日経平均株価は2月第3週(2/12〜2/15)、前週末比567円46銭(2.8%)高、2/18(月)は381円22銭(1.8%)高、2/19(火)は20円80銭高となり、再び21,000円を回復しました。米与野党が国境の壁を巡る予算協議で当面の妥協案に合意し、米政府機関再閉鎖の可能性が後退したことが大きな要因です。また、米中通商協議で妥協が成立する可能性も大きくなっています。
当面はやはり、米中協議の行方が最大の注目点になると考えられます。米中の覇権問題がどのような形で着地するかにより、世界の企業のサプライチェーンのあり方も大きく変わってくるとみられるためです。その意味で2/21(木)から米国の首都ワシントンで開催される米中閣僚級会議からは目が離せません。
こうした中、鉄鋼・アルミ関税が賦課され、貿易問題が市場に覆いかぶさり始めた2018年春から間もなく約1年となります。過去1年の日経平均株価の予想PERは平均で12.8倍と計算されます。現在の日経平均株価の予想EPS1,740円を掛け合わせた場合の22,272円が上値余地を探る時の参考になるかもしれません。
日経平均株価は2月第2週(2/4〜2/8)に455円22銭(2.2%)安となった後、2月第3週(2/12〜2/15)は567円46銭(2.8%)高、2/18(月)は381円22銭(1.8%)高、2/19(火)は20円80銭高となり、再び21,000円を回復しました。米与野党が国境の壁を巡る予算協議で当面の妥協案に合意し、米政府機関再閉鎖の可能性が後退したことが大きな要因です。この間の日次の動きは以下の通りです。
- 2/12(火)531円04銭高・・・国境の壁建設を巡る予算協議で米与野党の「合意」が伝えられました。
- 2/13(水)280円27銭高・・・米株高もあり、買いが先行して2万1千円回復となり「一目均衡表」のクモを超えてきました。
- 2/14(木)4円77銭安・・・商品投資顧問(CTA)やヘッジファンドの買い戻しが一巡し、利益確定売りが増えてきました。
- 2/15(金)239円08銭安・・米小売売上高の減速や、トランプ大統領による「非常事態宣言」発令が懸念されました。
- 2/18(月)381円22銭高・・米中通商協議が場所を米国に替えて開催されると報道され、同協議の前進が期待されました。
- 2/19(火)20円80銭高・・・前日の米国株式市場が休場だったこともあり、様子見気分が強まりました。
米国では、トランプ大統領が国境の壁の建設を巡り、民主党といったんは妥協した形ですが、本格的な予算を獲得すべく、「非常事態宣言」を発表しました。戦争やテロ、大規模な自然災害等への対応以外で、「非常事態宣言」が出されるのは相当に異例との見方が多いようですが、株式市場は政府機関再閉鎖が回避されることを歓迎したようです。
米中通商協議については、3/1(金)までにまとまらなければ、米国が中国からの輸入2,000億ドルに対する関税を、これまでの10%から25%に引き上げるはこびとなっています。2月はこれまで両国の間で、次官級協議、閣僚級協議が開催されてきましたが、今週以降も話し合いが継続されるとされてきました。2/19(火)の報道によると、2/21(木)・2/22(金)にワシントンで、米中閣僚級会議が開催される見込みとなっています。
図1 再び21,000円台を回復してきた日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/2/19現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/2/15現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/2/19取引時間中
当面の最大の注目点はやはり、米中貿易協議の行方になると考えられます。米中の覇権問題がどのような形で着地するかにより、世界の企業のサプライチェーンのあり方も大きく変わってくるとみられるためです。その意味で2/21(木)から米国の首都ワシントンで開催される米中閣僚級会議からは目が離せません。
なお、現在株価が落ち着きを取り戻している背景として、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に対するスタンスの変化を忘れることはできません。FRBは当面、世界経済の大きな変動も心配される中、柔軟な金融政策を指向し、政策金利の引き上げを停止し、状況にっては資産縮小も停止してくる可能性があると考えられます。ただ、投資家としては、そうしたFRBに対する見方が正しいのか否か、FOMC議事録の発表(2/20)や、パウエル議長の議会証言(2/26・2/27)で確認していくことになりそうです。
表1 主要政治日程に注目
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
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2/19(火) |
ドイツ |
2月ZEW景況感指数 |
350人のアナリストなど市場参加者に景況感をアンケート |
米国 |
2月NAHB住宅市場指数 |
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2/20(水) |
日本 |
1月貿易収支 |
12月の輸出は前年同月比3.9%減 |
日本 |
1月訪日外客数 |
2018年は3,119万人(前年比8.7%増)、12月は前年同月比4.4%増 |
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米国 |
FOMC議事録(1/30発表分) |
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2/21(木) |
米国 |
2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
米国の企業マインドを計る |
米国 |
12月耐久財受注 |
米設備投資の先行指標 |
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米国 |
1月中古住宅販売件数 |
市場コンセンサスは前月比0.2%増 |
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米国・中国 |
米中閣僚級通商会議 |
ワシントンにて(〜22日) |
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2/22(金) |
日本 |
1月消費者物価指数 |
