11月相場が終わりました。
日経平均株価は決算発表シーズンが一巡した11/16(火)に3万円一歩手前の29,960円まで上昇。しかし、下旬には新型コロナウイルスの新たな変異ウイルス「オミクロン株」の発見を警戒し、28,172円まで下げる場面がありました。結局、月末終値は前月末比で下落に終わりました。
今後はどうなるのでしょうか。
今回は“オミクロン・ショック”の先行きを考えます。
日経平均株価の11月第4週(11/22〜11/26)終値は28,751円62銭となりました。前週末(11/19)比で967円00銭(3.3%)安、週足ベースでは反落となりました。
一方、NYダウは11月第4週(11/22〜11/26)終値が前週末比2.0%安、週足ベースで3週続落となりました。
11/22(月)はパウエルFRB議長の再任発表を受けて金融政策をめぐる不安感が後退。一方、銀行の規制強化派とされていたブレイナード氏がFRB議長に選出されなかったことで米10年国債利回りは1.5%台半ばから1.6%台半ばに上昇、高PERのハイテク株を中心に売られて上値の重い展開となりました。
11/24(水)は米10年国債利回りの上昇が一服し、金融株を中心に利益確定売りが優勢となりました。ただ、新規失業保険申請件数が1969年11月以来の低水準となり、相場を下支えしました。
11/25(木)の感謝祭の休場明けとなる11/26(金)は一時1,000ドルを上回って下落し、今年最大の下落率となりました。
南アフリカで新たな変異ウイルス「オミクロン株」が発見され、世界的な経済鈍化懸念から主要3指数とも大幅な下落となりました。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 株式市場の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
11/16(火) | 29,808.12 | 31.32 | 4日続伸。 終値としては2021/9/28以来、およそ1ヵ月半ぶりの高水準。米長期金利の上昇を追い風に保険や自動車株が日経平均を下支えした。 一方、節目の3万円を控え、上値は重い。 米中首脳協議は、無難に終えた。 |
11/17(水) | 29,688.33 | -119.79 | 5日ぶりに反落。 米株高を受けて朝方は買い先行となったが、節目の3万円を目前に利益確定売りに押された。前日までの4営業日で計700円程上昇していたことも影響した模様。 また、およそ4年8ヵ月ぶりに円安・ドル高が進み、原材料等の輸入コストに対する懸念も重荷となった。 |
11/18(木) | 29,598.66 | -89.67 | 小幅に続落。 米株安を受けて、売りが優勢。 一方、政府の経済対策の規模が財政支出ベースで55.7兆円程度となったことが報じられると、市場予想を上回る規模を好感して上昇に転じる場面もあった。 原油など資源価格が下落した影響で石油など素材関連の下げが目立つ。川崎汽船など、海運株も安い。 |
11/19(金) | 29,745.87 | 147.21 | 反発。 米株高やSOX指数の上昇を受けて値がさの半導体関連株が買われた。 東京エレクトロンが1銘柄で日経平均を100円超押し上げた。 岸田首相が政府与党政策懇談会で、新たな経済対策について財政支出が56兆円程度、事業規模が79兆円程度と明らかにした。ただ、事前に伝わっていたため相場の反応は限られた。 また、引き続き、日経平均は節目の3万円に近づくと、利益確定売りも出て上値は重い。 |
11/22(月) | 29,774.11 | 28.24 | 小幅続伸。 欧州を中心とした新型コロナウイルスの感染再拡大で世界経済の先行きに慎重な見方が広がる中、塩野義やアステラスなど医薬品株の上昇が相場の押し上げた。景気変動の影響を相対的に受けにくいという位置づけから買いが入った模様。 一方、東京市場は明日が休場のため、様子見姿勢で上値は重い。 |
11/23(火) | - | - | 休場(勤労感謝の日) |
11/24(水) | 29,302.66 | -471.45 | 3日ぶりに反落。 FRBのパウエル議長再任の発表をきっかけに量的金融緩和の縮小が順調に進展するとの見方から、米長期金利が上昇。米長期金利の上昇を嫌気して、高PER株への売りが強まった。 一方、米長期金利の上昇をきっかけに金融関連株が買われた他、外国為替市場での円安・ドル高を受けて自動車株が買われて相場を下支えした。 |
11/25(木) | 29,499.28 | 196.62 | 反発。 前日に500円近く下落したため、主力銘柄に自律反発狙いの買いが広がった。 ただ、この日は米国が休場となるため、次第に様子見姿勢が強まり、上値は重かった。 |
