下落トレンドからの脱出シナリオは?
2014年、日経平均の高値は切り下がりの傾向〜予想EPSの停滞が大きな要因か
日経平均株価が2014年・年初からの低迷から脱出しきれないでいます。図1は、2013年4月以降の日経平均株価を、その予想EPS(一株利益)の推移とともに、グラフ化したものです。日経平均株価は2013年12月30日に、「アベノミクス相場」(2012年11月14日の野田・前首相解散・総選挙表明以降の相場)の高値16,291円を付けましたが、2014年に入ると、徐々に高値を切り下げる推移となっています。
図1:日経平均株価とその予想EPS(一株利益)の推移
- ※日経平均公表データおよびBloombergデータをもとにSBI証券が作成。単位は「円」。
なぜ、2014年の日経平均株価は、低迷から脱出できないのでしょうか。日経平均低迷の重要な要因のひとつとして、改めて強調しておきたいのが「企業業績の伸び悩み」です。図1で示した同平均株価の予想EPSの推移は、まさに、日経平均株価に採用された企業の利益の方向感を示していることになります。このグラフのうち、一番右に四角で囲まれた部分は、今回の3月・本決算の発表が本格的に始まった4月21日以降の予想EPSの推移を示していますが、予想EPSは4月21日1,023円から5月9日1,012円まで、わずかながら下がってしまっています。3月・本決算の発表進捗とともに予想EPSが上昇した昨年(グラフ左の方で四角に囲まれた部分)とは、対照的な動きになっています。
昨年の決算発表は、日銀が異次元の量的緩和を発表(2013年4月4日)した直後で、外為相場でも円安・ドル高が進展し、株価も上昇過程にあり、企業を取り巻く事業環境も明るさを増している最中でした。それを受け、業績見通しが2013年3月期から2014年3月期にシフトする中、2014年3月期の大幅増益予想を反映し、予想EPSも上昇傾向を辿りました。それに対し、現在進捗中の決算発表では、2015年3月期に対し、多くの企業が慎重な見通しを示していることが明らかになり、それが予想EPSの伸び悩みにつながっています。
今後、日経平均株価は高値切り下がりのトレンドを上放れ、反転に転じることができるでしょうか。その鍵は、まさに、企業業績の方向感、即ち予想EPSの推移が握っているとみられます。
国内・海外の景気拡大が予想EPSの上昇に繋がる可能性
前項では、企業の業績予想が慎重になってきており、そのことが予想EPSの伸び悩みという形で、株式市場の逆風になっているとの見方を示しました。ただ、ここで注意すべきは、そうした慎重なムードは今になって急速に台頭してきた訳ではないということです。特に2014年4月の消費税率引き上げは、既にわかっていたことであり、「企業業績の伸び悩み」は、2014年・年初以降、徐々に織り込まれてきた可能性が高いとみられます。
しかし、決算発表一巡を契機に、悪材料は「織り込み済み」となり、景況感の改善から、企業やアナリストの予想EPS上昇が明らかになってくれば、株価が反転する可能性があると思われます。事実、その芽は以下のように見えつつあります。
国内景気の先行きを示す「景気ウォッチャー指数」の先行指数は、3月34.7から4月は50.3と急回復しています。内訳を見ても「家計動向関連」、「企業動向関連」、「雇用関連」のすべてにおいて改善が見られており、国内景気が持ち直す可能性が大きくなっています。
一方、海外景気についても、世界で最大規模の米国経済について、雇用の改善が鮮明になってきている上、足元では消費の改善も目立ち始めていることは、強い追い風になるとみられます。このままいけば、同国の量的緩和は2014年・年内にも終了し、2015年以降の利上げが視野に入ってくるとみられます。これらを受け、米長期金利は次第に上昇し、外為市場で円安・ドル高が進む可能性も出てくるとみられます。無論、米国経済の拡大は、同国を輸出相手国とする多くの新興国経済にも追い風になりましょう。
国内・海外経済は今後、全体としては回復ないし拡大が見込まれ、上場企業の業績は拡大し、予想EPSも上昇が続くとみられます。さらに、現在論議されている法人税・減税が決まれば、中期的にも予想EPSに上昇圧力がかかると思われます。