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【そうだったのか!ETF徹底解剖】第12回 ETFを取引するための10のキーポイント
2018/04/18
ETFを取引する際には様々なことを考慮する必要があります。これは個人投資家であっても大規模な取引を行う機関投資家であっても同様です。ETFの取引において投資家が意識すべき10のキーポイントを解説します。
1. 取引しようとしているETFのフェアバリューを理解する
ETFのフェアバリューは、そのETFの原資産が何なのかによって違う考え方をする必要があります。もし、原資産が同時刻に取引されているのであれば原資産バスケットの価格からETFのフェアバリューを考えることになります。しかし、同時刻に原資産が取引されていないのであれば、そのETFの市場価格自体が価格発見をしていることになります。
2. 取引の最初の15分間と最後の15分間は取引しないようにする
すべての原資産の取引がまだ開始されていない場合、ETFの価格は不安定になる可能性があります。また、引け直前は流動性供給者があまりリスクを取りたがらないため、こちらも価格形成が不安定になる可能性が高まります。
3. 原資産とETFの取引時間が重複している時間帯を狙う
ETFの価格が原資産と完全にリンクできる時間帯で取引することがまずは第一歩です。ETFと原資産の上場市場が同じ場合はもちろん、米国と欧州の取引時間が重なっているときに、米国上場の欧州株ETFを取引したり、日本とアジア市場の取引時間が重なっているときに、日本上場のアジア株ETFを取引したりすれば、たとえ上場市場が異なっていてもETFの価格形成は安定していると考えられます。
4. 利用可能な注文タイプのすべてを利用する
あらゆる取引方法を検討すべきですが、個人投資家の場合は、一般的には成行注文よりは指値注文を用いたほうがよいでしょう。また、ストップ・オーダーを利用する場合もストップ・リミットにすべきです。
5. 指値を現実的に執行が期待できるフェアバリューの合理的な範囲内に置く
1とも関連しますが、非合理的な指値で取引しようとすることは執行の機会を逸することになります。フェアバリューを理解したうえで執行可能な指値を検討する必要があります。
6. 大きなブロック取引については、流動性供給者を活用する
機関投資家の大口の取引の場合は流動性供給者がその執行を手助けしてくれるはずです。個人投資家が直接ブロック取引を行うケースはあまり想定できませんが、普段流動性のあまりないETFでも、まれに大きな出来高となる場合があります。おそらくこういった場合でも市場価格は大きく変動していないはずです。機関投資家が大口の売買を行ったら価格が大きくふれるのではないか?という懸念をする必要はありません。流通市場での流動性が低いETFについては、機関投資家は流動性供給者を通して原資産の流動性を利用したブロック取引を行っているはずです。
7. 過去にあった同様の、またはより大きなサイズの取引と比較することで取引の市場インパクトの感覚を得る
過去の取引を振り返ることで、市場インパクトの大きさや、より良い執行の示唆を得ることができます。
8. トレーダーのリスク資本を利用する必要がある場合や、原資産のバスケットを取引してもらう場合を理解する
機関投資家の場合、トレーダーからリスク価格を提示してもらったり、バスケットを取引してもらった後にETFに変換してもらったりといった取引手法も活用できるはずです。
9. 流動性供給者との関係を構築する
機関投資家の場合は流動性供給者との信頼関係を築いておくことで、複雑なETFの取引も達成できるかもしれませんし、執行における助言を得ることができるかもしれません。
10. ETFの執行に注意を払わないというコストを過小評価しない
ETFの執行は、ポートフォリオのパフォーマンスを左右する非常に重要な事象です。ちょっとした工夫によって執行コストを削減できるだけでなく、利用可能なETFの幅を大きく広げることもできるかもしれません。
※ 6、8、9については、直接個人投資家が関わることはあまりないと思いますが、ETFの流動性供給メカニズムを理解することで、ETFの執行に際してより自信を持つことができるでしょう。
これらはすべて、デビッド・アブナー著「ETFハンドブック−プロフェッショナルが理解すべき最先端投資ツールのすべて」で述べられているものになります。ETFの仕組みや価格形成、取引についての理解をより深めたいのであれば、この本はその一助となるかもしれません。
著者
渡邊 雅史(わたなべ まさふみ)
ウィズダムツリー・ジャパン株式会社 ETFストラテジスト
アクセンチュア株式会社にて金融機関向けコンサルティング業務に携わった後、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)にて、ポートフォリオマネジャー、ストラテジスト、及びETF部門専任のストラテジストを歴任。金融ベンチャー企業に参画した後、2016年よりWisdomTree JapanのETFストラテジスト。ETF市場の分析、ETFを用いた運用戦略の立案・提案業務などに携わる。
慶應義塾大学総合政策学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス修士(MBA)。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』(金融財政事情研究会)(共著)