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マーケット > レポート > そうだったのか!ETF徹底解剖 >  第6回 ETFの流動性とはなにか?売買高がすべてではない

【そうだったのか!ETF徹底解剖】第6回 ETFの流動性とはなにか?売買高がすべてではない

2018/01/24

ETFの売買高を見て流動性がある、なしを判断していませんか?それは必ずしも間違いではないのですが、ETFの流動性について正しく理解しておくと取引戦略の工夫によって利用できるETFの幅が広がるかもしれません。ここではETFの流動性の本質と原資産の流動性から導き出されるインプライド流動性という考え方について解説します。

ETFの売買高は氷山の一角

ETFの流動性の源泉の概念図

ETFの売買高は確かに流通市場(取引所の板上)で直接的に売買された過去の口数を見る指標としての意味はあります。当然ながら、一般的にはこれが多いほどスプレッドは縮まっていて、低い取引コストでの売買が可能です。しかし、売買高はETFの根源的な流動性を示す指標ではありません。一般的にETFは原資産のバスケット(=ETFの保有銘柄)を拠出することによって新たな受益権が発行される(これを設定のプロセスといいます)ため、指定参加者を通じてバスケットとETFの受益権との等価交換が可能です。そのため、流通市場の板上での価格形成を担っているマーケットメイカーは、ETFを流通市場で売買することが不可能に見える金額であっても、原資産のバスケットを買い付けてETFの設定を行うことで、新たな受益権を得てそれを市場に提供することが出来ます。この「原資産のバスケットをETFの受益権に転換できること」が非常に重要で、たとえETFの売買高がそれほど多くなくても、原資産バスケットの流動性を利用することで大きな金額を売買することが可能になっています。
もう一つが先物などのデリバティブの存在です。投資家がマーケットメイカーからETFを買い付けた場合、マーケットメイカーはETFのショートポジションとなり、それをヘッジする必要がありますが、マーケットメイカーが自分のポジションヘッジするものとしては必ずしも常に原資産バスケットを利用するとは限りません。原資産のインデックスの先物などに十分な流動性があればそちらを利用する可能性もありますし、短期的であれば必ずしも同じインデックスでなくても相関の高い代替物があればそちらを利用するかもしれません。
下図はETFの流動性の源泉の概念を示したものですが、ETFの売買高はETFの全体の流動性の一部であることがイメージできるのではないでしょうか。

原資産の流動性の目安:インプライド流動性

では、具体的にETFの原資産バスケットから導き出される流動性はどれぐらいであると見積もればいいのでしょうか?それを示しているのが「インプライド流動性」という概念です。「インプライド(Implied)」とは「暗示された」「暗に意味している」といった意味で、この場合は、「原資産のバスケットの流動性が暗示しているETFの流動性」ということになります。もっと分かりやすく言うと、「原資産バスケットの流動性を使うとETFをどのくらいまで取引することができるか」を示す数値です。
計算はやや複雑になりますが、以下のとおりです。

インプライド流動性(口数)(Implied Liquidity Shares)= min(IDTS)
インプライド流動性(金額)(Implied Liquidity Value)= min(IDTS)×ETF価格
このとき、IDTS(Implied Daily Tradable Shares)は、インプライド日次取引可能口数を意味し、原資産バスケットの各銘柄ごとに計算されます。

IDTS = ((ADV × VP) / CSPU) × CUS
このとき、右辺はそれぞれ、
ADV = Average Daily Volume(平均日次売買高)
VP = Variable Percentage(変数:取引参加割合)
CSPU = Constituent Shares Per Unit(設定バスケットに含まれる株数)
CUS = Creation Unit Size(設定バスケット1ユニットあたりのETFの口数)
を示します。

具体的に例を挙げて説明しましょう。今、以下のような3銘柄のバスケットを原資産とするETFがあるとします。

このとき、取引参加割合(VP)は25%、1バスケットあたりのETF口数(CUS)は50,000口であるとします。例えば、銘柄AのIDTSは、
( (5,000,000 × 25%) / 10,000 ) × 50,000 = 6,250,000
となります。この意味は、銘柄Aを基準とした場合、銘柄Aの一日の売買高の25%までを使った場合、このETFは6,250,000口まで取引可能であるということです。同様に銘柄B、およびCのIDTSを算出してみると、それぞれ、2,083,333と12,500,000となります。
このとき、この3銘柄の中で一番IDTSが少ない銘柄Bの値がこのETFのインプライド流動性(口数)を示します。つまり、このETFのバスケットをそれぞれの銘柄の売買高の25%までを使って集めた場合、銘柄Bが最も制約となる銘柄となり、その結果、銘柄Bの売買高の25%まででバスケットを組成した場合、それはこのETFの2,083,333口分となるということです。(ちなみに、取引参加割合(VP)はデフォルトを25%とするケースが多いです。それは、参加率が20〜30%であれば、その銘柄の市場価格にインパクトを与えることなく執行ができると考えられているためです。)
このETFの価格が50ドルだとすれば、このETFのインプライド流動性(金額)は約1億ドルであるということが分かります。仮にこのETFの流通市場での売買高が100万ドル程度だとしても、バスケットの流動性を使えば、その100倍までは取引可能であるということになります。
実際に任意のETFのインプライド流動性を自分で算出するのはかなりの手間がかかりますが、ウィズダムツリーのウェブサイトやブルームバーグなどの情報端末で配信されていますので、それを見るのが簡単で分かりやすいかと思います。

