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下落基調を見せる粗糖市場
2024/8/1
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
粗糖市場が弱含んでいる。本稿では直近での粗糖市場を取り巻く背景を概略する。
尚、砂糖はサトウキビ(甘蔗糖)及び甜菜(甜菜糖)より産糖されるが、本稿では砂糖生産の約80%を占める砂糖キビ由来の粗糖生産にフォーカスする。
1)価格推移
昨年末にかけて下落基調を示した粗糖市場であるが、今年に入ってからは主要生産国での天候推移などが材料視されて比較的堅調な展開が続いた。直近限月である10月限で見ると、20.58セントで年初スタートした後急反発、以降は2月9日に付けた23.12セントを高値に、概ね21~23セントのレンジでの展開が続いた。しかし4月以降は主要生産国での天候回復など全般的な増産観測が強まって来ており、また原油価格の動向にも呼応する形で、4月当初の22セント台から5月末には18.03セントまで下落した。6月には一旦反発したものの20セント超が上値抵抗となり、7月に入ってからは再度下落基調となっている。7月24日に17.86セントの安値を付けたのちに反発、現在は19セントを挟む値動きとなっている。
出所:ICE
2)主要輸出国の需給見通し(数字は24/25年度、USDA推定)
世界の砂糖生産量は186百万トン、ブラジルが最大生産国で最新の見通しでは44百万トンとなる見込みでこの数字は同国としては過去2番目の高水準、次いでインドが34.5百万トン、タイが10.2百万トンと続く(因みにEUの生産量は甜菜由来で15百万トン)。輸出市場はグローバルで65百万トン規模であるが、ブラジルが34.5百万トンで、これにタイ、インドが続く。従いこれら三国の生産状況が供給面で粗糖市場を動かす最大要因と言える(なお日本は2024年実績で、84.5%を豪州から15.5%をタイから輸入している)。
この中でインドの国内需要動向が注目されている。同国では人口増に加えて食生活の変化から砂糖消費量が増加傾向であり、またエタノール混合のプログラム推進から、インド政府は粗糖の輸出制限を実施しており、21/22年度には12百万トン弱であった輸出量は23/24年度には4.6百万トン、次年度はさらに減少見通しである。
従い、従来生産量上位三国で占めていた輸出シェアは直近ではブラジル及びタイに頼る形となり、両国の天候推移が特に重要なファクターとなって来ている。
またブラジルではフレックス車の普及によりサトウキビ由来のエタノール需要が根強く、サトウキビの砂糖向け/エタノール向け使用割合も見ておく必要がある。業界団体であるUNICAによると同国主産地である中部/南部諸州での7月上旬の生産割合は砂糖が49.88%、エタノールが50.02%でほぼ半々となっている。本砂糖年度の累計では砂糖が48.92%、エタノールが51.08%で前年同期比では砂糖の割合が0.8%程度上昇している。なお、米農務省は砂糖/エタノール製造割合が51%/49%に逆転する見通しとしている。
3)世界需給及び期末在庫見通し
ブラジルでの増産、前年度乾燥天候により生産量が減少したタイが10百万トン台に戻すなどグローバルベースでは過去5年で最大の生産量が見込まれている。需要面でも1%弱の伸びが見込まれるが米農務省の見通しでは単年度供給過剰の影響で期末在庫は+6.5百万トン増加して40.2百万トンと予測している。
出所:CFTC、ICE
4)短期価格見通し
昨年度は主にタイでの天候不良、またブラジルでも一部天候不順も伝えられ、春先以降強地合いが継続し、価格帯は年間を通し22-28セントのレンジを維持した。本年度もタイでの熱波など天候推移は必ずしも良好とは言えないものの、主産地ブラジルでの順調な生産またレアル安も上値を重くしており、当面同様の展開が続くと思われる。一方インドの輸出規制継続、またタイでの生産量不透明感などの下支え要因との攻防によりレンジが形成されよう。向こう3か月程度の短期では、昨年度から一段レベルの下がった17-21セントの価格レンジを予想する。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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