東京株式市場の空気が一変してきました。北朝鮮の核開発に対する不安や、米国南部を襲ったハリケーンの影響等を警戒し、日経平均株価は9/8(金)に一時、19,239円52銭の安値を付けましたが、その後は上昇に転じました。9/9(土)の北朝鮮建国記念日に同国が挑発行動を起こさなかったことや、ハリケーン「イルマ」の米国経済に対する影響が思ったよりも小さくなりそうなことが要因と考えられます。
その後も日経平均株価は徐々に上値を切り上げる展開となり、3連休明けの9/19(火)には一時上昇幅が400円を超え、8/7(月)以来の2万円大台を回復。終値が20,299円38銭となり、年初来高値を更新しました。また、TOPIX(東証株価指数)や日経ジャスダック平均も年初来高値更新となるなど、文字通り「台風一過」のように、環境好転を印象付ける相場となりました。
今後の株式市場について、投資家はどう考えるべきでしょうか。日経平均株価が年初来高値を更新したことで反落を警戒すべきでしょうか。それとも、さらなる上昇が期待できるのでしょうか。
「台風一過」の東京株式市場 |
北朝鮮の核開発に対する不安や、米国南部を襲ったハリケーンの影響等を警戒し、日経平均株価は9/8(金)に一時、19,239円52銭の安値を付けました。「安全資産」とされる米10年国債が買われ、その利回りは9/7(木)に2.04%台まで低下し、それを映してドル・円相場が9/8(金)に1ドル107円31銭の円高・ドル安水準まで円高・ドル安になるなど、日本株にとっては逆風が目立つ投資環境でした。
しかし、9/9(土)の北朝鮮建国記念日に同国が新たな挑発行動を起こさなかったことや、ハリケーン「イルマ」の米国経済に対する影響が思ったよりも小さくなりそうなことが明らかとなり、投資環境は好転しました。日経平均株価は9/11(月)以降上昇に転じ、米10年国債利回りは上昇し、外為市場は円安・ドル高基調に変わりました。日経平均株価は、3連休明けの9/19(火)には一時上昇幅が400円を超え、8/7(月)以来の2万円大台を回復。終値が20,299円38銭となり、年初来高値を更新しました。また、TOPIX(東証株価指数)や日経ジャスダック平均も年初来高値更新となるなど、文字通り「台風一過」のように、環境好転を印象付ける相場となりました。
今後の株式市場について、投資家はどう考えるべきでしょうか。
北朝鮮リスクについては、同国の核開発が一定水準に達したことが明らかになった以上、今後もその脅威がなくなることは想定しにくいというのが現実です。ただ、最終的な武力衝突は関係するどこの国々にも恩恵を与えないことも明らかとみられ、緊張の形は次第に外交上の駆け引きに移っていく可能性が大きいとみられます。
こうした中、米10年国債利回りや外為相場は当面の均衡点を探る展開になりそうです。足元の金利上昇、円安・ドル高については北朝鮮リスクが後退する中での反動という側面が強く、市場の関心は次第に米金融政策の動向に移ってくるものと考えられます。ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)による資産縮小開始と、年内利上げ判断は年末まで先送りされるというメインシナリオには変化がないとみられ、外為相場は基本的にはもみ合いに転じていくと予想されます。
一方、米国市場では税制改革に対する取り組みが前進している模様で、上場企業のEPS(一株利益)は近い将来、減税の分、上昇する可能性が出てきました。米株式市場は基本的には堅調に推移しそうです。
そうした中で、日経平均株価は現在の予想EPS1,416円に予想PER14.7倍(過去2年間の平均)を乗じた20,815円が意識される展開になるものと予想されます。
図1:日経平均株価(日足)〜「台風一過」の東京株式市場
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/09/19現在
図2:ドル・円相場(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/09/19取引時間中
図3:TOPIX(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/09/19現在
当面のタイムスケジュール〜FOMCの結果発表に注目 |
当面の経済指標等の発表でもっとも重要なのは、米国時間の9/20(水)(日本時間では9/21未明)に結果が発表される予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)であると考えられます。