11/26(金) | 28,751.62 | -747.66 | 大幅に反落。 TOPIX全33業種が下落し、およそ1ヵ月ぶりの安値で終えた。 下げ幅は6/21以来およそ5ヵ月ぶりで、一時900円近く下げる場面もあった。 南アフリカで新たな変異ウイルスが発見され、経済正常化の動きが後退するとの懸念などから幅広く売られた。 |
11/29(月) | 28,283.92 | -467.70 | 大幅に続落。 新型変異ウイルスへの警戒が続き、下げ幅は一時560円を超える場面もあった。 岸田首相が感染防止策として、外国人の入国を原則停止すると発表し、売り圧力が強まった。 コロナ禍において株価が堅調だった銘柄に物色が向かい、エムスリーや任天堂は逆行高となった。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価(日足)
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/11/30 10:00時点(日足)
図表3 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/11/30 10:00時点(日足)
図表4 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/11/30 10:00時点(日足)
図表5 主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
12/1(水) | 日本 | 7-9月期法人企業統計 | |
米ファイザー製ワクチン3回目の追加接種開始 | |||
中国 | 11月Caixin製造業PMI | ||
米国 | 11月ADP雇用統計 | ||
11月ISM製造業景況指数 | |||
米地区連銀経済報告(ベージュブック) | |||
★決算発表 | クラウドストライク・ホールディングス、シースリーエーアイ、オクタ | ||
12/2(木) | 日本 | 11月マネタリーベース | |
11月消費動向調査 | |||
米国 | OPECプラス会合 | ||
新規失業保険申請件数 | |||
★決算発表 | ドキュサイン、ダラー・ゼネラル、クローガー、アルタ・ビューティ | ||
12/3(金) | 米国 | 11月雇用統計 | 市場コンセンサスは55万人増 |
11月ISM非製造業景況指数 | |||
10月製造業受注 | |||
12/6(月) | 日本 | 臨時国会召集(〜17日)で調整 | |
12/7(火) | 日本 | 10月景気動向指数 | |
中国 | 11月貿易統計 | ||
米国 | 10月貿易収支 | ||
10月消費者信用残高 | |||
★決算発表 | オートゾーン | ||
12/8(水) | 日本 | 7-9月期GDP(確報値) | |
11月景気ウォッチャー調査 | |||
米国 | 10月JOLT求人件数 | ||
12/9(木) | 日本 | 10-12月期法人企業景気予測調査 | |
11月マネーストック | |||
★決算発表 | 積水ハウス | ||
中国 | 11月生産者・消費者物価指数 | ||
米国 | 新規失業保険申請件数 | ||
★決算発表 | ブロードコム、コストコホールセール | ||
12/10(金) | 日本 | メジャーSQ算出日 | |
★決算発表 | 東建コーポレーション、カナモト、三井ハイテック | ||
米国 | 11月消費者物価指数 | ||
12月ミシガン大学消費者マインド |
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「E」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2021年 | 2022年 | ||
日銀金融政策決定会合 | 12/17(金) | 1/18(火)、3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) | |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) | |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位
コード | 銘柄 | 業種 | 株価(11/29) | 株価(11/22) | 騰落率(11/22〜11/29) |
5232 | 住友大阪セメント | ガラス・土石製品 | 3,475 | 3,375 | 3.0% |
9532 | 大阪ガス | 電気・ガス業 | 1,865 | 1,820 | 2.5% |
