9/2(金)に発表された8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比15.1万人増、失業率が4.9%となりました。前者は事前予想である18万人を下回り、後者は前月から0.1%の悪化となりました。
このように、米雇用統計が弱めの結果になったにもかかわらず、9/2のNY市場では株価が上昇し、外為市場では一時1ドル104円台まで円安・ドル高が進みました。もともと8月は雇用統計の数字がブレやすいことに加え、発表された数字そのものも、FRBによる年内利上げ説を否定するほど弱いとはみなされなかったようです。
これを受けた9/5(月)の日経平均株価は買い先行となり、一時前週末比230円高となる17,156円まで上昇しました。後半伸び悩んだものの、チャート的には「三角保ち合い」から上放れの形となりました。当面は上昇が期待できそうです。
<今週のココがPOINT!>
雇用統計発表後に株高、円安が進展 |
9/2(金)に発表された8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比15.1万人増、失業率が4.9%となりました。前者は事前予想である18万人を下回り、後者は前月から0.1%の悪化となりました。この他、時間当たり賃金や週間労働時間等の指標も予想した程には増えませんでした。
このように、米雇用統計が弱めの結果になったにもかかわらず、9/2のNY市場ではダウ平均が前日比72ドル高と上昇し、外為市場では一時1ドル104円台まで円安・ドル高が進みました。普通に考えれば、雇用統計が弱いとみなされた時は「FRBによる利上げが先送りされる」という期待につながりやすく、今回のように株価が上昇しても不思議ではありません。しかし、このような時は同時に円高・ドル安になりやすいもので、円安・ドル高が進んだことについてはやや不可解であると考えられます。
「8月雇用統計」は、夏休みの影響か、2015年までの過去19回のうち、発表値が事前予想を下回ったことが15回もあるなど、下振れやすい傾向がもともとある上、逆に速報値発表後、翌月に改定値が発表される時には上方修正されるケースが多いというデータがあります。このようにただでさえ、ブレやすいことに加え、米労働人口約1億6千万人の中で3万人(事前予想と発表値との差)の差は誤差に近い側面があります。また、6〜8月の月平均として平滑化すると、非農業部門雇用者数の増加数は月平均23.2万人増であり、米労働市場は十分健全であるとみることができます。
このように、8月の雇用統計は数字だけ見ると弱いものの、冷静に分析すれば悲観すべき程でもない内容であり、解釈の違いを生みやすい状態であったと言えます。足元の株式市場では上昇基調、外為市場では円高一服となっていましたが、結局、これまでの流れを変える程ではない「雇用統計」であったと言えるでしょう。
いずれにせよ、NY株高、円安・ドル高は、日経平均株価にとっては好材料であり、9/5(月)の日経平均株価は買い先行となりました。終値では伸び悩み、この日の四本足は「陰線」にはなったものの、7/21高値16,938円、8/12高値16,943円を上回り、5/31以来の17,000円台回復を実現しました。日経平均株価は、形の上では「三角保ち合い」を上放れ、当面は上昇が加速しやすい状態になったとみられます。
図1:日経平均株価(日足)〜これで3回連続して雇用統計が日経平均上昇要因に
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/9/6取引時間中。
図2はドル・円相場(日足)の動きです。前述したように、8月雇用統計が発表された後、一時104円31銭の円安・ドル高水準となりましたが、その後はやや押し戻され、9/6(火)現在は103円台で推移しています。
外為相場に強い影響を与える米10年国債利回りの動きを示したのが図3です。新興国経済の減速やBrexitなど、いくら不透明要因が大きかったにせよ、2015年末に政策金利を引き上げた後、このような金利低下が起こるのはやや異常といえるかもしれません。現在はその修正過程に入っているように見受けられ、特に足元は三角保ち合いが形成されているように思われます。仮に、米10年国債利回りが1.6%台半ばを超えてくると、米金利上昇が加速する可能性があります。※
その場合は、外為市場で円安・ドル高が進み、日経平均株価が18,000円近辺に向けて上昇する可能性もありそうです。
※チャート的には米10年国債利回りが1.55%以下に低下してくると、三角保ち合いを下放れた形になり、米金利の低下が加速し、円高・ドル安になるリスクがあります。
図2:ドル・円相場(日足)・過去3ヵ月
図3:米10年国債利回り・過去6ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/9/6取引時間中。
当面のタイムスケジュール〜メジャーSQ接近も波乱を予想する向きは少ない? |
表は、当面の重要なタイムスケジュールをご紹介したものです。米雇用統計の発表を終え、重要な経済指標の発表は少なめであり、当面は9/9(金)のメジャーSQ算出日に注意すべきと考えられます。
