2019年の東京株式市場は「大発会」こそ波乱になったものの、その後はリバウンド局面となっているようです。世界経済の変動を勘案し、金融政策の判断について、米FRB(米連邦準備制度理事会)が柔軟姿勢を示したことが好感されているようです。また、米中通商協議についても、最近は妥協を期待する声が増えているようです。
ただ、日経平均株価の予想EPSに象徴される「企業業績」はピークアウトの様相を呈しています。予想EPSの上昇が止まると、株価上昇も止まる傾向があります。今後、決算発表が本格化する中で、予想EPSの変動には注意したい所です。
2019年の東京株式市場は波乱のスタートになりました。日本が年末年始休暇となっている間(12/28〜1/3)の米国株式市場でNYダウが計452.81ドル安となり、それを受けた1/4(金)の日経平均株価は大納会終値比で452円81銭安となりました。
しかし、NYダウが1/4(金)に746.94ドル高となった後も1/10(木)まで5営業日続伸し、累計で1,315.70ドル高上昇。それを好感した1/7(月)以降の日経平均株価も総じて反発局面となりました。結局、1月第2週(1/7〜1/11)の日経平均株価は6週間ぶりの上昇(1/4も週足上では1週間としてカウントされています)となり、前週末比797円74銭(4.1%)高となりました。なお、日経平均株価の日次の動きは以下の通りです。
- 1/7(月)477円01銭高・・・1/4(金)のNYダウ上昇(+746.94ドル)を好感。FRBが「ハト派的」と評価。
- 1/8(火)165円07銭高・・・米中協議進展に期待した1/7(月)のNYダウ上昇に加え、円安・ドル高を好感。
- 1/9(水)223円02銭高・・・米トランプ大統領が米中協議の順調な進展を示唆し、1/8(火)のNYダウが大幅高(+256.10ドル)。
- 1/10(木)263円26銭安・・・米国株は続伸したものの、同国の利上げ観測後退で円高・ドル安が進んだことを警戒。
- 1/11(金)195円90銭高・・・NYダウ続伸と円安の流れを好感。決算悪の安川電、ファーストリテイが上昇し、意外感も手伝う。
なお、NYダウは利益確定売りから1/11(金)に反落し、1/14(月)も中国の貿易不振を嫌気して続落しましたが、それを受けた1/15(火)の日経平均株価は前週末比195円59銭高と続伸となりました。
図1:リバウンド局面が続いている日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/1/15取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/1/14現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/1/15取引時間中
当面は、英国によるEU(欧州連合)からの離脱問題が市場で注目されそうです。英国がEU(欧州連合)と合意した「英国によるEUからの離脱案」が英国時間1/15(火)に採決の日程ですが、事前の段階では野党のみならず、与党の多くも反対しており、否決されることがコンセンサスになっている(日本時間1/15現在)ようです。
英国の判断を最初に織り込む株式市場が、本格的には東京になる可能性も残りますので、一応の注意は必要です。短期的にはポンド下落等外為市場で影響が出る可能性がありそうですが、米国、日本などの株式市場への影響は限定的にとどまる可能性が大きいように思われます。また、仮に法案が否決された場合、メイ首相が代替案を出す等の展開も考えられ、波乱回避に向けた英国の努力は続くと考えられます。
ただ、この問題が長期化した場合、すでに一部でリセッション入りの瀬戸際にあるとされる欧州経済に打撃となる可能性があります。世界経済のピークアウト感がますます強まる可能性が大きそうです。
表1:当面の主要タイムスケジュール〜米政府機関閉鎖に伴う日程変更に注意
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
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1/15(火) | 日本 | 12月工作機械受注 | 11月は前年同月比17%減 |
米国 | ☆決算発表 | JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ | |
英国 | 議会がEU離脱協定案を採決(予定) | ||
1/16(水) | 日本 | 11月コア機械受注 | 10月は前月比7.6%増 |
米国 | 12月小売売上高 | 米個人消費のトレンドを占う | |
米国 | ☆決算発表 | バンカメ、GS他 | |
1/17(木) | 米国 | 12月住宅着工件数 | 市場コンセンサスは前月比横ばい |
米国 | 1月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | 製造企業のマインドを示す | |
米国 | ☆決算発表 | アメックス、モルガン・スタンレー、ネットフリックス | |
1/18(金) | 米国 | 12月鉱工業生産・設備稼働率 | |
1/19(土) | 米国 | ミシガン大学消費マインド指数 | |
1/21(月) | 中国 | 12月小売売上高 | 市場コンセンサス(前年同月比)は8.2%増 |
中国 | 12月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(前年同月比)は5.3%増 | |
中国 | 12月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサス(年初来・前年同月比)は6.0%増 | |
中国 | 10〜12月期GDP | 市場コンセンサス(前年同期比)は6.4%増 | |
英国 | EU離脱代替案の判断期限 | ||
日本 | 日ロ首脳会談が行われる可能性 | ||
米国 | 休場 | キング牧師の誕生日 | |
1/22(火) | - | 世界経済フォーラム(ダボス会議) | |
独 | 1月ZEW景況感指数 | 350人のアナリスト等市場関係者に景況感をアンケート | |
米国 | 12月中古住宅販売件数 | ||
米国 | ☆決算発表 | J&J、IBM他 | |
1/23(水) | 日本 | 日銀金融経済対策決定会合の結果発表/展望レポート | |
米国 | 11月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | フォード、P&G、フォード・モーター | |
1/24(木) | 欧州 | ECB(欧州中銀)定例理事会 | |
米国 | ☆決算発表 | インテル、スターバックス、STマイクロ | |
1/25(金) | ドイツ | 1月Ifo景況感指数 | 約7千のドイツ企業を対象に景況感をアンケート |
米国 | 12月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
米国 | 12月新築住宅販売件数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
図4は日経平均株価と予想EPSの動きを1枚のグラフにしたものです。「アベノミクス相場」で株価の上昇をもたらしてきたのは、基本的には、企業業績の拡大とそれによる予想EPS(一株利益)の拡大であると考えられます。過去数年間で大きく膨らんだ予想EPSが株価上昇の理由付けになったと表現することもできます。
逆に、予想EPSが増えない時、株価上昇を期待することは難しいと言えそうです。下の図4でも、予想EPSの伸びが止まった2015年頃から2017年初頭くらいまで、日経平均株価は総じて「横ばい」になっていると見受けられます。現在、日経平均株価はリバウンド局面を迎えているように思われます。足元は悪材料が出ても逆に上昇するなど、地合いの好転がみられるので、もう少しの間堅調な相場が続く可能性もありそうです。
しかし、日経平均株価の予想EPSピークアウトにより今後、予想EPSが低下する可能性は十分ありそうです。今後、決算発表企業が増えてくる季節となり、予想EPSが大きめに動く可能性があり、それに日経平均株価が反応するケースも想定されますので、十分注意が必要です。
図4:日経平均株価(月足)と予想PER
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。