9月第2週(9/10〜9/14)の日経平均株価は反発に転じ、9/14(金)の終値は23,094円67銭と、2/2(金)以来の高値水準を回復し、前週末比3.5%の上昇となりました。こうした中、日本時間9/18(火)朝に、米トランプ大統領が中国から米国への輸入2,000億ドル分について10%の課税を開始(9/24)すると発表しました。この日の東京市場では、次第に買い優勢となり、終値は前日比325円87銭高の23,420円54銭となりました。
日経平均株価はこれまで、23,000円前後の壁で跳ね返され、ボックス相場での展開を余儀なくされてきた形ですが、「上放れ」の形になった模様です。その理由はどこに求められるのでしょうか。日経平均株価は素直に、年初来高値である24,124円15銭をトライすると考えてよいのでしょうか。
日経平均株価(図1)は8/31(金)〜9/7(金)に、6営業日続落となりました。世界的に貿易摩擦問題が改めて深刻視される中、米トランプ大統領が貿易赤字削減交渉について次の対象に日本を考えていると報じられたことも不安視されました。台風と地震に相次ぎ襲われ、観光資源や生産インフラ等に影響が広がったことで、様子を見極めたいとする投資家も増えたように思われます。日経平均株価は9/7(金)に22,172円90銭まで下落する場面がありました。
しかし、9月第2週(9/10〜9/14)の日経平均株価は反発に転じ、9/14(金)の終値は23,094円67銭と、2/2(金)以来の高値水準を回復し、前週末比3.5%の上昇となりました。
9/7(金)に発表された米雇用統計(8月)で時間当たり賃金が予想以上に伸び、米国の利上げが継続されるとの見方から円安・ドル高が進み、それを好感した9/10(月)の日経平均株価は66円03銭高となりました。続く9/11(火)は米半導体株の上昇が追い風となり、同平均株価は291円60銭高となりました。その後、9/12(水)は小反落となりましたが、9/13(木)は米通商協議への期待から216円71銭高、9/14(金)については、トルコの想定以上の利上げで新興国通貨への不安が後退し273円35銭高と、日経平均株価の上昇が続きました。
こうした中、米国時間の9/17(月)夕刻、日本時間では9/18(火)朝に、米トランプ大統領が中国から米国への輸入2,000億ドル分について10%の課税を開始(9/24)すると発表しました。また、米中貿易交渉に進展がなければ2019年以降、税率を25%に引き上げる計画を発表しました。これを受けた9/18(火)の東京市場では、日経平均株価がもみ合う場面もみられましたが、次第に買い優勢となり、終値は前日比325円87銭高の23,420円54銭となりました。
図1 日経平均株価は23,000円の壁を突破し、上放れの様相
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/9/18現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/9/17現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/9/18取引時間中
9/19(水)に日本政府観光局から、訪日外客数(8月)が発表される予定です。7月は283万2千人で前年同月比5.6%増という数字でした。2018年1〜7月の累計が約1,873万人で前年同期比13.9%だったことを考えると低い伸び率にとどまりました。大阪府北部地震(6/18)や西日本豪雨(6/28〜7/8)の影響が表面化したと考えられます。
8月は回復する可能性がありそうですが、9月には台風21号の上陸、北海道胆振東部地震と災害が相次ぎ、再び外客数が伸び悩む可能性が大きそうです。また、訪日外客数の伸び悩みにとどまらず、小売・外食の売上高低迷につながりそうで、いわゆる、インバウンド関連需要には試練となりそうです。
ただ、復興の動きはすでに本格化しており、中期的には訪日外客数も回復するのではないでしょうか。災害で落ち込んだ期間の数字は早速、織り込まれる可能性がありそうです。
なお、9/20(木)には自民党総裁選挙の投開票が予定されています。これが終ると、9/21(金)には日米貿易協議(FFR)が開催され、焦点は日米貿易問題に移ると予想されます。
表1:9月権利確定銘柄は9/25(火)が権利付最終日
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
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9/18(火) | 米国 | 9月NAHB住宅市場指数 | 全米住宅建設業者協会が今後6ヵ月の住宅販売予測をアンケート |
米国 | ★決算発表 | レナー(米国最大の住宅建設会社) | |
9/19(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表(黒田総裁会見) | |
日本 | 8月訪日外客数 | 7月は前年同月比5.6%増。6月は同15.3%増 | |
米国 | 8月住宅着工件数 | ||
9/20(木) | 日本 | 自民党総裁選挙投開票 | 市場の注目は日米通商協議に移る可能性も |
日本 | 東京ゲームショウ2018(〜23日) | ||
