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“CPIとミシガン大学消費者マインド指数、エヌビディア”
“CPIとミシガン大学消費者マインド指数、エヌビディア”
2021/11/16
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“CPIとミシガン大学消費者マインド指数、エヌビディア”
- 11/5に1兆ドル規模のインフラ投資法案が米下院で可決したこと、および同日に発表された10月の米雇用統計の内容が好調だったことを受けて、11/8にNYダウ平均株価が3万6,565ドルの史上最高値を付けたものの、その後に発表された2つの経済指標は、今後の米国株式市場の先行きにやや暗雲を投げかけるものとなったようだ。
- 第1に、11/10発表の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.2%上昇、エネルギーと食品を除いたコア指数も同4.6%上昇といずれも1990年12月以来の高い伸びとなった。これによって米FRBのテーパリング加速化および利上げ時期前倒しの観測が市場に台頭し、米国債利回りが幅広い年限で急騰。ドル指数も前日比1%近い上昇となったほか、インフレヘッジ資産として知られる金価格も上昇した一方で、米国株の主要株価指数は軒並み売られた。この時点では、インフレ懸念は根強いものの、金利上昇とドル高は景気拡大のシグナルとして捉えられることから、グロース株にはマイナスであってもバリュー・景気循環株には必ずしもマイナスではないと見る余地があった。
- ところが、11/12発表の10月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)が66.8と10年ぶりの低水準となったことは、賃金上昇を上回るインフレ率により生活水準の悪化が実感され始めたことがが示されている。これを受けてドル指数が僅かに下落した一方、米国債利回りと金価格は上昇。「ドル安、金利上昇、金価格・エネルギー価格高」は、不況にもかかわらず物価が上昇する「スタグフレーション」の典型的な相場付きでもある。11/16発表の10月の米小売売上高、および、同日の米小売最大手ウォルマート(WMT)、ホームセンター大手ホーム・デポ(HD)、ならびに11/17のディスカウント小売り大手ターゲット(TGT)などの決算発表次第によっては、「スタグフレーション」懸念が株式市場に台頭して相場の頭を押さえる要因となる可能性に要注意だろう。
- 11/17には半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)の2021年8-10月期決算発表も控える。データセンター向けに加え、メタ・プラットフォームズ(FB)が注力する仮想空間「メタバース」向け需要等を受けて堅調な推移が見込まれるものの、相場に織り込まれている可能性もある。米上院で6月可決の後に下院での審議が止まっている「CHIPS法」と呼ばれる520億ドル規模の米半導体製造支援計画の動向によっては、受託製造のファウンドリー事業参入に向けた大規模投資を計画している競合のインテル(INTC)および微細化半導体の開発でインテルと提携するIBM(IBM)の株価浮上余地もあろう。(笹木)
- 11/16号では、アメリカン・エキスプレス(AXP)、ボール(BLL)、シーザーズ・エンターテインメント(CZR)、ホーム・デポ(HD)、KLA(KLAC)、ウーバー・テクノロジーズ(UBER)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(11/12現在)
11月16日(火) |
ウォルマート、ホーム・デポ、トランスダイム・グループ、網易 |
11月17日(水) |
エヌビディア、シスコシステムズ、TJX、ロウズ、ターゲット、百度[バイドゥ] |
11月18日(木) |
アプライド・マテリアルズ、バス&ボディワークス、インテュイット、JDドットコム、ワークデイ、ロス・ストアーズ |
11月22日(月) |
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、キーサイト・テクノロジーズ、アジレント・テクノロジー |
11月23日(火) |
HP、オートデスク、ギャップ、アナログ・デバイセズ、メドトロニック、JMスマッカー、ジェイコブズ・エンジニアリング・グループ、ベストバイ、ダラー・ツリー |
11月16日(火) |
- 地区連銀(リッチモンド、カンザスシティー、アトランタ、ミネアポリス)総裁が人種差別関連オンラインイベント参加、サンフランシスコ連銀総裁の講演、フィラデルフィア連銀が年次フィンテック会議(17日まで)、国際エネルギー機関(IEA)月報
