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投資家が加速的に金を求める理由
提供元:森田アソシエイツ
金ETFは、2020年第1四半期において約300トンの資金流入を記録し、過去最高レベルの四半期となった。累積残高も、四半期末に過去最高の3,185トンに達し、4月および5月も、合計約325トン、金額にして2兆円弱増加した(図表1参照)。
投資家はなぜ加速的に金に期待を寄せているのか、最新の研究調査データを参考に、改めて確認してみよう。
収益目的以外に投資家が金に投資する最大の理由は、投資環境の不確実性をヘッジして、富の保全を図るためである。その一つが、非常時におけるセーフヘブン機能である。つまり、リスク的なイベントが発生した時、堅調なパフォーマンスを見せ、株などリスク性の高い資金の逃避先として機能することである。コロナウイルスが拡大する2020年に第1四半期においても、金価格は年初から約15%上昇しており、苦戦する他主要資産との違いを見せた。最近発表されたのワールド ゴールド カウンシルのレポート「戦略的資産としての金の重要性」によると、ブラックマンデー、9・11、リーマンショック、ユーロソブリン危機など、過去に市場が混乱した時において、金は他資産に比べパフォーマンスに優れ、セーフヘブン効果を発揮したことが確認されている(図表2参照)。
また、平時においても、金は他資産と異なる動きを見せ、分散効果が得られることも、富の保全を意識する投資家にとっては魅力である。通常の景気拡大期と景気後退期では、金と世界株式の相関係数はそれぞれ-0.05および+0.1ほど、TOPIXとはそれぞれ-0.01および+0.1ほど、世界の債券とはそれぞれ+0.05および+0.2ほど、日本国債とはそれぞれ-0.25および+0.02ほどであり、統計的にほぼ相関が認められない数値となっていることが、レポートによって裏付けられている(図表3参照)。そのため、投資ポートフォリオに金を加えた場合、リスク調整後リターンが向上する。
機関投資家にとって、市場の流動性も重要な考慮点である。金市場は主な金融商品、例えば日本株式、ユーロ/円、ダウ平均株価よりも流動性が高く、売買高は S&P 500 に匹敵する(図表4参照)。金の売買高は、2019年の日次平均で約16兆円あり、深刻な金融ストレスの状況下でも、金の流動性は枯渇しない。コロナウイルス危機下の3月に、金融市場の流動性売り(投資家や投資ファンドがマージンマネーの追加要請や顧客からの解約に応じるため、非常時にも値崩れしない流動性の高い資産を売却)が発生した時も、金市場は混乱なくこうした取引を吸収し、その厚みを示した。
一方、金は保有してもキャッシュフローを生まないとの指摘がよくある。しかし、世界中でマイナス・低金利政策が導入されるなか、トータル・リターンで投資を評価する投資家が加速的に増加している。過去20年の金の平均年間トータル・リターンは約10%、株式や債券よりも高い。過去10年や過去5年で見た場合でも、それぞれ6%および3.5%ほどあり、底堅いリターンがあることを、レポートは示している(図表5参照)。
コロナウイルスの拡大がそれまで累積したマクロ政治・経済環境の不確実性を増幅させ、投資家が直面するリスクは深化、そして多様化した。金は分散リスク、テールリスク、信用リスク、流動性リスク、通貨リスク、インフレリスクなど、ほとんどの投資リスクに対してヘッジ効果があり、シンプルかつ低コストのソリューションを提供できるだけでなく、しっかりしたリターンも期待できるため、不確実性が極めて高い現在の投資環境に活躍する資産ではないだろうか。
森田アソシエイツ 森田 隆大(もりた たかひろ)
ニューヨーク大学経営大学院にてMBA取得。1990年にムーディーズ・インベスターズ・サービス本社(ニューヨーク)にシニア・アナリストとして入社。2000年に格付委員会議長を兼務。2002年に日本及び韓国の事業会社格付部門の統括責任者に就任。2010年にワールド・ゴールド・カウンシルに入社、翌年、日本代表に就任。金ファンダメンタルズおよび投資における金の役割に関する調査・研究の提供、および投資家との直接対話を通して、金投資の普及活動に取り組む。
2016年に森田アソシエイツを設立、ワールド・ゴールド・カウンシル顧問を兼務。現在、埼玉学園大学大学院客員教授、特定非営利活動法人NPOフェアレーティング代表理事、MSクレジットリサーチ取締役兼評価委員会議長も兼任。立命館大学金融・法・税務研究センターシニアフェロー、法政大学大学院兼任講師を歴任。
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