9104 | 商船三井 | 海運業 | 6,640 | 6,490 | 2.3% |
8303 | 新生銀行 | 銀行業 | 1,927 | 1,894 | 1.7% |
1605 | INPEX | 鉱業 | 936 | 920 | 1.7% |
9107 | 川崎汽船 | 海運業 | 4,945 | 4,865 | 1.6% |
5631 | 日本製鋼所 | 機械 | 3,440 | 3,410 | 0.9% |
9531 | 東京瓦斯 | 電気・ガス業 | 1,993 | 1,980 | 0.7% |
7762 | シチズン時計 | 精密機器 | 514 | 511 | 0.6% |
6471 | 日本精工 | 機械 | 759 | 756 | 0.4% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位
コード | 銘柄 | 業種 | 株価(11/29) | 株価(11/22) | 騰落率(11/22〜11/29) |
9202 | ANAホールディングス | 空運業 | 2,264.5 | 2,655 | -14.7% |
9009 | 京成電鉄 | 陸運業 | 3,095 | 3,585 | -13.7% |
7013 | IHI | 機械 | 2,227 | 2,501 | -11.0% |
7269 | スズキ | 輸送用機器 | 4,725 | 5,281 | -10.5% |
6301 | 小松製作所 | 機械 | 2,640.5 | 2,930 | -9.9% |
9005 | 東急 | 陸運業 | 1,537 | 1,700 | -9.6% |
5202 | 日本板硝子 | ガラス・土石製品 | 527 | 582 | -9.5% |
8252 | 丸井グループ | 小売業 | 2,105 | 2,322 | -9.3% |
7205 | 日野自動車 | 輸送用機器 | 968 | 1,067 | -9.3% |
4911 | 資生堂 | 化学 | 6,677 | 7,341 | -9.0% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
南アフリカで確認されたオミクロン株の感染拡大が懸念され、世界的に株式、債券、為替など、幅広い市場で波乱となっています。
オミクロン株をめぐっては、WHO(世界保健機関)が「懸念される変異株(VOC)」に指定し、世界的に再び入国制限を強める国が相次いでいます。
日本では、11/28(日)にアフリカ南部のナミビアから入国した人が新型コロナウイルスの陽性と判定され、このウイルスがオミクロン株かどうか解析が進められています。この判定には4〜5日程度の期間を要する見込みで、日経平均株価の下落を加速させた要因の1つとみられます。
なお、11/24(水)から11/26(金)にかけて金融市場は株・商品が下がる一方、債券相場は上昇し、外為市場では円高・ドル安になりました。
(参考)
・S&P500 2.3%下落
・日経平均株価 1.9%下落(11/29までは3.5%下落)
・米10年国債利回り 1.62ベーシスポイント低下
・ドル・円相場 約2円の円高・ドル安
・原油先物相場(WTI) 13.1%下落
・CRB商品指数 4.9%下落
今後はどうなるのでしょうか。
結論から申し上げれば、オミクロン株の感染拡大が日経平均株価をさらに押し下げる可能性は限定的であると考えます。
日本では新型コロナウイルスの新規感染者数が6月に1日当たり1,000人に満たない日もありましたが、8/20(金)にはおよそ2万6千人まで増加。これに合わせて、日経平均株価は6/15(火)高値から8/20(金)安値まで8.4%下落しました。
今回はすでに11/16(火)高値から11/29(月)安値まで5.9%下落しており、ある程度、感染拡大に対する懸念を織り込んだ状態であると考えられます。
一方、米国市場で注目されるイベントの1つが利上げのタイミングです。
インフレ懸念からFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げが前倒しされるとの見方が強まっていましたが、オミクロン株の感染拡大によっては利上げ開始を遅らせる可能性もあるでしょう。
12月に開催が予定されているFOMCでのパウエル議長の発言が気になるところです。
オミクロン株については感染力など依然として不明な点が多く、米国では解析に2週間程度の時間を要するとされています。
物色的にはこうした未知なウイルスに対する警戒感は大きく、リオープン(経済活動の再開)銘柄は上値が重い展開が長引きそうで、情報通信関連株や半導体関連株など「すごもり消費」や「リモート需要」で買われた銘柄が買い直される可能性があるでしょう。