米金融政策の注目点としては、(1)資産縮小(10月からとの見方が有力)の開始が決定されるかどうか、(2)年内に再利上げをできるかどうか、の2点であると考えられます。市場では9/20に(1)は決まるものの、(2)については可能性が小さいとの見方がこれまでのコンセンサスでした。
しかし、(2)について市場の見方に変化が出てきています。金利先物市場からみた(2)の年内利上げ確率は、9/7(木)時点では22.0%でしたが、9/18(月)には50.6%まで上昇しています。市場は年内利上げの可能性は残っていると、再び考え直したことになります。
一方、国内ではにわかに、総選挙が実施される可能性が出てきています。報道等を参考にすると、9/28(木)に召集が予定されている臨時国会の冒頭で解散となり、10/22(日)の総選挙が実施されるというのがメインシナリオになっています。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜FOMCの結果発表に注目
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
9/19(火) | ドイツ | 9月ZEW(欧州経済研究センター)景況感調査 | アナリストや機関投資家約350人にアンケート |
米国 | 8月住宅着工件数 | 7月は前月比4.8%減。熟練工の人手不足が響く | |
9/20(水) | 日本 | 8月貿易収支 | 7月は輸出が前年同月比13.4%増 |
米国 | 8月中古住宅販売件数 | 7月は前月比1.3%減 | |
米国 | FOMC結果発表(日本時間9/21未明) | 資産縮小を決定するか?12月利上げ見通しは? | |
9/21(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合 | |
米国 | 9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ISM製造業景況指数の先行指標的存在 | |
9/24(日) | ドイツ | 連邦議会選挙 | |
9/25(月) | ドイツ | 9月IFO景況感指数 | 約7千社のドイツ企業を対象に景況感をアンケート |
米国 | ダドリーNY連銀総裁講演 | ||
9/26(火) | 日本 | 3月(9月)決算企業の権利付最終日 | 株主優待企業等、翌日からの反動安に注意 |
米国 | 8月新築住宅販売件数 | ||
米国 | 9月コンファレンスボード消費者信頼感指数 | ハリケーンの影響に注意 | |
米国 | イエレンFRB議長が演説 | ||
9/27(水) | 米国 | 8月耐久財受注 | 設備投資の先行指標 |
9/28(木) | 日本 | 臨時国会召集(予定・冒頭に解散?) | 10/22(日)に総選挙との見方が台頭 |
米国 | 4〜6月期GDP確報値 | 改定値は前期比・年率+3.0% | |
9/29(金) | 日本 | 8月全国・9月都区部消費者物価指数 | 7月(全国・生鮮食品除く)は前年同月比+0.5% |
日本 | 8月有効求人倍率/失業率 | 7月の有効求人倍率は1.52倍 | |
日本 | 8月鉱工業生産 | ||
日本 | 日銀金融政策決定会合「おもな意見」(9/21発表分) | ||
日本 | 日経平均採用銘柄入れ替えに伴う大引売買 | ||
米国 | 8月PCEコア・デフレーター | 7月は前年同月比+1.4% | |
9/30(土) | 中国 | 9月製造業PMI |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/26(木)、12/14(木) | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】投資環境の好転を示す「一目均衡表」 |
図4は日経平均株価(日足)の一目均衡表です。9/19(火)に大幅高したことを受けて「3役好転」の形となり、テクニカル的には株式相場が「強気転換」した形になりました。すなわち、
(1)遅行スパンが日々線を下から上に上抜け
(2)転換線が基準線を下から上に上抜け
(3)日々線が「クモ」の上に上抜け
という現象が確認されました。これに素直に従うならば、当面の日経平均株価は堅調な推移が期待できそうです。図3にあるように、TOPIXはすでに一目均衡表上の3役好転が確認された形になっています。また、ドル・円相場も、日々線がクモの上にギリギリ顔を出しつつあります。
東京市場では当面、為替の安定と株価の上昇が同時並行で進む展開が期待できそうです。
図4:日経平均株価(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/09/19現在
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