東京株式市場は様子見気分の強い展開になっています。米大統領選挙(11/3)を経て政治経済の混乱が強まる可能性があることに加え、欧米で新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最高水準で推移しており、経済活動が再び滞る懸念が強まっているためです。東証1部の売買代金は10/12(月)以降、2兆円未満の水準にとどまっています。
そうした中、新興市場は波乱の動きとなっています。中でも、東証マザーズ指数については、10/14(水)に1,365.69の年初来高値を付けた後、10/27(火)には一時1,161.82の安値を付けました。マザーズ銘柄は今後どうなるのでしょうか。
米大統領選挙が11/3(火)に迫ってきました。同選挙では民主党のバイデン候補の支持率が高く、同氏の優勢が伝えられていますが、州ごとに選挙人が「勝者総取り」となるこの選挙では支持率が当てにならない側面があります。このため、勝者は最後までわからないと考えられる上、仮にバイデン氏が勝利しても、トランプ氏が不正な選挙だと主張し、次期大統領の最終的な決定まで時間を要する可能性があります。
このように、当面は政治経済の混乱が強まる可能性があることに加え、欧米で新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最高水準で推移しており、経済活動が再び滞る懸念が強まっています。これらを背景に、東証1部の売買代金は10/12(月)以降、2兆円未満の水準にとどまっており、東京株式市場は模様眺め気分の強い展開になっています。
そうした中、新興市場が波乱の動きとなっています。日経ジャスダック平均は目先の高値から一時2%超の下げとなりました。東証マザーズ指数については、10/14(水)に1,365.69の年初来高値(終値ベース)を付けた後、10/27(火)には一時1,161.82の安値を付けるなど一時的な下落率が15%弱に達する場面があり、ジャスダック市場以上に厳しい下げになっています。
東証マザーズ指数は、日経平均株価や日経ジャスダック平均に比べ、良好なパフォーマンスを上げてきました。東証マザーズ指数は上記した年初来高値までの年初来上昇率が52%に達しましたが、日経平均株価はようやく昨年末の株価を取り戻したに過ぎず、ジャスダック平均は昨年末の水準の回復すらできていません。この差はどこから来たのでしょうか。
東証マザーズの時価総額上位には、「情報通信」に属するIT分野のグロース銘柄が多く、世界的なグロース銘柄高が追い風になったことに加え、菅新政権がITを活用した行政の効率化を政策の中心的存在に添えたことにより、「国策」を背景にできたことも大きいかと考えられます。もともと、世界的なグロース相場の背景には、これも世界的な「過剰流動性」(カネ余り)の存在が指摘されますが、新型コロナウイルスの感染拡大で景気・企業業績に逆風が吹き、金融緩和局面が長期化したことも追い風になりました。
その意味で、「国策」や「過剰流動性」に変化がない現状では、すぐさま東証マザーズ市場が大崩れになる可能性は、それ程大きくないのかもしれません。ただ、東証マザーズ市場の時価総額上位に、予想PERで数百倍まで評価されたような割高感の強い銘柄が目立ってきたことは、やはりリスク要因であると考えられます。そうした中、折しも決算発表シーズンが本格化してきた訳ですが、この時期を経て、次第にマザーズ銘柄間の明暗が分かれていく可能性が大きいとみられます。
図1は東証マザーズ指数の一目均衡表(日足)です。遅行スパンの位置が日々線の上位を維持している上、日々線が雲の上にあり、強気相場の要素は残っています。しかし、転換線が基準線を下回るデッド・クロスに加え、日々線が両者を下まわるなど、注意すべき変化も出てきています。少なくとも当面は不安定な展開に注意すべき局面といえそうです。
図1 東証マザーズ指数・一目均衡表(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成
そうした中で、東証マザーズ市場でも決算発表が本格化してきます。予想PERが高いということは、市場が将来の高い成長に期待していることの証左であるという側面もあります。その意味で、決算発表を通じ、成長期待が剥落してしまうと株価が大きく下がる場合も出てくるとみられます。マザーズ銘柄にとり、決算発表の持つ意味はより重要かもしれません。
表1は東証マザーズ市場の時価総額上位銘柄のうち、3月、6月、9月、12月決算銘柄の決算発表予定日および、直近の2020/4〜6期の営業利益について示したものです。マザーズ銘柄についてはまだまだ、アナリストがカバーしている銘柄が少なく、市場コンセンサスが形成されている銘柄も東証1部などに比べると多くありません。したがって、決算のチェックポイントは、前四半期や前年同期と比べて、着実に利益を積み上げているかどうかという点になるかと思われます。
現在、東証1部で活躍している銘柄のうち、エムスリー(2413)などは、ライブドアショックが起きた2006年は東証マザーズ銘柄でしたが、その後成長を続け、時価総額は40倍超になり、東証1部銘柄に成長しました。同社はその優れたビジネスモデルを武器に、14年前から、増益基調を維持してきました。こうした企業は数少ないかもしれませんが、やはり、将来大きく成長していくためには、東証マザーズの段階で、ビジネスモデルに陰りが見え、増益や減益を繰り返しているようでは、難しいと思います。