- 米小売売上高(10月)、輸入物価指数(10月) 、鉱工業生産(10月)、企業在庫(9月)、NAHB住宅市場指数(11月)、対米証券投資(9月)
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11月17日(水) |
- ボウマンFRB理事がダラス連銀主催円卓会議で講演(オンライン)、クリーブランド連銀総裁とウォラーFRB理事が会議で講演、ニューヨーク連銀主催で米国債市場関連会議(同連銀総裁やサンフランシシコ連銀総裁が参加)、シカゴ連銀総裁がQ&Aに参加、アトランタ連銀総裁がオンライン会議で閉会の挨拶、ロサンゼルス自動車ショーのプレスデー(18日まで、一般公開は19−28日)
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11月18日(木) |
- アトランタ連銀総裁・シカゴ連銀総裁・サンフランシスコ連銀総裁の講演、米・カナダ・メキシコが首脳会議(ワシントン)、IMF専務理事がフォーラムで討論参加
- 新規失業保険申請件数 (13日終了週)、景気先行指標総合指数 (10月)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(11月)
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11月19日(金) |
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11月22日(月) |
- シカゴ連銀全米活動指数(10月)、中古住宅販売件数(10月)
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11月23日(火) |
- マークイット米国製造業・サービス業・コンポジットPMI(10月)、リッチモンド連銀製造業指数(11月)
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- 1850年創業。AmericanExpressブランドの下、個人用カード、ビジネス・カード(スタートアップ、個人事業・中小企業)、コーポレート・カード(中堅・大企業)など提供する。旅行関連サービスも行う。
- 10/22発表の2021/12期3Q(7-9月)は、金利費用控除後の総収益が前年同期比24.9%増の109.28億USD、純利益が同70.2%増の18.26億USD。総クレジット損失引当金が前年同期の6.65億USDから繰入れし1.91億USD戻入れに転換。旅行・娯楽関連支出や商品・サービス関連支出が増加した。
- 同業他社のビザ(V)やマスターカード(MA)、および決済大手のペイパルHDS(PYPL)の株価が今年7月に年初来高値を付けてから調整局面で推移。これらの企業と異なり、同社は決済取引に係る手数料だけでなく融資に伴う純金利収益の構成比が高いため、インフレによる消費者の購買力減退懸念に対する耐性があると考えられる。3Qの純金利収益は前年同期比6.4%増の19.94億USD。
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- 飲料・食品の金属空缶、プラスチック、エアゾール製品を手掛ける容器メーカー。アルミ缶では世界最大手。2016年に英国同業のレクサムを買収し、売上高を4割近く拡大。航空宇宙事業も展開。
- 11/4発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比14.9%増の35.53億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同5.4%増の3.13億USD。主力の飲料パッケージの内、北中米が同14.5%増収、欧州・中東・アフリカが同15.8%増収、南米が同6.9%増。また、航空宇宙事業が同10.4%増収だった。
- 2021/12期の会社計画は、コスト上昇圧力および供給制約の混乱が続く中で未公表としているが、中長期的な年当たりEPS平均成長率目標を10-15%としている。脱プラスチック・環境に敏感な世代を中心にリサイクル容易なアルミ缶需要の増加が世界的に高まっており、低アルコール飲料やワインなどの新しい缶飲料も台頭。日本の無印良品も飲料容器をペットボトルからアルミ缶へ全面変更。
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- 1937年設立のカジノホテル・チェーン。2020年にエルドラド・リゾーツが旧シーザーズを買収。12月末現在、米16州でポーカーやKENO、スポーツブックなどカジノのほか、ホテルや娯楽施設を運営。