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ドイツ |
2月Ifo景況感指数 |
約7千社の企業に景況感をアンケート |
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2/24(日) |
日本 |
天皇陛下在位30年記念式典 |
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日本 |
普天間基地移設工事の是非を問う沖縄県民投票 |
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米国 |
アカデミー賞授賞式 |
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2/25(月) |
- |
携帯電話見本市(バルセロナ) |
〜2/28(木) |
2/26(火) |
米国 |
12月FHFA住宅価格指数 |
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米国 |
12月S&PコアロジックCS住宅価格指数 |
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米国 |
パウエル議長議会証言(上院銀行委員会) |
資産縮小の停止等に対する方向感は? |
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2/27(水) |
米国 |
米朝首脳会談 |
ハノイにて(〜28日) |
英国 |
議会でEU離脱案採決 |
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米国 |
パウエル議長議会証言(下院金融サービス委員会) |
資産縮小の停止等に対する方向感は? |
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2/28(木) |
日本 |
1月鉱工業生産 |
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中国 |
2月製造業PMI |
12月は49.4、1月は49.5と2ヵ月連続で50を下回っている |
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米国 |
10〜12月GDP(前期比・年率) |
前回は3.4%、今回の市場コンセンサスは2.6% |
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3/1(金) |
日本 |
1月労働力調査・有効求人倍率 |
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米国 |
米中貿易協議の「期限」が到来 |
まとまらなければ2,000億ドルの輸入品の関税を10%から25%に |
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米国 |
2月ISM製造業景況指数 |
米国の企業マインドの強弱は |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 3/15(金)、4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/7(木)、4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
たびたびご説明している通り、「株価」は「一株利益」と「PER」の掛け算として表現されます。「株価」を「一株利益」で割ったものが「PER」と定義されますので、この式を組み替えると考えれば、理解が早まるかもしれません。同様に「日経平均株価」はやはり、その「(予想)一株利益」と「(予想)PER」の掛け算として表現されます。
図4は、日経平均株価(日足)と予想PER12.0倍、13.5倍、15.0倍相当ラインを示したものです。例えば、日経平均株価のその時々の予想EPS(一株利益)に15.0倍を掛けた線を紫線で示しています。2/18(月)現在、日経平均株価の予想EPSは1,740円ですが、予想PER12.0倍、13.5倍、15.0倍相当ラインは以下のように計算されます。
- (1)1,740×15.0倍=26,100円・・・・日経平均株価の予想PERが15.0倍で評価される時の「妥当株価」(紫線の右端)
- (2)1,740×13.5倍=23,490円・・・・日経平均株価の予想PERが13.5倍で評価される時の「妥当株価」(緑線の右端)
- (3)1,740×12.0倍=20,880円・・・・日経平均株価の予想PERが12.0倍で評価される時の「妥当株価」(茶線の右端)
ちなみに、2/18(月)の日経平均株価終値は21,281円85銭で、予想PERは12.2倍でしたから、日経平均株価を示す黒い線は茶線の少し上に位置することになります。
日経平均株価の予想PERについて、妥当な水準がわかれば、日経平均株価そのものの妥当水準も想定できることになります。しかし、妥当な予想PERを計算することは難しいのが現実です。一般的に、市場参加者の投資マインドが強ければPERは上昇しやすく、弱ければ下落しやすいと言えそうです。
米国のトランプ大統領が鉄鋼・アルミ関税を打ち出した2018年春以前、日経平均株価は予想PER13.5倍(緑線)より上で推移するケースが多かったのですが、2018年春以降は緑の線の下で推移する傾向が強まっています。トランプ政権の通商問題に対する姿勢の変化が市場マインドを冷やし、日経平均株価の予想PERは低下したと考えられます。
2018年春から間もなく約1年となります。過去1年の日経平均株価の予想PERは平均で12.8倍と計算されます。上記の予想EPS1,740円を基準に考え、これが向こう3ヵ月程度大きく変化しないと考えれば
1,740円×12.8倍=22,272円
であり、ひとつの目安になりそうです。なお、日経平均株価が緑線を超えるシナリオとなれば、
1,740円×13.5倍=23,490円
というラインを超えてくるというシナリオを描くことが可能になりますが、これが実現するには米中交渉で大きな前進が得られることが必要と考えられます。ただ、米中交渉は両国の知財問題や安全保障も含めた覇権問題であり、短期的には実現困難とみられます。
図4 日経平均株価(日足)と予想PER12.0倍、13.5倍、15.0倍相当ライン
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/2/18現在