東京株式市場は引き続き調整モードになっているようです。日経平均株価は8/9(水)に「ボックス相場」の下限とみられていた19,755円(6/15の取引時間中に付けた安値)を、8/18(金)には終値で19,500円を割り込んでしまいました。このように強弱感が長く拮抗した状態が続いた後に下放れた時は「要注意」と考えられます。
株価が「ボックス相場」から下放れる契機となったのは、北朝鮮情勢の緊迫化でしたが、ここにきてトランプ大統領に対する米国内での不信感が増幅していることもマイナス材料になっています。世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まる中、外為市場で円高が進んでいることも重石になっていると考えられます。
8月下旬から9月上旬にかけては、世界的に重要日程が目白押しになっており、波乱が起きても不思議ではないと考えられるため、市場参加者は要注意であるとみられます。ただ、「200日移動平均線」や「予想PER13.6倍」など、重要な下値支持ラインが接近していることも確かで、押し目買いのチャンスもありそうです。
<今週のココがPOINT!>
「要注意」状態が続く東京株式市場 |
「ボックス相場」や「三角保ち合い」など、強弱感が長く拮抗した状態が続いた後、相場がそこから放れた時は、「放れた方につけ」というのがテクニカル分析上の考え方です。日経平均株価は8/9(水)に「ボックス相場」の下限とみられていた19,755円34銭(6/15の取引時間中に付けた安値)を、8/18(金)には終値で19,500円を割り込んでしまいました。強弱感が長く拮抗した状態が続いた後に下放れた形ですので、現在は「要注意」の局面であると考えられます。
米国のワシントン・ポスト(電子版)が、「北朝鮮が核弾頭をミサイルに搭載する技術を開発した」という米国防情報局(DIA)の分析を紹介し、それを受けて北朝鮮と米国の間の緊張状態が高まりました。それを嫌気する形で8/9(水)の日経平均株価は前日比257円30銭安と急落し、6/15(木)の取引時間中に付けた上記の安値を割り込んでしまいました。その後、北朝鮮情勢が小康状態を迎えたこともあり、日経平均株価もやや値を戻しましたが、8/16(水)から8/22(火)にかけては5営業日続落となり、8/22(火)には一時19,361円95銭まで下落しました。
8/12(土)に米バージニア州で白人至上主義を掲げる人々とそれに反対する人々の間で衝突が起き、死傷者が出た事件に関し、「双方に非がある」としたトランプ大統領の発言が「白人至上主義に寛容」と捉えられることになりました。そのことで多様性を成長の源と考える米産業界では多くのトップがトランプ政権の諮問委員会から辞任し、それを嫌気する形で8/17(木)の米国市場ではNYダウが前日比274.14ドル安と急落。翌8/18(金)の東京株式市場では日経平均株価が前日比232円22銭安となり、終値が19,500円を割り込む展開となりました。
今後の東京株式市場はどうなるのでしょうか。図2にもあるように、外為市場は円高・ドル安圧力の強い展開になっています。米主要企業全体の動きを示すS&P500指数は図3にもあるように、一目均衡表が「3役逆転」目前の状況となっています。外部環境面では、東京株式市場には厳しい状況になっていると見受けられます。
図1:日経平均株価(日足)〜ボックス相場から「下放れ」
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/08/22現在
図2:ドル・円相場(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/08/22取引時間中
図3:S&P500指数(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/08/21(現地時間)現在
当面のタイムスケジュール〜「ジャクソンホール会議」以降も重要日程が目白押し |
当面は現地時間8/24(木)から開催が予定されている「ジャクソンホール会議」であると考えられます。FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長およびECB(欧州中銀)のドラギ総裁が出席を予定しており、秋以降の金融政策についてのヒントが示されるのか否かが注目点となります。
イエレン議長の講演は8/25(金)午前8時(日本時間午後11時)と伝えられています。9月に資産縮小開始を決定するとの見方は確実視されていますが、利上げペースについては流動的です。このため、イエレン議長が利上げやインフレ率についてハト派的な内容を示した場合、外為相場が円高に振れる可能性があり、注意が必要です。なお、一部報道ではドラギ総裁が金融政策について触れる可能性は後退しているようです。
北朝鮮情勢については、8/21(月)から8/31(木)まで米韓軍事演習が実施されており、一応の注意が必要であると考えられます。8/25(金)には先軍節(故金正日氏が軍事優先の政治を開始した記念日)、9/9(土)には同国の建国記念日となっており、ミサイル発射実験等の理由になりそうな日程が続いています。
