“利上げと戦時、ロシア代替需要、グロースの出番も”
- 先週号(2022年3月29日号)において、FRBによる今回の利上げ局面は、コモディティ相場の高騰を背景とする点で前々回の2004年7月(正確には6月末)から約2年間の利上げ回数17回(合計4.25ポイント)でFFレート誘導目標上限を5.25%まで引き上げた時期と類似している点を述べた。特に大きな類似点としては、今回の利上げ前にロシアがウクライナに侵攻したのに対し、2004年半ばの利上げ局面では、その約1年3ヵ月前の2003年3月にイラク戦争が開始されたことが挙げられる。利上げと戦争に直接の関連性は無いものの、急激な利上げでも経済が傾かないようにするには、経済を支える強い需要が必要であろう。核兵器の使用に至らない範囲での軍需に支えられた「戦時経済」の下で必要物資供給など経済活動が活発化し、タカ派色の強い急激な利上げ・金融引き締めが正当化されやすい面もあるのかも知れない。
- ロシアへの経済制裁も、ロシア勢が重要な役割を担っていたエネルギー、穀物、肥料、金属資源などの生産の代替需要が株価にとって大きなポジティブ要因となる側面もある。3/25にEUと米国の首脳間で、米国がEUに液化天然ガス(LNG)を供給拡大することで合意がなされたと発表。米国ウィークリー2022年3月15日号の「銘柄ピックアップ」で取り上げたエネルギー関連会社のセンプラ・エナジー(SRE)は、傘下のセンプラ・インフラストラクチャーが運営するLNGプラントの生産能力を27年に現在より6割増やす見通しと報じられた。日本のLNGプラント・エンジニアリング企業も含めて恩恵が期待されよう。
- イラク戦争開始の2003年3月から約3年後の2006年5月頃まで、NYダウ平均株価は約8千ドル水準から1万1,500ドル水準まで高騰。S&P500構成企業でその期間における株価騰落率では、エネルギー関連や鉄鋼株、鉄道貨物、農産物卸売などが値上がり率上位を占めていたが、その中でアップル(AAPL)やエヌビディア(NVDA)など一部のグロース企業も上位に食い込んでいた。真の意味で成長する企業ならば、中長期で金利水準を上回る利益率を上げることが期待されるだろうし、自社株買い余力が高いキャッシュ・リッチ企業であれば、高金利時に金利収入増も見込まれよう。金利上昇というだけでグロース銘柄が一律に売られる局面は続かないのではないだろうか。
- 今年1月にマイクロソフト(MSFT)がゲーム大手アクティビジョン・ブリザード(ATVI)を687億ドルで買収すると発表して以降、大規模ユーザー数と有力コンテンツを擁するゲーム関連株の再編への期待が続いている。また、利上げ局面の下での銀行の収益改善が期待されるなか、クラウド・バンキングなど銀行によるデジタル変革への投資積極化の動き加速も考えられよう。
- 3/29号では、チェックポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(CHKP)、デクスコム(DXCM)、インスパイアード・エンターテインメント、インテル(INTC)、nCino[エヌシーノ](NCNO)、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウェア(TTWO) を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/25現在)
主要企業の決算発表予定
3月29日(火) | PVH、マイクロン・テクノロジー、ルルレモン・アスレティカ、マコーミック |
---|---|
3月30日(水) | ペイチェックス |
3月31日(木) | ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス |
主要イベントの予定
3月29日(火) |
|
---|---|
3月30日(水) |
|
3月31日(木) |
|
4月1日(金) |
|
4月2日(土)・3日(日) |
|
4月4日(月) |
|
- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
|
|
|
|
|
|