- 11/2発表の2021/12期3Q(7-9月)は、昨年の買収、および計画中も含む事業売却の影響を除いたNon-GAAPの調整後売上高が前年同期比54.6%増の27.31億USD、調整後EBITDAが同2.0倍の8.82億USD。昨年の買収によりラスベガス部門の調整後売上高構成比が同15.1ポイント上昇の37.2%。
- 2021/12期の会社計画は未公表。同社は9月末に日本の和歌山IR(統合リゾート)の運営者に選定されたと発表。また、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)が11/10の決算発表上で、傘下のスポーツ専門チャンネルEPSNをプラットフォームとするオンライン・スポーツベッティング(賭け)を有望分野として言及。同社は昨年、シーザーズ・エンターテイメントにスポーツブックのライセンスを供与済みだ。
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- 1978年に設立。住宅改修・建設資材を手掛けるホームセンター大手。世界2,298店舗(21年7月末)を展開。実店舗は3万点以上の在庫を保有し、100万点超の商品を揃えたEコマース事業と連携。
- 8/17発表の2022/1期2Q(5-7月)は、売上高が前年同期比8.1%増の411.18億USD、純利益が同11.0%増の48.07億USD。家屋改築ブームの減速が響き取引件数が同5.8%減だったが、1回当たり平均購買金額が同11.3%増、売り場面積当たり売上が同5.3%増により既存店売上が同4.5%増。
- 2022/1期の会社計画は非公表。10/21発表の9月の米中古住宅販売件数(季節調整済み)は前月比7.0%上昇。来年にかけて住宅ローン金利上昇観測の下、その前に購入を希望する人が増加すれば同社へ追い風となろう。また、同社は10月、ウォルマート(WMT)が店舗から購入者までのラストワンマイル配送を請け負う新事業「ウォルマート・ゴーローカル」の最初の顧客として契約を締結。
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- 1975年設立の半導体検査装置メーカー。世界シェア首位。ナノ水準の微細化対応に強み。半導体製造装置、シリコンウェハー、フォトマスク、材料など半導体の幅広い分野のメーカーが取引先。
- 10/27発表の2022/6期1Q(7-9月)は、売上高が前年同期比35.4%増の20.84億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同53.1%増の4.64USD。前四半期比でも、売上高が8.3%増、調整後EPSが4.7%増。半導体製造関連の中でも、供給制約の問題の影響を相対的に受けにくい同社の強みが示された。
- 2022/6期2Q(7-9月)の会社計画は、前四半期比で売上高が6.8-16.4%増の22.25-24.25億USD、調整後EPSが6.7-26.1%増の4.95-5.85USDと成長継続を見込む。同社は半導体製造にてウェハー状態で回路形成・検査をする前工程(WFE)に携わるなか、WFE市場の供給制約によるペントアップ(繰越)需要が見込まれるほか、検査装置の世界首位として成長率がWFE市場を上回ると期待されよう。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
- 2009年設立。ソフトバンクG(9984)が筆頭株主。運転手とユーザーの相乗り需要に係るライドシェア、ユーザーがスマホで食事を注文後に食事を配達するウーバー・イーツなどを手掛ける。
- 11/4発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比72.2%増の48.45億USD、純利益は保有する中国配車サービス滴滴出行株価急落が響き前年同期の▲10.89億USDから▲24.24億USDへ赤字幅拡大だが、Non-GAAPの調整後EBITDAは前年同期の▲6.25億USDから8百万USDへ黒字化。
- 2021/12期4Q(10-12月)の会社計画は、前四半期比で総受注金額が8.2-12.5%増の250-260億USD、調整後EBITDAが3.1-9.4倍の25-75百万USD。3Qのセグメント別調整後EBITDAは、モビリティ事業が前年同期比2.2倍の5.44億USDに加え、宅配事業も前年同期の▲1.83億USDから▲12百万USDへ赤字幅縮小と昨年の食品宅配サービス米ポストメイトの買収(26.5億USD)が貢献し始めた模様。
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- (※)決算発表の予定は11/12現在であり、変更される可能性があります。
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