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【そうだったのか!ETF徹底解剖】第11回 ロボアドバイザーとETF
2018/04/04
ETFといった新しい金融商品をどのように投資家に提供するのかというところに、新たなサービスとして登場したのがロボアドバイザーです。これは、まさに投資アドバイスのテクノロジー化と言えるかと思います。最近はこの用語もかなり一般的になってきています。ネットやスマートフォンのアプリでプロファイリングを行い、自分に合ったポートフォリオというのを提示してくれる。さらに、ものにもよりますが、実際にその運用までをやってもらえます。ロボアドバイザーというのは基本的にはコストをかなり重視しますので、コスト効率のいいETFを利用するケースが米国では多くなっています。
米国のロボアドバイザー
今までは、対面すなわち人間のアドバイザー(正確に言うとセールスマンかもしれません)が、アクティブ運用のコストの高い投資信託を販売しているというのが基本的な対面証券もしくは銀行のビジネスモデルでした。米国では、それに対して、ロボアドバイザーがパッシブもしくはスマートベータのETFを利用して運用サービスを提供するという状況が生じています。そして日本でもこういった動きが徐々には起こりつつあります。
ポイントは、こういったテクノロジーの活用というものが誰にもっとも利益があるかということです。この答えは投資家であり、基本的に資産運用の業界に起こっているテクノロジーの影響というのは、投資家にメリットのある方向に進んでいます。
ただし、ロボアドバイザーも単純にロボアドバイザービジネスをそのまま継続しているかというとそういうわけでもありません。図表1は、米国のロボアドバイザーの預かり資産のランキングです。上から3番目のBetterment、その下のWealthfront、さらに下のPersonal Capitalあたりが、ベンチャーとして成長して非常に話題を呼んだロボアドバイザーですが、実際に現在ロボアドバイザーの最大手というのはVanguardです。ご存じの方も多いかと思いますが、Vanguardは低コストの投資信託もしくはETFで有名な大手の運用会社ですが、そこが実はロボアドバイザーに参入して一気に資産を集めています。また2番手は、Charles Schwabですので、米国で言えば大手のネット証券兼アドバイザープラットフォームということになります。そういったところも参入してきたことによって、ロボアドバイザーの業界も非常に競争が厳しくなりつつあります。このような中で何が起こったかというと、この3番手のロボアドバイザーだったBettermentが、ヒューマンアドバイス、すなわち人間での投資アドバイスというのを提供するという方向に舵を切ったことがかなり大きなニュースとなりました。
図表1:ロボアドバイザーの残高ランキング
- 出所:”ETF Report Feb 2017” ETF.com
ロボアドバイザーのサービスモデルの発展
このようなロボアドバイザーのサービスモデルについては、いくつかの段階を経て今のところに至っています(図表2参照)。当初のビジネスモデルは対面のアドバイザーがアクティブの投資信託または個別銘柄を選ぶわけですが、報酬の体系はコミッション(売買手数料)というところから始まっています。そこに、フィービジネス(預かり資産ベースの報酬体系)への転向が起こります。フィービジネスになると、コストの高いアクティブ運用の投資信託で、しかもパフォーマンスが悪いものを選ぶインセンティブはまったくなくなりますので、一部はパッシブのETFなどを利用する形になってきます。そこにさらにスマートベータという考え方が登場すると、仮にパフォーマンスがある程度出ているアクティブマネジャーでも、そのパフォーマンスがある一定のルールに則って運用することで実現できるのであれば、このアドバイザーはそのファンドマネジャーに高いフィーを払う必要はないので、その部分もスマートベータのETFに置き換わるようになります。そのうち、ポートフォリオの運用だけを請け負うアドバイザーが登場します。彼らをETFストラテジストなどと呼びますが、そういう業者が登場してくることで、対面のアドバイザーは基本的には顧客の管理にフォーカスして、運用自体はETFストラテジストがやるというようなアウトソースモデルができました。そういった中でロボアドバイザーが登場してきますが、当初のロボアドバイザーは顧客対応もネットやスマホでしかできないという形ですので、言ってみれば顧客対応からポートフォリオの管理まで全部一括して請け負うような形でした。しかし、最近では顧客対応に関しては人がやるほうが実際はニーズがあり、現実的でもあるということで、いわゆるハイブリッドモデルに移行しつつあるというのが現状の形です。
図表2:サービスモデルの変化
ETFとロボアドバイザーというテクノロジー
資産運用におけるテクノロジーの発展により、「ロボアドバイザー+ETF」というサービスが提供されることで、投資家の皆さんは、ETFを使うことによる低コストで良質な投資戦略とその組み合わせを手軽に利用できるようになっているわけです。様々な種類があり、あらゆるポートフォリオを低コストで組むことができるETFと、顧客のプロファイリングやポートフォリオの運用を自動で遂行できるロボアドバイザーは、まさに資産運用業界に変革を起こしているテクノロジーの代表といえます。
著者
渡邊 雅史(わたなべ まさふみ)
ウィズダムツリー・ジャパン株式会社 ETFストラテジスト
アクセンチュア株式会社にて金融機関向けコンサルティング業務に携わった後、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)にて、ポートフォリオマネジャー、ストラテジスト、及びETF部門専任のストラテジストを歴任。金融ベンチャー企業に参画した後、2016年よりWisdomTree JapanのETFストラテジスト。ETF市場の分析、ETFを用いた運用戦略の立案・提案業務などに携わる。
慶應義塾大学総合政策学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス修士(MBA)。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』(金融財政事情研究会)(共著)