伝統的バリュー株、コモディティ銘柄”
- 暗号資産(仮想通貨)のビットコイン価格が株式市場を揺さぶっている。5/19にビットコインの米ドル建て価格が前日終値比28.5%安の30,681ドルまで一時下落したことを受けて、同日のNYダウ平均株価が前日終値比500ドル以上下落する局面があった。当ウィークリー2021年5月7日号で述べた通り、ビットコイン価格はマイニング報酬半減期が約4年に1回到来することで新規発行の供給減に伴う価格高騰とその後の急落の周期性が発生しやすい。2012年11月の半減期から約1年後、および2016年7月の半減期から1年5ヵ月後にビットコイン価格が短期的にピークを付けたなか、昨年5月の半減期から1年が経過した今年5月は要注意の月だったと言えよう。
- ビットコインの影響を受けやすい個別銘柄として、世界最大級の暗号資産取引所のコインベース(COIN)、「Cash App」アプリによるビットコイン事業が売上の過半を占めるスクエア(SQ)のほかに、今年2月にビットコインを購入した電気自動車(EV)メーカーのテスラ(TSLA)が挙げられる。特に、4月半ば以降、テスラの株価がビットコイン価格と連動性を高めている点は要注意だろう。また、テスラの本業に関しても、中国市場での4月の同社EVは販売台数が前月比27%減、製造登録台数が同66%減と急減。4-6月期決算への懸念が高まりやすくなろう。同社株式時価総額が約5,600億ドルとナスダック総合指数やS&P500指数など時価総額加重平均型の指数における構成比も高いことから、米ハイテク成長株全体への影響も懸念される。
- その一方、EVでテスラを追いかける自動車メーカーのフォード(F)とゼネラル・モーターズ(GM)、今後の航空機需要増が見込まれるボーイング(BA)、および2ナノメートル(nm)の微細な半導体製造プロセス技術を発表したIBM(IBM)など、古くからの米国大企業でバリュー株の性格を強めている伝統銘柄のほうが相対的に株価が堅調に推移しているとみられる。
- また、当ウィークリー2021年5月11日号で述べた「4つのシフト」の中の「コモディティ・シフト」にも変調の兆しがみられる。CME木材先物価格が5/7まで上昇後に下落したほか、LME銅先物価格やBloomberg商品指数は5/12まで上昇後に下落。この要因として、中国人民銀行が中国で事業を行う銀行に対し新規融資額を前年同期以下の水準に抑えるよう指示していたと伝えられていたなか、5/12発表の中国の4月の新規融資額やマネーサプライM2など与信関連の金額の伸びが軒並み鈍化したことが挙げられる。コモディティ相場の中期的な基調に変化は無いとしても、現在は短期的にコモディティ・メリット銘柄の株価が重くなりやすい時期かもしれない。(笹木)
- 5/25号では、アリババ・グループ・ホールディング(BABA)、デルタ航空(DAL)、ダラー・ゼネラル(DG)、カーマックス(KMX)、ニューコア(NUE)、Unity Software Inc(U)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/21現在)
5月25日(火) | インテュイット、アジレント・テクノロジー、オートゾーン |
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5月26日(水) | オクタ、ワークデイ、エヌビディア、ピンドゥオドゥオ |
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5月27日(木) | オートデスク、HP、セールスフォース・ドットコム、アルタ・ビューティ、コストコホールセール、ギャップ、メドトロニック、ベストバイ、ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー |
5月25日(火) | - クオールズFRB副議長(銀行監督担当)が上院銀行委で証言
- 主要20都市住宅価格指数(3月)、FHFA住宅価格指数(3月)、新築住宅販売件数(4月)、米消費者信頼感指数 (5月)
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5月26日(水) | - 大手米銀CEOが上院銀行委公聴会で証言(オンライン)
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5月27日(木) | - 大手米銀CEOが下院金融委公聴会で証言(オンライン)
- 新規失業保険申請件数(22日終了週)、耐久財受注 (4月)、GDP改定値(1Q)、中古住宅販売成約指数(4月)
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5月28日(金) | - バイデン大統領が2022年度予算教書発表、G7財務相・中央銀行総裁会議(オンライン)
- 個人所得・支出 (4月)、卸売在庫(4月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (5月)
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5月31日(月) | |
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- 1999年に設立。電子商取引世界最大手。C2C(顧客間)のEコマースサイト「淘宝」と、B2C(企業対顧客)のEコマースサイト「天猫(Tモール)」を運営。電子決済(支付宝)やクラウド事業なども展開。
- 5/13発表の2021/3期4Q(1-3月)は、売上高が前年同期比63.9%増の1,873.95億元、Non-GAAPの調整後純利益が同17.6%増の262.16億元。独占禁止法違反の罰金182億元により営業赤字76.6億元を計上したが、ネット通販が同71.9%増収と本業は好調。うち、中国リテールが同73.8%増収。
- 2022/3通期は、売上高が前期比29.7%増の9,300億元を超える見通し。2021/3通期のTモールの年間取扱高(GMV)が前期比15.1%増。うち、越境ECが同34.7%増。また、4Qは中国リテール事業の1年以内稼働ユーザー数が前四半期比4.1%増、成長分野と期待されるクラウド事業の調整後EBITAが同約13倍へ拡大。独占禁止法違反を回避するため競合先のテンセントと提携の方針。(李)
