2025-06-25 07:19:13

穀物市場分析の基礎(大豆編-その1)

2024/6/6
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

トウモロコシ、小麦などイネ科種子を「穀物」と呼ぶ事に対比して、マメ科の大豆あるいはアブラナ科のアブラナ(ナタネ)等、種子に油脂を含み、食用油を抽出する作物を「油糧種子」と呼んでいる。油糧種子の中で先物市場に上場されている品目は大豆(CBOTシカゴ市場)、綿花(ICE米国市場)、ナタネ(ICEカナダ市場)などが挙げられるが、本稿では生産量、取引量最大の大豆を取り上げる。

大豆及び大豆製品の用途
米国産大豆の用途は、輸出向けと国内向けに分けられ、国内用は搾油用及び種子用に分けられる。搾油された大豆油は食用油用とバイオディーゼルと呼ばれる燃料用に供される。搾油後に残った残差(大豆ミール)は高タンパクを含有し、家畜の配合飼料原料用が主たる用途である。大豆といえば日本では味噌、醤油、納豆などの食用も一般的であるが、その割合は他用途に比較して少ない事から、米農務省の需給見通しの中ではその他用に分類されている。

大豆の世界市場
輸出市場は穀物と比較して極めて単純化されている。世界の貿易量は約180百万トン(24/25年度見通し)であり、輸出国はブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの南米三か国合計で115百万トン(シェア64%)、米国が50百万トン(シェア28%)となっており、両地域で輸出量の90%以上を占めている。大豆貿易市場の拡大は急速であり、例えば30年強前の1990年では貿易量は25百万トン、米国のシェアは約65%であり、南米からの輸出は7百万トンに留まっていた。

一方、輸入は中国一国で109百万トン、60%のシェア。これに続くのはEUで14百万トン、東南アジア5か国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、タイ)で10百万トンである。因みに日本の輸入量は約3百万トンである。中国の大豆輸入急増は、生活水準向上に伴う食肉需要の増加から、飼料原料用の大豆ミール需要の拡大によるところが大きい。

大豆の生育ステージ
大豆の穀物年度は粗粒穀物同様9月から翌年8月であり、先物市場では8月限までが旧穀限月(昨年収穫)、11月限以降が新穀限月となる。なお、9月限の扱いはトウモロコシ同様、一部で主格が始まるタイミングであり、新しく収穫した大豆を9月に受渡することが難しいため、旧穀限月と扱われることが多い。

米国の場合、作付けは4月下旬頃から6月上旬を目途に行われる。一般的には農家は作付け準備が出来た段階で夏場の最も暑い時期の受粉を避ける為に、まずトウモロコシを作付けるケースが多い。但し、最近は大豆も並行して作付けるケースが多くなっている。

作付け/発芽後、大豆にとって最も重要な段階は開花、受粉である。開花期は概ね発芽後1.5か月-2か月である。大豆の場合、開花後に一つの花の中で雄蕊と雌蕊で受粉する自家受粉と呼ばれる。生育期間中は他作物同様に適度な水分、日照は必要であるが、特に開花期及びそれ以降も継続して土壌水分の維持は必要である。(開花期以降のステージは別レポートで解説の予定。)

今後は北米の夏場の天候と、中期的な異常気象発生が鍵
5月の米農務省需給報告では米国の大豆新穀需給は作付け意向面積の増加による昨年比増産見通しを背景に緩和見通しであり、また世界需給も南米の増産を前提に緩和見通しが示された。このシナリオの具現には、まず短期的には米国での生育期の良好な天候が前提となる事は言を待たない。

6月2日現在の米国大豆作付け進捗は78%と過去5年平均比較で5%進捗が早く、現時点では順調に推移していると判断出来る。6月以降は気象状況が価格を左右する天候相場が本番となるが、トウモロコシ同様に現時点で中西部の広範囲で土壌水分が潤沢である事は価格上昇を抑制しよう。ブラジルの大豆収穫はほぼ完了し、当面北米での生育状況が焦点となる環境下で、産地での乾燥傾向ないしその予報が今後強気に作用する材料であり、天気予報の推移から目は離せない。

出所:CBOT

中期的には地球規模の天候パターンは現在エルニーニョが終息しつつあり、夏前には中立状況、また夏以降はラニーニャに移行する可能性が高まっているが、ラニーニャがもたらす天候パターンの具現は秋以降になると予想される。上述通り大豆の世界への供給源は米国と南米に二分されており、いわば年間を通して天候リスクに晒されている形である。そのため、中期的にはラニーニャの影響が徐々に強まる可能性がある秋に、南米中心に南半球での天候パターンに異常が見られれば、需給ひっ迫観測を強め、上値を目指す可能性は残る。トウモロコシ同様に、夏場以降も上値リスク>下値リスクと見る。

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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