もっとも、先物取引との裁定取引で積み上がる「裁定買い残」は現在6,000億円程度で、昨年末の3兆円や2013/5の4.2兆円から大きく減少しています。裁定買い残の水準が前回著しく低下したのはリーマンショック直後の2009/3で残高は4,850億円まで減少していましたが、ほぼそれ以来の低水準と言えます。
それだけ先物市場の厚みが減ったことを意味し、その意味では寂しい限りです。しかし、その分リスクも低下したと考えられますので、メジャーSQは無事通過になる可能性が大きいように思われます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜日米の金融政策決定会合まで重要イベントは少なめ
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
9/6(火) |
米国 |
ISM非製造業指数 |
雇用統計の後だけに注目度は低下? |
9/7(水) |
米国 |
ベージュブック |
米金融政策の判断材料。内容に注目 |
9/8(木) |
日本 |
4〜6月期GDP改定値 |
前回は+0.2% |
日本 |
8月都心オフィス空室率 |
7月は3.94%と、2008/8以来の低水準まで低下 |
|
日本 |
8月景気ウォッチャー指数 |
先行指数の予想は45.5 |
|
中国 |
8月貿易収支 |
輸出(ドル建て・前年同月比)は4%減の予想 |
|
欧州 |
ECB定例理事会・ドラギ総裁会見 |
主要金利、資産買入額に変更はない? |
|
9/9(金) |
日本 |
メジャーSQ算出日 |
裁定買い残が過去最低水準に近く波乱の要素は少ない? |
中国 |
8月消費者物価 |
前年同月比1.7%上昇の予想 |
|
9/12(月) |
日本 |
7月機械受注 |
6月は前月比8.3%増 |
9/13(火) |
中国 |
8月鉱工業生産 |
前年同月比6.2%増の予想 |
中国 |
8月小売売上高 |
同10.2%増の予想 |
|
中国 |
8月都市部固定資産投資 |
同7.9%増の予想 |
|
独 |
9月ZEW景況感指数 |
アナリストや機関投資家、市場関係者など350人に景況感をアンケート |
|
9/15(木) |
日本 |
東京ゲームショウ |
AI技術やVRなど新しいアイデアがどうゲームに応用されているのか? |
英国 |
BOE金融政策委員会 |
|
|
米国 |
8月小売売上高 |
前月比横ばい? |
|
米国 |
9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 |
|
|
米国 |
8月鉱工業生産・設備稼働率 |
|
|
中国 |
休場(〜16日) |
|
|
9/16(金) |
EU |
英国を除く27ヵ国で非公式首脳会議 |
|
米国 |
8月消費者物価指数 |
|
表2:日米中央銀行会議の結果発表予定日
|
2016年 |
2017年 |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 |
9/21(水)、11/1(火)、12/20(火) |
1/31(火)、3/16(木)、4/27(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) |
9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) |
2/1(水)、3/15(水) |
※各種報道等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは2016/9/6現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。
【ココがPOINT!】「保ち合い放れ」から日経平均株価は上昇へ!? |
図4は日経平均株価の一目均衡表(日足)です。2本の先行スパンが交差する「要注意日」は単純に「値下がりに注意すべき」タイミングではなく、それまでと相場の質が変わりやすいことを意味しています。直近では、8/29(月)から8/30(火)にかけて「要注意日」が形成されていますが、それまでは方向感の定まりにくい展開でしたが、それ以降の日経平均株価は上昇方向に動意付いているようにみえます。
図5は日経平均株価の日足をやや長めにとったものですが、おおむね7月以降は「三角保ち合い」が形成されてきたと見受けられます。「保ち合いは放れた方につけ」というのが一般的な考え方です。今回は「上放れ」となりましたので、日経平均株価の上昇が加速する可能性が出てきたと考えられます。
上値抵抗ラインとしては
(1)5/31に付けた短期的な高値17,251円
(2)4/25に付けた短期的な高値17,613円
(3)日経平均の予想EPS1,183.99円(9/5)に予想PER15倍をかけた17,759円
(4)15/6/24高値20,952円から16/6/24安値14,864円に至る下落幅の半値戻し水準17,908円
等が想定されます。
図4:日経平均株価(日足・一目均衡表)
図5:日経平均株価(日足・過去6ヵ月)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/9/6取引時間中。
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