“小売り二極化、SaaS、VIX指数、供給面からのインフレ”
- 「1ドルショップ」の大手2社であるダラー・ゼネラル(DG)とダラー・ツリー(DLTR)の両社は、2022年2-4月期決算で予想を上回る好決算を発表のほか、売上高見通しも上方修正。40年ぶりの高いインフレ率の下で予算に敏感な買い物客にとって相対的に魅力が増していることが示された。他方、店舗中心の老舗百貨店のメーシーズ(M)は、高級品需要の持続を背景に通期利益見通しを上方修正したことから、米国の消費が富裕層向けと低所得者層向けに二極分化している現状が示唆されている面があるだろう。
- ハイテクやITに係るグロース銘柄では、テレワーク普及の特需を追い風に2020年に過去最高値を付けたSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業を中心に株価底入れの兆しがみられる。ビデオ会議のズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)やログ解析プラットフォームのスプランク(SPLK)等はナスダック総合指数が過去最高値を付けた昨年11月よりも1年以上早く過去最高値から下落を開始。株価の調整が時間的経過の「日柄」を伴う場合、業績見通し改善により持続性のある株価の反転上昇が期待される。また、SaaS企業が提供するサービスは企業の生産性向上を支援することから、インフレに伴う賃金上昇圧力が強い時期に需要が高まりやすい面もあるだろう。
- 5月中旬以降に発表された4月の消費者物価指数、卸売物価指数、輸入物価指数、および27日発表の4月の個人消費支出(PCE)価格指数においてもインフレ減速の兆候が示されたことから、FRBによる政策金利引上げペースの9月以降の減速の可能性が市場で取り上げられ始めた。このような動きを受けて米国株全体が上昇に転じている。戻り上昇の目処としては、株式市場に対する投資家の心理状態を表す「VIX指数」が20ポイント割れとなる点が挙げられる。今年1/4、2/9、3/28、4/20にダウ平均が戻り上昇一服となった時、VIX指数は共通して20ポイントを下回り、その後で反転上昇していた。
- 6月からFRBが保有バランスシートの縮小を開始することにも要注意だろう。大型ハイテク株は、コロナ禍救済のためのFRBによるバランスシート拡大に伴って供給された過剰流動性の受け皿となっていた。その反動が懸念されよう。更に、24日発表の4月の新築住宅販売件数が前月比で大幅減となるなど需要面での景気減速がインフレピークアウト見通しに繋がっているなか、ロシアへの経済制裁が強化かつ長期化されることで、供給面からのインフレ圧力が高まるリスクに要注意だろう。30日にブリュッセルでEU首脳特別会合が開催予定であり、ロシア産原油の輸入停止で合意するとの観測もある。WTI原油先物価格は4月中旬以降、緩やかな上昇に転じている。(笹木)
- 5/31号では、ダラー・ゼネラル(DG)、DXCテクノロジー(DXC)、Excelerate Energy, Inc.(EE)、メーシーズ(M)、スプランク(SPLK)、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/27現在)
主要企業の決算発表予定
5月31日(火) | セールスフォース、ヒューレット・パッカード(HP) |
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6月1日(水) | ネットアップ、PVH、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ |
6月2日(木) | オクタ、ルルレモン・アスレティカ、クラウドストライク・ホールディングス、クーパー、ホーメルフーズ |
主要イベントの予定
5月31日(火) |
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6月1日(水) |
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6月2日(木) |
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6月3日(金) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は5/27現在であり、変更される可能性があります。