日経平均株価は週足ベースでみると、7月第2週に続き第3週も続落となりました。米国の金融緩和姿勢強化で円高・ドル安基調となり、それが日本の景気・企業業績について不透明感を強めました。
今後も当面、日経平均株価は上にも下にも動きにくい展開が続くと予想されます。米国の金融緩和姿勢は同国のみならず、世界的に株価の安定をもたらすと予想されます。反面、円高・ドル安圧力も継続しやすく、好材料と悪材料が相殺し合う展開が予想されます
ただ、こうしたもみ合い相場の先には往々にして「大変動」が控えているものです。現在の相場は「嵐の前の静けさ」に過ぎないのかもしれません。
日経平均株価(図1)は週足ベースでみた場合、6月第1週から7月第1週(7/1〜7/5)まで5週連続の上昇となりました。FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利の引き下げに前向きな姿勢を取り始めたことや、米中通商問題で関税の追加が先送りされたこと等が追い風になりました。しかし、7月第2週(7/8〜7/12)および第3週(7/16〜7/19)は続落となりました。米国の金融緩和姿勢強化で円高・ドル安基調となり、それが日本の景気・企業業績について不透明感を強めました。
ちなみに、7/15(月)〜7/23(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。なお、7/15(月)の東京株式市場は「海の日」で休場でした。
- 7/16(火)150円65銭安・・・7/16(火)150円65銭安・・・1ドル107円台後半まで円高・ドル安が進み、それが警戒されました。
- 7/17(水)66円07銭安・・・米トランプ大統領が中国と合意できるまでは時間を要すと発言し、それが警戒されました。
- 7/18(木)422円94銭安・・・短期筋の売りがヘッジやロスカットを目的とした売りを誘発し、下げが加速したとみられます。
- 7/19(金)420円75銭高・・・半導体製造受託最大手TSMCが明るい見通しを示唆し、半導体関連中心に買い戻されました。
- 7/22(月)50円20銭安・・・米国・アジアの株安が警戒されたことに加え、決算発表接近で様子見気分が強まりました。
- 7/23(火)204円09銭高・・・米国の半導体株高やファーウェイへの販売規制緩和の可能性が追い風になりました。
なお、7/16(火)より、日本の株式市場の受渡しルールが変更されました。これまでは、株式を売買した場合、約定日の3営業日後に受渡しが行われるルールでしたが、この日以降は「約定日の2営業日後」に変更となりました。
7/18(木)の急落については、ヘッジファンド等短期筋の売りがヘッジやロスカットを目的とした売りを誘発し、株価の動きを加速させたと考えられます。この日25日移動平均線を下回って取引開始になったことや、一目均衡表の転換線・基準線、クモの上限(先行スパン)等を下回ったこと等、テクニカル指標で重要な節目が重なっており、それらを下回ったことで、動きが速くなった面があると考えられます。
図1 日経平均株価は3連休前のもみ合い水準を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/7/23取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/7/22現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/7/23取引時間中
市場の関心は当面、内外で本格化している上場企業の決算発表に集まりそうです。表1にもありますように、7/24(水)頃から、日米主要企業の決算発表が目立ってきます。決算数字そのものも重要ですが、企業の経営トップが景気の先行きに対し、どのような認識を示してくるのかも注目されます。
なお、決算発表社数ベースでみると417社が発表を予定している7/31(水)が前半のヤマ場になりそうです。後半のヤマ場は「お盆休み」直前となる8/9(金)で、699社の上場企業が発表を予定しています。なお、時価総額上位企業では、トヨタ(7203)が8/2(金)、ソフトバンクG(9984)が8/7(水)に発表を予定しています。「質」の面では、これらの日程も決算発表の佳境といえそうです。
表1 今後約2週間の重要スケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
7/23(火) | 日本 | 6月全国百貨店売上高 | 5月は前年同月比0.8%減 |
日本 | ★決算発表(11社) | 東京製鐵他 | |
米国 | 5月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | 米6月中古住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は0.2%増 | |
7/24(水) | 日本 | ★決算発表(29社) | 信越化、日本電産、アドバンテスト、キヤノン他 |
米国 | 6月新築住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は4.6%増 | |
米国 | ☆決算発表 | ボーイング、キャタピラー、FB、フォード他 | |
7/25(木) | 日本 | ★決算発表(55社) | 日立建、富士通、日産他 |
欧州 | ECB定例理事会 | ドラギ総裁会見 | |
