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金はドル高が圧迫も米景気見通しを確認
提供:SBIゴールド
金は実需筋の買いが下支えに
6月18日の週のニューヨーク金市場は、ドル高を受けて軟調となり、8月限は2017年12月以来の安値1,262.4ドルを付けた。米中の貿易戦争に対する懸念を受けて商品全面安となったことに加え、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の緩やかな利上げ見通しを受けてドル高に振れたことが金の圧迫要因になった。
ドル指数は11カ月ぶりの高値95.53を付けた。ただ6月のフィラデルフィア地区連銀業況指数が予想以上に低下し、米景気のピークが意識されたことを受けてドルの利食い売りが出た。ドル安に転じるようなら、金が下げ止まる可能性も出てくる。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、労働市場が過度に引き締まる兆候は見られないとした上で、FRBは緩やかな利上げを継続すべきとの考えを示した。CMEフェドウォッチによると、米金利先物市場で12月の2.25〜2.50%への利上げ確率は44.9%と2.00〜2.25%の43.2%を上回り、年4回の利上げ予想が強い。一方、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、利上げの判断はインフレ率の上昇に合わせて「忍耐強く」かつ「段階的に」行う考えを明らかにした。ECB理事会で来年夏まで金利据え置き見通しが示されており、欧米の金利差が拡大すると、ドル高要因となる。ただ6月のフィラデルフィア地区連銀連銀業況指数が19.9と、前月の34.4から低下し、約1年半ぶりの低水準となった。事前予想の29.0も下回った。米景気のピークが意識され、貿易戦争が2019年のショックにつながる可能性があるとの見方が出ている。貿易戦争が激化すると、ドルの利食い売りが進むきっかけになりそうだ。
トランプ米大統領が、中国からの総額500億ドルに上る知的財産権およびハイテクに関連する製品に対して25%の輸入関税をかけると発表したことに対し、中国は同規模の報復措置を取ると発表した。米大統領は2,000億ドル規模の中国製品に対し、10%の追加関税を課すと警告した。また中国が米国の新たな措置に対して再び関税を引き上げれば、「米国はさらに2,000億ドル規模の中国製品について追加関税を求める」とした。一方、欧州連合(EU)の欧州委員会は、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入関税への対抗措置として、22日から農産物などの米製品に25%の関税を課すと発表した。米大統領は、欧州連合(EU)内で組み立てられた全ての自動車に対し、20%の関税を課すと警告した。欧州委員会のカタイネン副委員長は「もし米国が輸入関税引き上げを決定すれば、われわれも対抗する以外に選択肢はない」と表明した。中国に加え、欧州も米国に対抗する姿勢を示しており、貿易戦争が激化する可能性がある。米商務省は、自動車や自動車部品の輸入が安全保障上の脅威になっているかどうかを調べている。ロス商務長官は21日、調査を7月下旬か8月に終えることを目指していると発言した。自動車部品の調査について、7月に2日間一般意見を聞くことを計画している。
金の独自材料では、6カ月ぶりの安値を付けたことで実需筋の買い意欲が強まった。インドの金プレミアムは1ドルとなり、前週の7.5ドルのディスカウントから7週間ぶりのプレミアムとなった。ただ多くの宝飾業者は1,250ドル割れの安値を待っていると指摘された。一方、中国の金プレミアムは5〜6ドルで横ばいとなった。人民元の下落に相殺された。
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月19日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは9万6,512枚となり、前週の12万0,240枚から縮小した。今回は新規買いが1万0,163枚、新規売りが3万3,891枚入り、買い越しを2万3,728枚縮小した。一方、6月22日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比4.13トン減の824.63トンとなった。
NYプラチナで大口投機家が売り越しに転じる
ニューヨーク・プラチナ7月限は、米中の貿易戦争に対する懸念やドル高を受けて軟調となり、一代安値857.6ドルを付けた。ただ米景気のピークが意識され、ドルの利食い売りが出始めたことや原油急伸を受けて下げ一服となった。大口投機家が売り越しに転じており、売られ過ぎの見方が出ると、買い戻し主導で上昇する可能性が出てくる。
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月19日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の取組しは5,161枚売り越しとなり、前週の3,561枚買い越しから売りに転じた。手じまい売り・新規売りが出た。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は22日のロンドンで10.43トン(15日11.23トン)に減少、ニューヨークで15.83トン(同15.83トン)と変わらず、南アで25.14トン(同25.26トン)に減少した。
原油はOPEC総会をきっかけに急伸
ニューヨーク原油は、石油輸出国機構(OPEC)総会で小幅な増産が決定されたことをきっかけに急伸し、5月25日以来の高値69.38ドルを付けた。OPEC総会では、7月から小幅な増産を行うことで合意した。増産に前向きなサウジアラビアが反対するイランを説得した格好だが、具体的な増産量は示さず、曖昧な目安を立てるにとどめた。OPEC非加盟国も23日に増産に合意した。各国の生産動向が7月以降の焦点になりそうだ。一方、米エネルギー情報局(EIA)が発表した6月15日までの週間石油統計で、原油在庫は前週比591万4,000バレル減少した。事前予想は370万バレル減。一方、米油田サービス会社ベーカー・ヒューズから発表された6月22日までの週の米石油リグ稼動数は前週比1基減の862基となった。パイプラインの輸送能力不足を受けて12週ぶりに減少した。
ニューヨーク金はドル高で下値を試す
ニューヨーク金8月限はドル高を受けて軟調となり、2017年12月以来の安値1,262.4ドルを付けた。米中の貿易戦争に対する懸念が残るなか、ドルが引き続き買われたことが圧迫要因になった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が緩やかな利上げ見通しを示したこともドル高要因となった。ただ6月のフィラデルフィア地区連銀業況指数が予想以上に低下し、米景気のピークが意識された。ドル安に転じるようなら下げ止まる可能性が出てくる。
テクニカル面ではRSIが売られ過ぎの水準に入っており、買い戻しが入るようなら下支え要因になる。
6月25日からの週の注目ポイント
25日 |
独Ifo景況感指数(6月) |
☆☆ |
---|---|---|
米新築住宅販売件数(5月) |
☆ |
|
26日 |
米S&Pケースシラー住宅価格(4月) |
☆ |
アトランタ連銀総裁、講演 |
☆☆ |
|
ダラス連銀総裁、講演 |
☆☆ |
|
27日 |
NZ政策金利 |
☆☆☆ |
米耐久財受注(5月) |
☆☆ |
|
米中古住宅販売制約指数(5月) |
☆ |
|
米週間原油在庫統計 |
☆☆ |
|
カーニー英中銀総裁、講演 |
☆☆ |
|
ボストン連銀総裁、講演 |
☆☆ |
|
28日 |
米GDP確報値(第1四半期) |
☆☆ |
セントルイス連銀総裁、講演 |
☆☆ |
|
アトランタ連銀総裁、講演 |
☆☆ |
|
29日 |
日本雇用統計(5月) |
☆ |
独失業率(6月) |
☆ |
|
ユーロ圏消費者物価指数(6月) |
☆ |
|
米個人所得支出(5月) |
☆ |
|
米PCEデフレータ(5月) |
☆☆☆ |
|
30日 |
中国製造業PMI(6月) |
☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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