日経平均株価(週足)は7月第1週まで続落となりました。
需給の節目が訪れたことや、新型コロナウイルスの変異株拡大への不安などがマイナス材料になっているようです。ただ、米国株が最高値更新の動きを続けていることもあり、7月第2週の日本株は堅調なスタートとなっています。
では、今後はどうなるのでしょうか。
内外の市場を注意深く見渡すと、世界の株式市場のけん引役である、米国市場に“黒い白鳥”は潜んでいるように見受けられます。
日経平均株価は、7月第1週(7/5〜7/9)終値が27,940円42銭となり、前週末(7/2)比で842円86銭(2.9%)安、週足ベースで続落となりました。
株価指数連動型のETFが決算日を迎えるため、分配金捻出に伴う売り(7/8〜7/9で推定約8千億円)が懸念となった他、新型コロナウイルスの変異株拡大など、悪材料が重なり、7/9(金)の終値は5/17(月)以来、およそ1ヵ月半ぶりに2万8,000円を割りました。
一方、7/12(月)は4日ぶりに大幅反発。米株高が追い風となった他、機械受注統計が市場予想を上回り、株価を押し上げました。
一方、NYダウは、7月第1週(7/5〜7/9)終値が前週末比0.2%高、週足ベースで3週続伸となりました。
7/7(水)はFOMC議事要旨が公開され、テーパリング(量的緩和の縮小)について慎重に進める姿勢が示されたことから、安心感が広がりました。米長期金利はおよそ4ヵ月半ぶりに1.3%を下回る場面があり、マイクロソフトが上場来高値を更新するなど、ハイテクが上昇。ナスダックは4日続伸し、最高値を連日で更新。S&P500は2日ぶりに過去最高値を更新しました。
7/9(金)は主要株価が揃って、過去最高値を更新。利ざや縮小懸念が後退し、金融株が買われ、ダウを押し上げました。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
7/6(火) | 28,643.21 | 45.02 | 反発。原油先物が上昇し、エネルギー関連銘柄が高い。米国市場が休場のため、売買代金は連日で過去最低を更新。 |
7/7(水) | 28,366.95 | -276.26 | 反落。大幅下落した6/21以来およそ2週間ぶりの安値。中国政府による中国企業の海外上場規制強化で、中国企業に出資しているソフトバンクGも売られ、年初来安値。 |
7/8(木) | 28,118.03 | -248.92 | 東京都に4回目の緊急事態宣言が出される見通しで、景気の先行き不透明感など悪材料が重なり、売りが優勢。SOX指数の下落を受け、東エレクなど半導体関連株が安い。 |
7/9(金) | 27,940.42 | -177.61 | 終値で2万8,000円を割ったのは5/17以来、およそ1か月半ぶり。米株安を受けて、海運株など景気敏感株を中心に幅広く売られた。 |
7/12(月) | 28,569.02 | 628.60 | 4日ぶりに大幅反発。米株高を追い風に上昇。機械受注が市場予想を上回ったことも好材料に。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/7/13 取引時間中。
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/7/13時点。
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/7/13時点。
図表5 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | 備考 |
7/14(水) | 日本 | ★決算発表 | サカタタネ、いちご、Sansan、サイゼリヤ |
アメリカ | ベージュブック(米地区連銀経済報告) | ||
6月生産者物価 | |||
パウエルFRB議長議会証言(下院金融委員会) | |||
★決算発表 | ウェルズファーゴ、バンクオブアメリカ、シティグループ | ||
7/15(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(〜16日) | |
5月第三次産業活動指数 | |||
★決算発表 | ウエストHD、マネーフォワ、ファストリ | ||
中国 | 4-6月期GDP | 市場コンセンサスは前年比+8.0% | |
6月小売売上高 | 市場コンセンサスは前年比+10.8% | ||
6月工業生産 | 市場コンセンサスは前年比+7.8% | ||
6月都市部固定資産投資 | |||
アメリカ | 6月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
米独首脳会談(ワシントン) | |||
★決算発表 | TSMC、モルガンスタンレー、ユナイテッドヘルスグループ | ||
7/16(金) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