ドイツ | 7月Ifo景況感指数 | 約7,000社のドイツ企業の景況感をアンケート | |
米国 | 6月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
米国 | ☆決算発表 | アルファベット、インテル、アマゾン他 | |
7/26(金) | 日本 | ★決算発表(104社) | 東京エレク、NTTドコモ、キーエンス他 |
米国 | 4〜6月期GDP(前期比・年率) | 前回は3.1%増。市場コンセンサスは1.8%増 | |
米国 | ☆決算発表 | マクドナルド、ツイッター | |
7/29(月) | 日本 | 7月権利確定銘柄の権利付最終日(7月実質最終商い) | |
日本 | ★決算発表(73社) | コマツ、ファナック、日立、オリックス、塩野義他 | |
7/30(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表(黒田総裁会見) | 併せて「展望レポート」も発表 |
日本 | 6月失業率・有効求人倍率 | ||
日本 | 6月鉱工業生産 | ||
日本 | ★決算発表(195社) | 三菱電、アンリツ、ソニー、任天堂、三菱ケミHD、味の素他 | |
米国 | 5月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | ||
米国 | 6月中古住宅販売仮契約 | ||
米国 | 7月CB消費者信頼感指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | AMD、エレクトロニック・アーツ、アップル他 | |
7/31(水) | 日本 | ★決算発表(417社) | 花王、武田、NEC、パナソニック、TDK、村田製、三菱UFJ他 |
中国 | 7月製造業PMI | 中国企業のマインドは? | |
米国 | ☆決算発表 | GE、クアルコム他 | |
米国 | 7月ADP雇用統計 | 雇用者数の市場コンセンサスは14.8万人増 | |
米国 | FOMC結果発表(パウエル議長記者会見) | 0.25%の利下げがメインシナリオ? | |
8/1(木) | 日本 | ★決算発表(124社) | アサヒ、協和キリン、小野薬、日本製鉄、ローム他 |
米国 | 7月ISM製造業景況指数 | 6月51.7から7月は52.5(市場コンセンサス)に? | |
8/2(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(〜6/20)議事要旨 | |
日本 | ★決算発表(208社) | トヨタ、ホンダ、ヤフー、住友商、三井不他 | |
米国 | 7月雇用統計 | 市場コンセンサス(非農業部門雇用者数)は15万人増 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 |
2020年 |
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---|---|---|
日銀金融政策決定会合 |
7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
未定 |
FOMC(米連邦公開市場委員会) |
7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 |
7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
今後も当面、日経平均株価は上にも下にも動きにくいもみ合いの展開が続くと予想されます。米国の金融緩和姿勢は同国のみならず、世界的に株価の安定をもたらすと予想されます。反面、円高・ドル安圧力も継続しやすく、好材料と悪材料が相殺し合う展開が予想されます。
6月以降、株式市場の主要関心事が米国の金融政策になっているため、米国の金融緩和局面がすでにある程度長く続いてきたとの印象を持ちやすいですが、米国の金融緩和局面はここから本格化が予想されます。ドルの先行きを示唆するとされる金先物相場が高値圏でしっかりしていることを考え合わせても、円高・ドル安圧力の継続はある程度長期化が予想されます。
市場では、2019年・年内の政策金利の引き下げについて、0.25%ずつ2〜3回の利下げを織り込んでいると考えられます。すなわち、それ以上の大幅な引き下げ観測につながらない限りドル・円相場も現状水準前後で推移し、株式市場への影響も限定化されそうです。外為相場の織り込みの面でも、株式相場は当面、もみ合いになりやすいと考えられます。
冒頭でご説明したように、日経平均株価は7/18(木)および7/19(金)に乱高下しましたが、受渡ルール変更による特殊要因も影響している可能性があり、その乱高下についてはあまり重要視しなくていいように思われます。日経平均株価は3連休前のもみ合い水準を回復し、今後はその水準で一進一退となる可能性がありそうです。
ただ、参議院選挙が終わったことで、日米通商問題が話題になりやすくなります。現在、静寂を保っている米中通商問題についても、両国の駆け引きが本格化してくる可能性があります。英国で新指導部が成立し、Brexitに対する動きが出てくることも考えられます。日韓対立の先行きも心配な面があります。波乱をもたらす要因は少なくないだけに、薄商いが続く株式市場が急に大きく動き出す可能性に注意が必要です。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/7/23現在