日経平均が急変も?〜有効なポジションは?
安倍首相夏休み明け以降も大きな動きなし
日経平均株価は8月30日(月末終値)現在、13,388円86銭となっています。前月終値に対する騰落率は、2.04%の下落で、5月以降4ヵ月連続のマイナスという結果です。8月2日に米雇用統計(7月)の発表が終わり、同じ日、我が国ではトヨタ(7203)の四半期決算が終了し、決算発表のヤマ場を超えました。これら重要日程以降は、株式市場も夏休み本番となってしまいました。
特に安倍首相が夏休み期間となった8月10日〜21日(15日は除く)は、成長戦略の進展など、政策面での話題も出にくくなり、世の中全般のお盆休み本格化も重なり、取引は急速に閑散となりました。東証一部の売買代金は12日以降、2兆円を割り込む状態となり、月内はついに2兆円を回復することなく、終わってしまいました。
この間、株価的にも基本は「膠着状態」が続きました。以前ご紹介した通り、4月から7月まで日経平均株価の月終値は13,668円から13,860円の狭いレンジに収斂していました(表1)が、8月5日〜9日の週以降は、週終値も3週連続で13,600円台で終わるというかなりのこう着状態となりました。安倍首相が夏休みを明けて以降も、基本的には政治面で大きな動きがなかったことから、株式市場では様子見気分が強まることになりました。
ただ、月末にかけては、発表される米経済指標に息切れ感が見え始めたことや、米国などがシリアのアサド政権を攻撃するのではないかといった懸念が強まり、日経平均株価は13,600円近辺の揉み合いレンジの中核をやや下回る水準で8月を終了しました。
(表1)日経平均・月足と先物・オプションSQ値
(表2)日経平均・週足
(図1)日経平均株価(日足)
当社HPより、SBI証券投資調査部が作成。データは2013年8月30日現在。
9月6日まで動き取りにくく〜9月9日の週は大きく変動も
非常に方向感をつかみにくかった8月相場ですが、9月相場は激しく動く可能性もありそうです。理由は、今後の世界経済および日本経済に大きく影響を残しそうなスケジュールが目白押しとなるためです。特に、日本時間9月6日(金)の取引終了後から、9日(月)の取引開始前までに、重要スケジュールが集中しています。
このうち6日(金)に結果が発表される米雇用統計(8月)については、中核指標である非農業部門雇用者数が前月比で16万人強増加するというのが、市場コンセンサスとなっています。ここを大きく上回ってくると、9月17〜18日に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和が縮小される可能性が強まりますので、基本的には円安・ドル高、日本株高の材料になるとみられます。
7日(土)に、国際オリンピック委員会(IOC)から結果が発表される2020年夏のオリンピック開催都市については、8月末現在、東京が最有力都市とみなされていますので、当然選出への期待が高まっています。無論、選出されれば、株価上昇要因(例外は直前に必要以上に織り込まれた場合)となります。もっとも、これまで「最有力都市」の多くが落選してきた経緯もあるので、油断は禁物といえます。
なお、9日(月)の取引開始前に発表される我が国の4〜6月期GDP改定値の結果も重要です。速報値である前期比・年率2.6%から大きく上方修正されれば、安倍首相が消費税増税を決断できる重要な材料になるとみられます。従って、この数値が前回値より上振れれば上振れる程、日本株には強い追い風になるとみられます。
9月9日(月)は、これら重要な3つの材料を消化しての株価形成になります。しかし、その週末である13日には、先物とオプション両方のSQが重なる「メジャーSQ」を控えていますので、市場参加者の思惑が複雑に絡み合うことも予想されます。株式相場は現物・先物ともに大きく変動する可能性もありそうです。
9月前半の主要タイムスケジュール
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
先物・オプション取引が活きる局面か
このように、場合によっては大きな変動が想定されるものの、日経平均は上昇するのか、下落するのか決め打ちすることは非常に困難です。雇用統計や我が国のGDP改定値などは、事前の経済指標等によりある程度は予測できますが、オリンピック開催都市の決定は、投票が終わってみないとわからないというのが現実です。
すなわち、6日(金)取引終了時点ではポジションを軽くし、9日(月)の動きで判断するというのが、ひとつのやり方です。この場合、冒頭に述べたように、日経平均株価の13,600円近辺に収斂してきた経緯があるので、逆に、そこから放れてきた方に着くというのが、有力な方法のひとつと考えられます。
もうひとつは、オプションをうまく利用する方法です。仮に「9日以降は上昇する」と読んで先物の買いポジションを持つ場合でも、オプションのプットも買うことによりヘッジができます。無論、この場合はポジション全体の損益分岐点も上がってしまいますが、リスクは低減します。なお、逆に「9日以降は下落する」との予想から先物の売りポジションを持つ場合は、オプションのコールの買いでヘッジが可能です。また、限月・行使価格とも同一のコールとプットを買い建てる「ストラドルの買い」も有効かもしれません。
ただ、これらの戦略を取る場合、6日から9日にかけての各種発表が強弱打ち消しあって、9日以降の取引では「消化不良」となり、株価があまり動かない可能性も残ること、先物もオプションも、9月限の最終売買日が12日(木)に接近していること等の諸点には注意が必要です。