10月に入り日経平均株価は堅調に推移しています。9月末には16,449円でしたが、10/11(火)には17,000円の大台を回復し、10/21(金)には一時5/31(火)の高値17,251円を回復しました。10/25(火)はそれを上回る水準で取引が始まっており、ここから先の上値抵抗ラインである4/25(月)の高値17,613円や、2/1(月)の高値17,906円、1/7(木)以来付けていない18,000円の大台等を目指す展開に入ったように見受けられます。
日経平均株価はそれらの上値抵抗ラインに到達、あるいはそれらを上回ることができるのでしょうか。それとも跳ね返されてしまうのでしょうか。ここから先は重要日程が目白押しですが、それらについてはどう考えるべきでしょうか。
日経平均株価は上値抵抗ラインを突破!18,000円が見えた? |
9月の日経平均株価は前月末比で2.6%下落し、月末の終値は16,449円になりました。しかし、10/25(火)現在では前月末比5%程度上昇しており、10月の日経平均株価は堅調に推移しているとみてよさそうです。こうした9月相場と10月相場の「差」はどこから来たのでしょうか。
ひとつ確かなことは海外投資家のスタンスが変化したことです。9月末までの5週間、海外投資家は計1兆1,693億円の日本株を売り越していましたが、10月第1・第2週は一転、計3,937億円の買い越しに転じました。実は2015年も9月まで海外投資家は売り越し基調でしたが、10月第2週からは買い越しに転じています。もともと、9月は過去の平均でみるともっともパフォーマンスの悪い月になっていますが、その背景にはこうした海外投資家の動きの「クセ」が影響しているかもしれません。
9/2(金)の1ドル104円31銭を起点に、9/22(木)の1ドル100円07銭まで、円高・ドル安基調が続いたことも、9月の株安を演出した可能性がありそうです。ドル・円相場はその後円安・ドル高基調に転じ、10/13(木)には1ドル104円62銭まで進みました。このように、9月は円高、10月は円安となったことも9月相場と10月相場の「差」を生み出したと言えそうです。ただ、外為相場における今回の円安・ドル高の動きは「円高局面におけるドルのアヤ戻し」ではなく、より強い円安・ドル高基調への転換を伴っている可能性もありそうです。図2は過去1年のドル・円相場の一目均衡表を示したものですが、何度となく跳ね返されてきたクモをようやく上放れてきたように見えるためです。
米国の代表的な経済指標である雇用統計では、非農業部門雇用者数が6月・7月はそれぞれ前月比25万人以上増加しましたが、9/2(金)発表の8月分は16.7万人増に減速してしまいました。また、米国企業の景況感を示すISM製造業景況指数も、9/1(木)に発表された8月分は景気の良し悪しの境目である50を6ヵ月ぶりに下回ってしまいました。こうして米国経済の不透明感を示す材料が続いたことで、米国株の上値が抑えられ、円高・ドル安になったことも、9月の日本株安につながりました。10月は10/3(月)に発表されたISM製造業景況指数が回復したことや、10/7(金)発表の雇用統計で非農業部門雇用者数の過去3ヵ月平均がおおむね20万人増を確保したこと等を背景に、年内利上げシナリオが維持されました。それを受け、外為市場では米10年国債利回りが上昇し、円安・ドル高につながりました。
このように、9月から10月にかけて需給関係や投資環境が好転したことで、日経平均株価は上昇に転じたと考えられます。日経平均株価はここから先の上値抵抗ラインである4/25(月)の高値17,613円や、2/1(月)の高値17,906円、1/7(木)以来付けていない18,000円の大台等を目指す展開に入ったように見受けられます。
図1:日経平均株価(日足)〜三角保ち合いを「上放れ」
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/10/25取引時間中。
図2:ドル・円相場(日足)・一目均衡表
図3:米S&P500(日足)・過去6ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/10/24(日本時間)現在。
当面のタイムスケジュール〜多忙な2週間 |
表1は、当面の重要なタイムスケジュールをご紹介したものです。日米ともに決算発表が本格化しつつあります。このうち、米国では今週末にかけて主要上場企業の発表が続きます。我が国でも10/28(金)や10/31(月)が社数ベースで第1のヤマ場となり、主要企業の多くも決算発表を実施します。
我が国で決算発表がさらに佳境となる11月上旬、米国では重要経済指標の発表ラッシュとなります。11/1(火)発表のISM製造業景況指数や、11/2(水)のADP雇用統計、11/4(金)の雇用統計(労働省)等からは目が離せません。なお、11/1(火)には日銀金融政策決定会合の結果が、11/2(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が予定されています。今回は両会合ともに金融政策の変更は予想されていないようですが、要人発言等で株価が動く可能性は残るため、一応の注意は必要です。
なお、11/8(火)には我が国の株式市場で時価総額が最大のトヨタ(7203)の決算発表があり、米国では大統領選挙の実施が予定されています。この辺を境に株価が大きく動き出す可能性もあり、注意が必要です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜多忙な2週間
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
10/24(月) | 中国 | 18期6中全会(〜10/27) | 中国共産党の重要会合。習政権による「反腐敗」が主要テーマ |
10/25(火) | 日本 | JR九州が新規上場(9142) | 公開価格での時価総額は4,160億円の計算 |
独 | 10月Ifo景況感指数 | 7千社のドイツ企業を対象に現況と6ヵ月後の景況感をアンケート | |
米国 | 8月FHFA(米連邦住宅金融庁)住宅価格指数 | S&PコアロジックCS住宅価格に比べ信用度が高い | |