成長のためには投資が必要な面もあり、赤字を覚悟しなければいけない局面もありますが、赤字を長期間継続した後に黒字化して、成長した企業はそれ程多くはないように思われます。投資家としては、赤字が予想外に長く続いている企業の投資は慎重に判断すべきであると考えられます。
表2は、東証マザーズ銘柄で3月、6月、9月、12月決算銘柄のうち、時価総額上位50社の中から、過去3四半期に営業増益が続いている東証マザーズ銘柄をご紹介したものです。これらの銘柄が今後も増益を続けていけるようであれば、近い将来、東証1部への昇格も夢ではないと思われます。
なお、東証マザーズで時価総額トップのメルカリ(4385)ですが、前期(2020/6期・通期)は193億円の営業赤字でした。しかし、2020/4〜6期だけ見ると9億円超の営業利益に黒字転換しています。市場コンセンサスでは2021/6期は43億円程度の営業赤字が残るものの、2022/6期は150億円超の営業黒字になると予想されています。この銘柄が果たして、市場の期待に応えられるか否かは、東証マザーズ市場全体のパフォーマンスにも大きな影響を与えそうです。
表1 マザーズ市場時価総額上位企業の四半期業績と決算発表予定日
コード | 銘柄名 | 決算期 | 決算発表予定日 | 株価(10/28) | 2020/4〜6営業利益 | 前年同期比 |
4385 | メルカリ | 6月 | 10/30 | 4,495 | 984 | 黒字転換 |
4478 | フリー | 6月 | 11/11 | 8,470 | -706 | - |
3923 | ラクス | 3月 | 11/12 | 2,212 | 909 | 78.6% |
4477 | BASE | 12月 | 11/13 | 11,760 | 702 | - |
4483 | JMDC | 3月 | 11/5 | 4,925 | 357 | - |
4488 | AIinside | 3月 | 11/11 | 60,000 | 247 | - |
4480 | メドレー | 12月 | 11/13 | 5,940 | 663 | - |
4485 | JTOWER | 3月 | 11/10 | 8,080 | 101 | - |
3966 | ユーザベース | 12月 | 11/12 | 3,730 | -288 | 赤字縮小 |
4475 | HENNGE | 9月 | 11/13 | 7,970 | 190 | - |
7779 | CYBERDYNE | 3月 | 11/13 | 744 | -211 | 赤字拡大 |
4053 | サンアスタリスク | 12月 | 11/11 | 2,838 | 248 | - |
4565 | そーせいグループ | 12月 | 11/11 | 1,286 | -691 | 赤字拡大 |
4593 | ヘリオス | 12月 | 11/13 | 1,900 | -918 | 赤字縮小 |
7157 | ライフネット生命保険 | 3月 | 11/11 | 1,632 | - | - |
8922 | JAM | 3月 | 11/10 | 115 | 2,028 | -3.2% |
2160 | ジーエヌアイグループ | 12月 | 11/13 | 1,953 | 445 | 3.5% |
4051 | GMO-FG | 9月 | 11/11 | 20,240 | 71 | - |
4449 | ギフティ | 12月 | 11/13 | 3,020 | 51 | - |
4448 | Chatwork | 12月 | 11/13 | 2,161 | 247 | - |
表2 直近3四半期で営業増益が続いているマザーズ銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(10/28) | 2020/4〜6営業利益 | 決算発表予定日 |
4385 | 4385 | 4385 | 4385 | メルカリ | 4,495 |
984 (黒転) |
10/30 |
3923 | 3923 | 3923 | 3923 | ラクス | 2,212 |
909 (5.4倍) |
11/12 |
4448 | 4448 | 4448 | 4448 | Chatwork | 2,161 |
139 (23倍) |
11/13 |
4308 | 4308 | 4308 | 4308 | Jストリーム | 3,670 |
240 (1.7倍) |
10/29 |
3998 | 3998 | 3998 | 3998 | すららネット | 5,690 |
107 (2.2倍) |
10/30 |
6195 | 6195 | 6195 | 6195 | ホープ | 5,690 |
937 (黒転) |
11/9 |
- ※表1および表2は、Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※2020/4〜6期の営業利益は百万円単位。表2のカッコ内は3四半期前の営業利益に対する比較を示しています。
- ※10/28(水)時点の情報をもとに作成されています。業績数字等は修正発表や決算発表等で変動する可能性があります。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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