ウィズダムツリーのウェブサイトに掲載されているインプライド流動性の例

(出所:www.wisdomtree.jp)

例えば、上記の銘柄であれば、日次の売買高は約25万口ですが、インプライド流動性は152万口となっています。これは金額換算では5億7,600万ドル相当になります。

投資家の売買執行戦略

もし機関投資家であれば、インプライド流動性の水準までであれば原資産の流動性を利用して問題なく執行ができるはずであることを確認した上で、ブローカーやマーケットメイカーと直接交渉して、店頭での価格提示を受けて取引することも可能でしょう。
しかし、個人投資家はそういうわけにはいかないでしょうから、あくまでインプライド流動性で計算された流動性が裏側にあることを認識することが第一歩となります。その上で、取引所の板を見たときに、比較的板が厚い部分をビッド・アスクの両サイドに確認することが出来るかと思います。大方の場合、この部分がマーケットメイカーの提示している価格になっていると考えられます。マーケットメイカーは基本的にバスケットの価格と流動性をにらみながらETFの板を提示しているはずですので、この水準で取引してもある意味妥当な値段であるとも言えます。しかし、より有利な価格で取引したいということであれば、この内側に指値をするのが有効でしょう。マーケットメイカーの提示価格の内側はまったく流動性がないように見えるかもしれませんが、インプライド流動性の水準までであればこのETFにとってはまったく問題のない金額であると考えられますので、それなりの額を指値で出しておいても、原資産の流動性を活用できる業者が、あなたの提示した指値と金額で取引してくれるかもしれません。
逆にあまりお勧めできないのが、成行による執行です。流通市場の流動性が非常に高い一部のETFを除くと、成行によって板に見えている価格をすべて取って、市場にインパクトを与えながら執行することはリスクが高いといえます。成行注文は、裁定取引業者やマーケットメイカーがインプライド流動性を考えてバスケットとの裁定取引を実施するかどうかを判断する時間を与えずに取引してしまうので、執行価格も不利になりがちです。

ETFの流動性を理解するメリット

原資産の流動性を利用した取引は、機関投資家にとっては直接的にそのような取引を実施することも可能であり、その理解はもはや必須でしょう。一方で、個人投資家は小口取引のために原資産の流動性があっても、流通市場でETFの流動性がないと意味がないと思ってしまいがちです。しかし、ETFの流動性の構造とインプライド流動性の意味を理解しておくことで、どれぐらいの金額までの注文であれば指値で出しておいても他の市場参加者がその価格を取りに来てくれる可能性があるのかなどの判断材料にはなるはずです。また、これを理解しておくことで、取引の対象としてもよいと思えるETFの種類も増え、より効率的な取引戦略やポートフォリオ戦略の構築が可能になるかもしれません。
流通市場の流動性と原資産の流動性の両方があるということはETFという金融商品の優位性の一つです。そもそも非上場の投資信託は原資産の流動性“しか”使えない(ファンドマネジャーが現金を投資家から受け取ってそれで原資産を買いにいく)わけで、言ってみればETFの流動性≧投資信託の流動性ということになります。
ETFの流動性とその仕組み、またその評価方法を理解しておくことは、ETFの売買執行に対する考え方の整理と利用できるETFの種類を拡大することにつながります。

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著者

渡邊 雅史(わたなべ まさふみ)

ウィズダムツリー・ジャパン株式会社 ETFストラテジスト

アクセンチュア株式会社にて金融機関向けコンサルティング業務に携わった後、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)にて、ポートフォリオマネジャー、ストラテジスト、及びETF部門専任のストラテジストを歴任。金融ベンチャー企業に参画した後、2016年よりWisdomTree JapanのETFストラテジスト。ETF市場の分析、ETFを用いた運用戦略の立案・提案業務などに携わる。
慶應義塾大学総合政策学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス修士(MBA)。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』(金融財政事情研究会)(共著)

渡邊 雅史

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  • 本資料は、ウィズダムツリー・ジャパン株式会社が作成したもので、WisdomTreeグループが組成・運用するWisdomTree ETF等についての情報提供を目的としたものであり、WisdomTree ETFの勧誘を行うことを目的とするものではありません。
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