米国 | 9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | 市場コンセンサスは17.5 | |
米国 | 8月中古住宅販売件数(年換算) | 市場コンセンサスは年換算で536万戸(7月は同534万戸) | |
米国 | ★決算発表 | マイクロンテクノロジー(半導体業界の今後を示唆か) | |
9/21(金) | 日本 | 8月全国消費者物価指数(生鮮食品を除く) | 7月は前年同月比0.8%上昇 |
9/24(月) | - | 多くの市場が休場 | 東京は秋分の日の振替休日。中華圏は中秋節 |
ドイツ | 9月Ifo景況感指数 | 約7千社のドイツ企業にアンケート調査 | |
9/25(火) | - | 日米首脳会議(?) | 国連総会にて |
日本 | 9月権利確定銘柄の権利付最終日 | ||
日本 | 日銀金融政策決定会合(7/31発表分)議事要旨 | ||
米国 | 7月FHFA住宅価格指数 | 市場コンセンサスは前月比0.2%上昇 | |
米国 | 9月CB消費者信頼感指数 | ||
9/26(水) | 米国 | FOMC結果発表/パウエルFRB議長会見 | 政策金利の0.25%引き上げがほぼ確実視されている |
米国 | 8月新築住宅販売件数 | 市場コンセンサスは前月比0.9%増 | |
9/27(木) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
米国 | 8月耐久財受注(輸送用機器を除く) | 市場コンセンサスは前月比0.4%増 | |
米国 | 8月中古住宅販売仮契約 | 市場コンセンサスは前月比0.2%減 | |
9/28(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(9/19発表分)「主な意見」 | |
日本 | 8月労働力調査・有効求人倍率 | 7月は失業率2.5%、有効求人倍率1.63倍 | |
日本 | 8月鉱工業生産 | 7月は前月比0.1%減 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/25(木)、12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
すでにご説明したように、米国時間の9/17(月)夕刻、日本時間では9/18(火)朝に、米トランプ大統領が中国から米国への輸入2,000億ドル分について10%の課税を開始(9/24)すると発表しました。また、米中貿易交渉に進展がなければ2019年以降、税率を25%に引き上げる計画を発表しました。これを受けた9/18(火)の東京市場では、日経平均株価の終値が前日比325円87銭高の23,420円54銭となりました。終値ベースとしては2/1(木)以来の水準を回復したことになります。
日経平均株価はこれまで、23,000円前後の壁で跳ね返され、ボックス相場での展開を余儀なくされてきた形ですが、「上放れ」の形になった模様です。当面は、年初来高値24,124円15銭の回復を視野に入れた動きになりそうです。
ちなみに、米国による中国からの輸入に対する関税賦課の動きを改めて整理すると
- (1)輸入340億ドル分へ税率25%の関税賦課・・・7/6(金)開始
- (2)輸入160億ドル分へ税率25%の関税賦課・・・8/23(木)開始
- (3)輸入2,000億ドル分への税率10%の関税賦課・・・9/24(月)開始
となり、(1)と(2)においては関税賦課開始以降、日経平均株価は「悪材料出尽くし」から上昇しています。今回もこれに準じた形になり、日経平均株価は大幅高したと考えられます。やや楽観的な考え方ではありますが、これで年内は10%を超える新たな関税賦課(米国から中国)はないと考えることができ、株式市場で買い安心感が広がった可能性があります。
そもそも、米国による中国への執拗な揺さ振りは、「中国製造2025」により、中国が産業面で世界のナンバーワンになることを阻止しようとする覇権争いの面が強いことはよく指摘されていることです。米国は産業、通貨、国防の面で他国が覇権を握ることを認めてこなかったとされます。日本の株式市場の長期的展望も、そうした大きな流れの中で吟味していく必要がありそうです。
日経平均株価の過去1年の予想PERの平均は13.86倍でした。それとの比較においても、予想PER13倍台前半の現在は、市場心理が「弱気」に傾き過ぎていると思われます。また、世界的貿易摩擦等が日経平均株価の予想EPSの上方修正を抑制している面もありそうです。仮に予想EPSの増益が展望でき、市場心理が少なくとも「中立」程度に戻ってきた場合、1年後程度をメドに、日経平均株価の25,000円台を視野に入れることは十分可能になるとみられます。
反面、そこに至る過程では、トランプ大統領の政策の「痛み」の部分をさらに織り込む必要もあるかもしれません。株価の振幅は拡大する可能性が大きそうです。
図4:日経平均株価の1年後を占う?
1年後に、日経平均の予想EPS(一株利益)が、-10%、-5%、±0%、+5%、+10%増え、予想PERが12.0倍、13.0倍、14.0倍、15.0倍、16.0倍になったと仮定し、日経平均株価がいくらと計算されるかを示したもの。現実には増益率や予想PERがこれ以外の数字になる場合もあります。なお、過去1年間の予想PERの平均は13.86倍です。