日銀が大規模な追加金融緩和を決定
日本銀行が2014年10月31日に、大規模な追加金融緩和を発表しました。その内容は以下の通りです。
(1)マネタリーベースを、年間約80兆円ペース(約10〜20兆円追加)で増加させる。
(2)長期国債保有残高を、年間80兆円ペース(約30兆円追加)で増加させる。
(3)買い入れる国債の平均残高期間を7年⇒7〜10年に拡大させる。
(4)ETFおよびJ-REITの保有残高が年間それぞれ約3兆円(3倍増)、約900億円(同)増えるように買い入れる。
(5)新たにJPX日経400に連動するETFを買い入れの対象とする。
下の表1は、今回から買い入れ対象となった「JPX400」組入れ銘柄について、2013年4月4日に日銀が「量的・質的金融緩和を決定した翌日4月5日の始値から「1週間後(4月12日)」、また「日経平均が高値を付けた5月22日」までに、何%上昇したのかを示しています。銘柄掲載の順番は、1週間後の騰落率で高い順番になっています。今回も、物色される銘柄の種類に大きな変化はないとみられます。
広義の金融株、不動産株、建設株といった金融緩和で上昇しやすいとされる業種が中心です。また、金融緩和の結果、想定された外為相場の円安を先読みし、輸出株も買われています。
表1:「量的緩和第1弾」(2013年4月4日)後に上昇した銘柄(JPX日経400採用銘柄)
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 東証業種 | 上昇率 (2013/4/5 ⇒4/12) |
上昇率 (2013/4/5 ⇒5/22) |
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8697 | 日本取引所グループ | その他金融業 | 29.4% | 20.8% | ||
8604 | 野村ホールディングス | 証券・商品先物取引業 | 29.1% | 57.0% | ||
8572 | アコム | その他金融業 | 23.6% | 45.7% | ||
1808 | 長谷工コーポレーション | 建設業 | 19.1% | 55.3% | ||
7011 | 三菱重工業 | 機械 | 18.8% | 30.7% | ||
9831 | ヤマダ電機 | 小売業 | 18.6% | 6.7% | ||
8566 | リコーリース | その他金融業 | 17.8% | 21.2% | ||
2267 | ヤクルト本社 | 食料品 | 17.6% | 24.5% | ||
8267 | イオン | 小売業 | 17.4% | 7.0% | ||
6724 | セイコーエプソン | 電気機器 | 17.1% | 63.0% | ||
3003 | ヒューリック | 不動産業 | 16.7% | 16.4% | ||
6256 | ニューフレアテクノロジー | 機械 | 16.0% | 69.1% | ||
2181 | テンプホールディングス | サービス業 | 15.3% | 32.1% | ||
8848 | レオパレス21 | 不動産業 | 15.1% | 7.9% | ||
9022 | 東海旅客鉄道 | 陸運業 | 14.9% | 27.7% | ||
6302 | 住友重機械工業 | 機械 | 14.7% | 36.7% | ||
7752 | リコー | 電気機器 | 14.5% | 26.1% | ||
8750 | 第一生命保険 | 保険業 | 14.1% | 37.4% | ||
4004 | 昭和電工 | 化学 | 14.0% | 26.5% | ||
6503 | 三菱電機 | 電気機器 | 13.9% | 44.3% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
今回の追加金融緩和の影響は?
円安・ドル高進展で輸出株に追い風
表2は、今回の日本銀行の追加金融緩和を受け、同行のバランスシートがどう変化してゆくのかを示したものです。国債を中心に、これまで以上のペースで日銀の総資産が拡大することになります。一方、2014年10月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、米国の量的緩和は終了しました。原則、米国のバランスシート拡大は止まる計算です。これにより、中央銀行のバランスシートは、日銀が拡大、米国が横ばいとなる見込みなので、外為市場では一層の円安・ドル高が進むとみられます。こうした流れは、自動車や電気機器、精密、機械等の業種に追い風となります。
ETF、J-REITの増加ピッチ加速で金融、不動産に追い風
ETF、J-REITの買い入れ拡大により、証券市場および不動産市場の活性化が期待されます。その意味で証券株、不動産株には追い風になります。
期待インフレ率の上昇は日本景気の回復を後押しし、消費税率引き上げの角度が高まる。
今回の大規模な追加金融緩和を受けて、期待インフレ率が高まり、再び脱デフレへ向けた動きが強まると期待されます。それ自体は日本経済にプラス要因となります。なによりも消費増税の追加引き上げで悩む安倍政権にとっては、強い援軍になりそうです。
表2:日本銀行のバランスシート見通し(兆円)
2012年末 実績 |
2013年末 実績 |
2014年末 予想(当初) |
2014年末 予想(今回) |
今後の年間 増加ペース |
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マネタリーベース | 138 | 202 | 270 | 275 | 約80兆円増 | |
長期国債 | 89 | 142 | 190 | 200 | 約80兆円増 | |
CP等 | 2.1 | 2.2 | 2.2 | 2.2 | 現状維持 | |
社債等 | 2.9 | 3.2 | 3.2 | 3.2 | 現状維持 | |
ETF | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 3.8 | 約3兆円増 | |
J-REIT | 0.11 | 0.14 | 0.17 | 0.18 | 約900億円増 | |
その他含む資産計 | 158 | 224 | 290 | 297 | - | |
銀行券 | 87 | 90 | 90 | 93 | - | |
当座預金 | 47 | 107 | 175 | 177 | - | |
その他含む資産計負債・純資産合計 | 158 | 224 | 290 | 297 | - |
- ※日本銀行公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。