日銀「経済・物価情勢の展望」(展望レポート) | |||
★決算発表 | R-阪急神 | ||
アメリカ | 6月小売売上高 | ||
7月ミシガン大学消費者マインド | |||
7/19(月) | 日本 | 6月首都圏新規マンション発売 | |
アメリカ | NAHB住宅市場指数 | ||
★決算発表 | IBM | ||
7/20(火) | 日本 | 6月消費者物価 | |
★決算発表〜主要3月決算企業の決算期発表本格化 | ディスコ、R-ユナイテッド | ||
アメリカ | 住宅着工・建設許可件数 | ||
★決算発表 | フィリップモリスインターナショナル、インチュイティブサージカル | ||
7/21(水) | 日本 | 6月貿易統計 | |
日銀金融政策決定会合議事要旨(6/17・18開催分) | |||
★決算発表 | 日本電産、東製鉄、OBC | ||
アメリカ | ★決算発表 | J&J、コカ・コーラ、ベライゾンコミュニケーションズ | |
7/22(木) | 日本 | ◎東京市場は休場(海の日) | |
欧州 | ECB主要政策金利 | ||
アメリカ | シカゴ連銀全米活動指数 | ||
新規失業保険申請件数 | |||
中古住宅販売件数 | |||
★決算発表 | マイクロソフト、AT&T、テスラ、インテル | ||
7/23(金) | 日本 | ◎東京市場は休場(スポーツの日) | |
中国 | 共産党結党100周年 | ||
アメリカ | マークイット米国製造業PMI | ||
★決算発表 | アメリカン・エキスプレス、ニューコア、シュルンベルジェ |
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | 2022年 | |
日銀金融政策決定会合 | 7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) | 未定 |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
図表7は、直近およそ6ヵ月の日本株の動きを示した一目均衡表です。
7/12(月)と7/13(火)に続伸し、ようやく落ち着きを取り戻してきたように見えます。現在、“クモ”の上限(先行スパン2)は28,796円に位置し、上値抵抗ラインになっているようで、7/13(火)の日経平均株価が伸び悩む一因になっています。
一般的に、一目均衡表のクモの上限と下限が交差するタイミングは「要注意日」として警戒されます。
図表7の一目均衡表上でも、クモの交差が頻発していることから、今後しばらくは不安定な状況が続く可能性があります。
図表7 日経平均株価一目均衡表
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成
- 期間は2021/1/19〜2021/7/13(週足)
では、投資家は何に注意をすべきなのでしょうか。
図表8は、米S&P500指数・スキュー指数・VIX指数の推移です。
ちなみに・・・
“スキュー(Skew)指数”とは、米シカゴ・オプション取引所が算出。
オプション市場におけるコール(買う権利)に対するプット(売る権利)の需要の強さを数値化したものです。
この指数が高いほど、株価(S&P500)が大きく下がるリスクが大きいとされます。別名は「ブラックスワン(黒い白鳥)指数」。ブラックスワンが出現した時は想定外の出来事(急落)が起こる可能性があると言われています。
“VIX指数”とは、シカゴ・オプション取引所が算出。この指数が高いほど、株価(S&P500)が大きく動く可能性が高まります。
6/25(金)に米国でスキュー指数が170.55ポイントを付け、過去最高値を更新しました。その後は少し下げたものの、7/12(月)の終値は157.93で、依然として高水準で推移しています。
スキュー指数が高水準とされる150ポイントを上回ったことは、2017年以降3回あります。
何れも高値示現して2〜3ヵ月後に、S&P500指数が10%超下げています。
「天災は忘れた頃にやってくる」という警句が示すように、少し時間(2〜3ヵ月)をおいてから下落する傾向があるようです。
株価が次第に下落を始めると、VIX指数も上昇し始め、株価下落と変動率拡大が悪循環を生みやすくなります。
ちなみに、スキュー指数が高値を付けたおよそ2ヵ月後の8/26(木)〜8/28(土)に「ジャクソンホール会合」が予定されています。また、9月は波乱の起きやすい月とされています。
“ブラックスワン”の出現はやはり、“金融政策の転換”になるのでしょうか。
図表8 S&P500指数・スキュー指数・VIX指数の推移
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※スキュー指数が左軸、VIX指数が右軸。
- 期間:2015/9/25〜2021/7/9(日足)