米国 | 8月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 「20都市」対象の調査で前年比5.1%上昇が市場コンセンサス | |
米国 | コンファレンスボード消費者信頼感指数 | アンケート対象者が5,000人と「ミシガン大学」より調査規模が大きい | |
米国 | ◎決算発表〜スプリント、アップル他 | 2社とも我が国の企業に大きく影響も | |
10/26(水) | 日本 | ★決算発表〜LINE、キヤノン、任天堂等53社 | |
米国 | 9月新築住宅販売 | 9月は前月比-1.2%前後が市場コンセンサス | |
米国 | ◎決算発表〜ボーイング、テスラ他 | ||
10/27(木) | 日本 | ★決算発表〜富士フィルム、富士通等133社 | |
英国 | 7〜9月期GDP | 1〜3月は前年比1.3%増、4〜6月は同2.1%増 | |
米国 | 9月耐久財受注 | 米国の設備投資を占う。「輸送用機器を除く」で前月比0.2%増が市場コンセンサス | |
米国 | ◎決算発表〜フォード、アマゾン、アルファベット他 | ||
10/28(金) | 日本 | 9月失業率・有効求人倍率 | |
日本 | 9月全国・10月東京都区部消費者物価 | 食料・エネルギーを除く10月・東京都分で前年比-0.1%が市場コンセンサス | |
日本 | ★決算発表〜コマツ、JR東等297社 | ||
米国 | ◎決算発表〜エクソンモービル、シェブロン他 | ||
10/31(月) | 日本 | 9月鉱工業生産 | |
日本 | ★決算発表〜ファナック、村田製、ホンダ他 | ファナック、村田製でアップル関連企業の先行きを占う | |
欧州 | 7〜9月期GDP | 前年比1.6%成長が市場コンセンサス | |
米国 | 9月実質個人支出 | ||
11/1(火) | 中国 | 10月製造業PMI | 中国企業のマインドの強弱を図る |
日本 | ★決算発表〜新日鉄、ソニー、シャープ等68社 | PS VRを発売したソニーの業績改善傾向は続くのか | |
日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表 | 現状維持が市場コンセンサス | |
米国 | ISM製造業景況指数 | 米国企業のマインドは?新規受注や雇用等の個別指標にも注目 | |
米国 | ◎決算発表〜ファイザー他 | ||
11/2(水) | 日本 | ★決算発表〜富士重、三井物産等116社 | |
米国 | 10月ADP雇用統計 | 雇用者は16万人増が市場コンセンサス。労働省の雇用統計の前哨戦 | |
米国 | ◎決算発表〜クアルコム、FB他 | ||
米国 | FOMC結果発表(日本時間では11/3早朝) | 今回は現状維持の公算 | |
11/3(木) | 日本 | 東京市場は休場(文化の日) | |
欧州 | ECB経済報告 | ||
英国 | BOE金融政策委員会 | ||
米国 | 10月ISM非製造業景気指数 | 雇用指数などにも注意 | |
米国 | 9月製造業受注 | ||
11/4(金) | 日本 | ★決算発表〜三菱商等260社 | |
米国 | 10月雇用統計 | 非農業部門雇用者数は前月比15万人増が市場コンセンサス | |
11/7(月) | 日本 | ★決算発表〜ソフトバンク、日産等236社 | |
11/8(火) | 日本 | ★決算発表〜トヨタ等237社 | |
米国 | 大統領選挙投開票 |
表2:日米中央銀行会議の結果発表予定日
2016年 | 2017年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 11/1(火)、12/20(火) | 1/31(火)、3/16(木)、4/27(木)、6/16(金)、7/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/2(水)、12/14(水) | 2/1(水)、3/15(水)、5/3(水)、6/14(水)、7/26(水) |
※各種報道等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは2016/10/24現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。
【ココがPOINT!】当面の上値メドは? |
これまで述べてきたように、日経平均株価は5/31(火)の高値を突破してきたので、4/25(月)の高値17,613円や、2/1(月)の高値17,906円、1/7(木)以来付けていない18,000円の大台等が今後の目標であり、上値抵抗ラインになると考えられます。利上げが予想される12/14(水)結果発表の米FOMCまでは円安・ドル高が進みやすいとみられ、日経平均株価もその辺までは上昇しても不思議ではないと考えられます。
2016年7〜9月期の決算発表は11/14(月)頃まで続きますが、円安・ドル高が進んでいれば、仮に輸出企業の業績見通し下方修正が増えても、株価下落は短期に収束すると考えられます。むしろ、決算発表の進捗につれ、アク抜け感から上昇に転じる銘柄も増えると考えられます。
ただ、今回の上昇は上述した「18,000円の大台」に台替わりした辺りが転換点になる可能性がありそうです。現在、日経平均の予想EPSは1,187円76銭と計算され、それを基準に計算した予想PER15倍相当水準は17,816円となります。日経平均株価の18,000円はそれを若干超えた水準ですので「目標達成感」が出やすいと考えられます。東証一部の騰落レシオがすでに136%と「過熱圏」に入っていること、日経平均のRSI(14日)も同様に74%と過熱圏に入っていること等を考えると、相場の先行きに慎重に対処すべき要因も出てきています。
こうした中、11/8(火)に米大統領選挙が投開票となりますが、政策の継続性が期待される「クリントン大統領」ならば株価は上昇し、逆に「トランプ大統領」ならば、警戒感から下落しやすいというのが平均的な見方のようです。現在、世論調査ではクリントン氏優位ですので、選挙に向けての過度な不安は不要かもしれません。ただ、株価水準には十分注意が必要なようです。