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- 1924年創業で米アトランタ本拠の航空会社。航空連合「スカイチーム」設立メンバー。50ヵ国に300以上の航空路線を展開し、業界最大のネットワークを形成。2019年までの年間旅客数は約2億人。
- 4/15発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比60.4%減の41.5億USD、Non-GAAPの調整後純利益が前年同期の6.39億USDから▲22.56億USDに赤字転落。燃料費が同48.6%減だったが、コロナ禍により旅客事業が同70.3%減収、有償座席利用率が同38ポイント減の45%となった。
- 2021/12期2Q(4-6月)会社計画は、売上高が前年同期比50-55%減、旅客収容人員が同32%減。新型コロナワクチン接種の普及に伴い、1Qの国内旅行が前年同期比85%に回復。3月の1日当たりキャッシュフローが黒字転換したなか、感染防止策の一環としてブロックしてきた中央席を4月から解除。同社CEOは2Qのキャッシュフロー黒字化を経て、3Qの最終黒字化を達成できると述べた。(李)
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- 1937年創業。米国大手のディスカウント小売業者の1つ。食品や菓子類、健康・美容用品、清掃用品などを1-10USD以下の低価格で提供する。北米44州に17,177店舗を展開(2021年1月末時点)。
- 3/18発表の2021/1期4Q(2020/11-2021/1)は、売上高が前年同期比17.6%増の84.14億USD、純利益が同20.0%増の6.43億USD。新規出店数が899店の純増だったほか、既存店売上高が同12.7%増だった。1顧客当たり平均買い物回数が減少したが、1回当たり平均買い物金額が増加。
- 2022/1通期会社計画は、売上高が前期比▲2.0%-横ばい、既存店売上高が同▲6.0-▲4.0%、調整後EPSが同▲17.1-▲10.5%の8.80-9.50USDと減収減益。2月末から3/16までの既存店売上高が前年同期比16%減だったことから、会社は巣ごもり消費に伴う低価格品への需要が沈静化すると想定。一方で、「K字型」の景気回復の下では低価格品への根強い需要が続く可能性もあろう。(李)
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- 1993年にCircuit City Storesの傘下で創業後、2002年に独立。米国最大の中古車販売会社で200以上の店舗を展開するほか、金融機関との取り決めを通じて個人顧客向けの代替融資も行う。
- 4/1発表の2021/2期4Q(2020/12-2021/2)は、売上高が前年同期比4.1%増の51.64億USD、純利益が同2.3%減の2.62億USD。販売台数は個人向けが同0.9%減、法人向けが同1.2%減だったが、中古車単価は個人向けが同2.9%上昇、法人向けの同25.3%上昇。一方で、販管費拡大で減益。
- 2022/2通期会社計画は非公表だが、今後5年間の年平均増収率を10%とした。そのための戦略としてデジタルチャネルを伴うオムニチャネルの中古車小売業者となることを目指しており、4/1、オンラインで自動車情報を提供するEdmunds社との統合を発表。また、中古車競売最大手の米マンハイムによる米中古車価格指標の「マンハイム指数」は今年5月前半に前年同期比48%上昇。(李)
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- 1958年に設立の米鉄鋼最大手で、世界最大の電炉メーカー。熱延・冷延鋼板、鋼板、構造用鋼、鋼棒の製造を手掛ける。スクラップを電炉で溶かし、北米最大のスクラップリサイクル業者でもある。
- 4/22発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比24.8%増の70.17億USD、純利益が同46倍の9.42億USD。出荷量は同0.2%減の7.18万トンだったが、1トン当たり平均販売価格が同25%上昇したことが増益に寄与。稼働率は95%と、前年同期の89%や前四半期の同87%から上昇。
- 2021/12期2Q(4-6月)の会社計画は、3月売上高が単月で史上最高を更新し、4月以降もマージンが拡大するなか、1Qを上回って四半期の最高益更新を見込む。バイデン大統領が2030年までに3万メガワットの洋上風力発電を導入する目標を設定したことに伴い800万トンの鉄鋼需要が生じる見通し。これに対し、今年度設備投資計画20億USDの8割を生産拡大と費用削減に充てる予定。(李)
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
- 2005年設立。ゲーム開発言語のUnityを展開。開発者向けプラットフォームを提供する「開発ソリューション」とユーザー獲得支援の「運用ソリューション」を2大事業部門とする。20年9月に新規上場。
- 5/11発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比40.6%増の2.35億USD、Non-GAAPの調整後純利益が▲1,357万USDから▲2,732万USDへ赤字幅拡大。ソフトウェア使用料の開発ソリュー ションズ、広告収入等の運用ソ リューションズともに伸びたが、総営業費用が同76.5%増と嵩んだ。
- 2021/12通期会社計画は、売上高が前期比29.5-31.5%増の10.0-10.15億USD、調整後営業利益が前期の▲5,064万USDから▲9,000-▲1.0億USDへ赤字幅拡大。1Q末時点の年間10万USD超の開発企業の顧客数が前年同期比25.3%増の837社。ゲーム開発需要の高まりを受けた成長が見込まれるなか、継続課金のサブスクリプション収益拡大によるキャッシュフローの増加が期待されよう。(李)
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- (※)決算発表の予定は5/21現在であり、変更される可能性があります。
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