9/1(金)には米国で重要な経済指標の発表が重なっています。特に雇用統計(8月)とISM製造業景況指数(同)の発表が重なるのは珍しく、その日に向けてはポジションを取りにくくなる可能性が大きそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜「ジャクソンホール会議」以降も重要日程が目白押し
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
8/22(火) | ドイツ | 8月ZEW景況感指数 | アナリストは機関投資家など350人にアンケート調査 |
米国 | 6月FHFA住宅価格指数 | 5月は前月比0.4%上昇 | |
8/23(水) | 米国 | 7月新築住宅販売件数 | 6月は前月比0.8%増 |
8/24(木) | 米国 | 7月中古住宅販売件数 | 6月は前月比1.8%減 |
米国 | ジャクソンホール会議(〜8/26) | イエレンFRB議長は現地時間25日に講演? | |
8/25(金) | 日本 | 7月全国消費者物価指数 | 6月(除生鮮食品・エネルギー)は前年同月比+0.0% |
日本 | 8月東京都区部消費者物価指数 | 7月(除生鮮食品・エネルギー)は前年同月比-0.1% | |
北朝鮮 | 先軍節 | 故金正日氏が軍事優先の政治を開始した記念日 | |
ドイツ | 8月IFO景況感指数 | 約7,000社の企業にアンケート | |
米国 | 7月耐久財受注 | 設備投資の先行指標 | |
8/29(火) | 日本 | 7月失業率/有効求人倍率 | 6月失業率は2.8%(94年以来の低水準) |
米国 | 6月S&Pコアロジック住宅価格指数 | ||
米国 | 7月コンファレンスボード消費者信頼感 | ||
8/30(水) | 米国 | 8月ADP雇用統計 | コンセンサスでは前月比17.5万人増 |
米国 | 4〜6月期GDP改定値 | コンセンサスでは前期比+2.7%(年率) | |
8/31(木) | 日本 | 7月鉱工業生産 | |
中国 | 8月製造業PMI | ||
9/1(金) | 日本 | 4〜6月期法人企業統計 | 設備投資動向などに注目 |
米国 | 8月雇用統計 | 非農業部門雇用者数のコンセンサスは前月比18万人増 | |
米国 | 8月ISM製造業景況指数 | 企業マインドを示す最重要指標 | |
米国 | 8月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値) | 消費マインドを示す経済指標 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】波乱が続きそうな日経平均株価、下値メドを探る |
最初の項でご説明したように、日経平均株価に影響を与えるとみられる外為相場については円高・ドル安が続きやすい状態です。また、米国株式市場についても、調整入りが警戒される状態になっています。従って、日経平均株価の先行きについてもまだまだ波乱含みの展開を警戒すべき状態が続きそうです。
テクニカル的にみるとどうでしょうか。図4にもあるように、日経平均株価(日足)・一目均衡表については、(1)日々線がクモを下抜け、(2)転換線が基準線を下抜け、(3)遅行スパンが日々線を下抜け、という3条件が揃い、「3役逆転」の形になっています。さらに、通常に日足チャート(図5)についても、(1)日々線が25日移動平均線を下抜け、(2)25日移動平均線自体が下向きの形、(3)25日移動平均線が75日移動平均線を下回るデッド・クロスが成立するなど、弱い形になっています。
このように、テクニカル的にも、当面は日経平均株価の先行きに注意を要すべき展開が続きそうです。
ただし、ここにきて重要な下値支持ラインが接近してきたことにも留意したいと思います。日経平均株価の25日移動平均線は8/21(月)現在で19,256円となっています。また、日経平均株価の予想EPS(一株利益)は1,412円であり、それに予想PER13.6倍(アベノミクス相場開始直前の2012/11/13時点の予想PER)を掛けた19,203円が下値支持線になると考えられます。また、日経平均株価の年初来高値(終値ベース)は6/20(火)に付けた20,230円であり、そこからちょうど1千円を引いた19,230円も下値支持ラインのひとつになると考えられます。
日経平均株価の売買タイミングを計る騰落レシオは一般的に30%以下になると「売られ過ぎ」と考えられますが、8/21(月)現在は32%まで低下しています。
日本株については好調な景気・企業業績が下支え要因になると考えられます。米国の金利引き上げペースの鈍化がドル安材料になっていますが、デフレ克服の目処が見えない日銀と、緩和的金融政策からの出口戦略を探る米国との間で、金融政策の方向感が異なるという状態に変わりなく、過度な円高・ドル安の懸念は小さいとみられます。株価波乱等で上記した各種下値支持ラインを下回るようなことがあれば、そこが買い場になる可能性もありそうです。
図4:日経平均株価(日足)・一目均衡表
図5:日経平均株価(日足)
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/08/22現在
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