2025-05-18 23:25:05

2024年9月度米農務省月例需給報告より

2024/9/24
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

9月12日に米農務省より月例の需給報告が発表された。以下同レポートの要旨を概観する。

◆米国旧穀需給
2023/24年度旧穀の需給見通しでは、トウモロコシが輸出増(前月需給報告比+40百万)、国内エタノール用需要増(+15百万)とした事から、期末在庫は▲55百万減の1,812百万ブッシェルとした。大豆は搾油用需要を+5百万ブッシェル増とし、その分期末在庫が▲5百万ブッシェル減の340百万ブッシェルとなった。今月末に発表される8月31日現在の四半期在庫報告が大豆、トウモロコシの旧穀期末在庫の実数となるので、この点は10月の需給報告で修正される。

・やや弱気の米国小麦需給
小麦は生産量、需要含め需給見通しは前月から修正はなかった。生産量については9月末に農務省より小粒穀物報告(小麦、大麦、オート麦)が出される予定であり、本需給報告での見直しは通例行われない。需要面では輸出需要で上方修正(=期末在庫減)が予想されていたが、見直し無しで市場へは弱気インパクトとなった。

・予想に反し単収上方修正されたトウモロコシの新穀需給
トウモロコシは単収を183.6bpa(ブッシェル/エーカー)とし、前月推定値から+0.5bpa上方修正した。これに伴い生産量は+39百万ブッシェル増の15,186百万ブッシェルとした。但し上記旧穀期末在庫減から供給量全体では▲16百万ブッシェル減となった。需要面では修正は行われなかった事から、結果期末在庫は供給減を反映し2,057百万ブッシェルとなった。市場は生産量減を見込み、期末在庫の減少幅を大きく見積もっていた事から弱気のサプライズであった。

・小幅修正にとどまった大豆の新穀需給
大豆の新穀需給は全般に微調整にとどまった。供給面では全米平均単収は据え置かれたが、詳細の積み重ねで生産量は▲3百万ブッシェル減の4,586百万ブッシェルとし、旧穀期末在庫減と合わせ、総供給量は▲8百万ブッシェル減とした。需要面では搾油、輸出、種子用と全て修正なく、その他残渣で小幅下方修正の結果、総需要▲2百万ブッシェル減、結果期末在庫は▲10百万ブッシェル減の550百万ブッシェルとなり在庫率12.5%となった。 大豆では若干の単収増が予想されていた事から、やや強気と捉えられた。

◆世界需給のポイント
小麦はEUが減産見通し(前月需給報告比▲4百万トン)から輸出も▲2.5百万トン下方修正され、輸出減少分の一部をウクライナが増産見込み(+0.7百万トン)を背景に補う形(+1百万トン)が示されている。その他地域では主生産地域で現時点大きな問題なく越冬している豪州、また旧穀期末在庫の上方修正で余力の出てきたカナダ両国からの輸出見通しを合計で+3百万トン増と見ている。ただし、世界全体では引き続き▲8.0百万トンの供給不足が見込まれている。なお、その穀物年度の需要を供給で割った需給率はこの20年で9番目の水準であり、供給不足ながらもそこまで需給はタイトとは言えない。

出所:中国国家統計局、LME

大豆は大きな修正はなかったが、記録的な豊作で世界需給バランスは+26.2百万トンの供給過剰(前穀物年度+11.5百万トンの供給過剰)と、大幅に需給緩和が見込まれており、世界の大豆在庫率も33.4%(29.3%)に上昇の見込み。南米パラグアイの生産量を+0.5百万トン上方修正しているが、この時期での修正は作付面積増を想定している。同国はここ数年作付面積を増加させており、生産量増が輸出余力増に繋がっている。結果としてブラジル、アルゼンチンを加えた南米三国からの輸出見通しは116.8百万トンであり世界貿易でのシェアは64.3%となる。輸入国に大きな変化はなく、最大の輸入国の中国は109百万トンで前月から据え置いている。

出所:USDA

トウモロコシ生産は米国とカナダで増産、EUとロシアで減産見通しとなり、差し引きで▲1.25百万トンの下方修正となった。但し米国以外は輸出市場でのシェアは限定的であり、グローバルでの貿易市場への影響は軽微。輸入サイドでは最大の単一輸入国である中国の見通しを▲2百万トン減と21百万トンとした。同国の生産、需要両面に変化はないので輸入減は巨大な在庫削減の一部と見ている。その他では減産に伴いEUの輸入見通しを+1百万トン増としている。需給バランスは+4.7百万トンと前穀物年度の14.0百万トンから供給過剰幅は縮小するが、それでも生産余剰となる見込み。

 

◆今後の相場展開~豊作確定後の投機筋の動き次第
今後の相場見通しであるが、米国での大豆、トウモロコシ共に生育の最重要期は無事乗り切り、今後の需給報告で単収の調整は出て来るものの、豊作自体は確定している。間もなく米国での収穫が本格化する中で、直近でショートポジションを軽くしている投機筋の動向が注目される。季節要因で収穫に伴うヘッジ売り圧力が強まるタイミングで再度売り先行の動きは十分想定される。一方で今後は南米での作付け状況が注目点となるが、ブラジルでは冬場は乾燥傾向となっている地域もあり、南米の天候推移次第ではいち早くカバーの動きも出て来よう。

※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。

ところで短中期で南半球の状況に影響を与える可能性のあるラニーニャであるが、最新の気象庁のレポートでは8月の監視海域平均水温は基準水温比▲0.5度となっており、ラニーニャ現象の兆候は顕著になりつつある。気象庁によれば9-12月でのラニーニャ発生確率は70%としている。また米海洋大気庁の最新の見通しでも9-11月もラニーニャ発生確率は71%としている。但し、両機関共に来春に向けては水温の上昇を予想しており、秋口ラニーニャが発生したとしても短期に留まる見通しとなっている。

以上を総括すると短中期には未だ下押しのリスクは残るも、南米の状況に市場の関心が移るに連れて買い戻しが入りやすい環境には変わりないと思われる。

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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