米中貿易摩擦の影響やそれに伴う世界経済の減速への懸念から投資に慎重になる企業が増えています。その一方で、企業が力を入れているのが株主還元の強化です。株主還元策といえば、海外では増配や自社株買いが代表的ですが、海外ではあまり多くない日本特有の株主還元策として忘れてはならないのが、株主優待です。
企業が株主優待を行う目的は様々あり、自社商品・サービスの宣伝や株主数の増加、株価の安定などが挙げられますが、充実した株主優待を行う企業や人気の商品を優待として配布する企業には継続的に買いが集まる可能性があります。
そこで、今回は株主優待に関連した投資戦略をご紹介します。eワラントの活用やちょっとしたコツで必要以上のリスクを取ることなく株主優待取りを行うこともできます。ぜひ最後までお読みください。
株主優待狙いのリスクにeワラント |
配当・株主優待の権利を得るには、権利確定日の2営業日前である権利付き最終日までに株式を購入している必要があります。12月の権利確定日は30日(月)、権利付き最終日は26日(木)です。権利付き最終日の翌営業日は権利落ち日と呼ばれ、理論的には配当相当の金額分、株価が安くなります。
権利付き最終日までに現物株を購入して株主優待の権利を得ても、権利落ち日の株価下落で損が出てしまっては本末転倒です。そこで、信用売りを同時に行うことで株価変動リスクを相殺し、株主優待の権利だけを得るクロス取引(つなぎ売り)が広まりました。価格変動リスクを補い、欠点がないように見えるクロス取引ですが、実は大きな落とし穴があります。
証券会社は信用買いの買付代金や空売りのための株式を保有しているものの、信用取引が盛んになると日本証券金融(日証金)を通じて不足した資金・株式を調達します。制度信用取引の場合、信用売り残高が信用買い残高を大きく上回るようだと、株不足の解消に向けて日証金は機関投資家等から株式を借りる必要があります。この際の調達コストを、「逆日歩」として空売りを行っている投資家が負担する必要があります。逆日歩は日々の入札の結果で決まるため、いくら発生するかはわかりません。
株主優待狙いのクロス取引のように、信用売りが集中すると、逆日歩はそれだけ高くなる可能性があります。また、逆日歩は受渡日ベースで計算されるため、土日・祝日を挟むとその分だけ積みあがります。1,000円相当の株主優待を狙って、20,000円の逆日歩で大損…ということもあり得るわけです。また、逆日歩のない一般信用取引というものもありますが、貸株料が高いことも多いようです。
保有株に対する下落の保険としてプットを組み合わせる戦略を何度か紹介しましたが、株主優待狙いの買いとも組み合わせることでも同様に効果を発揮します。12月優待銘柄の例として、JT(2914)をみてみましょう。JT プット 124回の場合、1ワラント当たりの原資産数は0.01、デルタは-0.46(3日16時時点)です。株主優待目的で現物を100株購入したとすると、
100 ÷ 0.01 ÷ -0.46 = -21,739.13
同銘柄を22,000ワラント(eワラントは1,000ワラント単位での取引のため)購入することで、ほぼ株価変動リスクを抑えることができます。
下記はeワラントでプットを取り扱っている12月優待銘柄の一覧です。
ただ、eワラントは時間による減価があるため、できるだけ満期日までの期間が長い銘柄を選ぶ必要がある点や、信用取引の現渡しによる決済とは異なり、保有する現物株・eワラントをそれぞれ決済する必要がある点には注意してください。
長期保有が条件でも… |
株主優待の権利を取得してすぐに株式を手放してしまうクロス取引は、企業が株主優待を行う目的に反しているといえます。そこで、株主優待を本来の目的で行うために一定の期間継続して株式を保有すること(長期保有)を条件に加える企業も増えています。例えば、JT(2914)は、1年以上継続して保有していることを条件に、保有株式数に応じた優待を贈呈しています。
実は、長期保有を条件とした優待を、クロス取引のように株価変動リスクを抑えて得る方法もあります。例に挙げたJTの場合、1年以上の継続保有を「同一株主番号で、3月31日現在、6月30日現在、9月30日現在及び12月31日現在の株主名簿に、連続して記載されていること」と定義しています。ここでネックとなるのが、「同一株主番号で」という点です。株主名簿からは、株式を全て手放した時点で名前が消え、新たに株式を取得しても前回とは記載される株主番号が異なります。そのため、仮に各四半期末にクロス取引を行ったとしても、「同一株主番号で」という条件は満たせないわけです。では、どうやって株価変動リスクを抑えつつ継続保有の条件を満たせばよいのでしょうか。ここで利用するのが単元未満株(端株)です。
1株でも保有していれば株主名簿に記載され株主番号が維持されることを利用し、単元未満株を継続保有しつつ権利付き最終日に株主優待に必要な量の取引を行えば、クロス取引に近い感覚で株主優待を得ることができます。もちろん、1株は保有し続けることになるため多少の株価変動リスクは負うものの、最低単元(100株)を持ち続けるほどではなく、拘束される資金も抑えることができます。ただ、継続保有の条件は企業によって異なり、最低単元の保有を求める企業もありますので注意が必要です。
12月の株主優待銘柄はそう多くありませんが、株主優待を狙いつつ、3月末・9月末に向けて優待銘柄の単元未満株を仕込んでおくのも有効かもしれません。
今回のコールくん、プットくんの注目銘柄 |
コールくんが選ぶ〜注目銘柄
JTは高配当銘柄として有名だね。12月末の配当を前に、配当利回りの高さが改めて評価されそうだね。権利付き最終日までに株価がじわじわ上昇していくことを想定しているよ。
株価水準に近い行使価格の銘柄を選んだよ。
時間による減価もあるので年内には手仕舞いたいね。
6円台での売却を目標としているよ。
- ※あくまでも現在の市場動向から推測した目安であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
この銘柄を見た方が他に見た銘柄
花王 コール 第24回
サイバーエージェント コール 第121回
- ※コメント作成時、eワラントホームページのアクセス状況に基づきます。
プットくんが選ぶ〜注目銘柄
日経平均が23,500円レベルで伸び悩むなか、米中懸念からNYダウが下落を見せたよ。日経平均はハイテク株の寄与度が高いことで知られているけど、このところの上昇を支えていたのは実は医薬品なんだ。いったん調整をみせるなら医薬品が先行しそうだね。
満期日が遠くて権利行使価格の高い銘柄を選んだよ。
2週間程度の保有で一旦手仕舞いを予定しているよ。
1円台半ばでの売却が目標だよ。
- ※あくまでも現在の市場動向から推測した目安であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
花王 プット 第24回
サイバーエージェント コール 第121回
- ※コメント作成時、eワラントホームページのアクセス状況に基づきます。
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