先週は先々週のFOMCに対する株式市場の反応が過剰であったとみられ、景気敏感株に見直し買いが入ったうえ、成長株に対する物色も継続してS&P500指数は最高値を更新しました。今週は米国の経済指標、中国共産党100周年式典、株式の物色動向、などが注目されます。
今回はバイデン大統領のインフラ投資計画に進展があったため、実現する場合に恩恵が大きいと考えられる銘柄から、ユナイテッド レンタルズ(URI)、マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)、セメックス ADR(CX)、ニューコア(NUE)、チューター ペリーニ(TPC) を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 6.7% | 7.2% | 9.7% |
金融 | 5.3% | -2.4% | 7.5% |
資本財・サービス | 3.0% | -2.3% | 4.1% |
S&P500 | 2.7% | 1.8% | 7.7% |
一般消費財・サービス | 2.6% | 3.2% | 7.4% |
コミュニケーションサービス | 2.4% | 2.6% | 11.8% |
情報技術 | 2.4% | 5.1% | 9.4% |
素材 | 2.1% | -5.7% | 3.1% |
ヘルスケア | 2.0% | 2.0% | 7.4% |
生活必需品 | 1.8% | -0.9% | 2.2% |
不動産 | 1.3% | 3.6% | 11.9% |
公益事業 | 0.7% | -1.2% | 0.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ナイキ | 20.2% |
ウェルズ・ファーゴ | 11.1% |
テスラ | 7.8% |
バンク・オブ・アメリカ | 7.3% |
アメリカン・エキスプレス | 7.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
バイオジェン | -10.4% |
アマゾン・ドット・コム | -2.5% |
コムキャスト | -0.5% |
フィリップ・モリス・インターナショナル | -0.5% |
セールスフォース・ドットコム | -0.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
6/21(月)は前週に売り込まれていた景気敏感株を中心に大幅な反発となりました。FOMCの結果発表に対する株式市場の反応が過剰だったとみられます。一方、6/22(火)は大型のテクノロジー株が買われてナスダック指数が最高値を更新しました。
6/23(水)はパウエルFRB議長の発言を消化する中で小幅反落となるも、6/24(木)はバイデン大統領のインフラ投資計画の進展を受けて上昇、S&P500指数は最高値を更新しました。6/25(金)はFRBによる大手金融機関に対するストレステストの結果が公表され、株主還元への期待が膨らんだ銀行主導で続伸となりました。
S&P500指数は週間で2.7%、NYダウは3.4%、ナスダック指数は2.4%の上昇でした。
業種指数では、先々週に売り込まれていた「エネルギー」「金融」「資本財・サービス」など景気敏感業種が市場平均を上回る上昇となったほか、テクノロジー株が多く含まれる業種も比較的よく上昇しています。一方、ディフェンシブ業種や配当利回りが高い業種が相対的に弱くなっています。
個別銘柄では、ナイキ B(NKE)が大幅に上昇しました。6/24(木)に発表した3-5月期決算は、売上が前年同期比96%増、EPSは黒字転換となり、市場予想も大きく上回りました。製品イノベーションに加え、デジタル投資の成果が出ており、また、懸念された中華圏の売上も前年同期比17%増と好調だったことが株価上昇の背景とみられます。
経済指標では、FRBが物価指標として重視する米国の5月個人消費支出価格指数(コア)は前月比0.5%増(市場予想は同0.6%増)、前年比3.4%増(市場予想は同3.4%増)と予想並みでした。同指標が発表された6/25(金)の10年国債利回りは若干上昇し、1.5%台に乗せています。
米国の5月中古住宅販売件数は前月比0.9%減の年率580万戸と、4ヵ月連続の低下となっています。在庫不足が主因とされます。5月新築住宅販売件数は前月比5.9%減の年率76.9万戸と同2.1%減の予想を大きく下回りました。材料価格の上昇が需要を抑制しているとみられます。
今週の米国株式市場
米国の経済指標、中国共産党100周年式典、株式の物色動向、などが注目されます。
今週は米国の6月雇用統計、ISM製造業景気指数、消費者信頼感などの重要経済指標が発表されます。4月分、5月分と2ヵ月連続で市場予想を下回った非農業部門雇用者数が特に注目されます。過去1ヵ月にわたる米10年国債利回りの低下は、当面の景気ピークアウトを織り込んでいるとの見方もあります。その見方が正しいとすると、先行き株式市場にも良くないため、改善基調が確認できる数字が出る必要があるでしょう。
7/1(木)の中国共産党100周年式典では、習近平国家主席の演説で示される今後の指針に関して、政策スタンスが軟化する兆しがないか注目されます。先日のG7を舞台とする対中国包囲網を受けて、さすがに中国政府も現政策で突っ張るのは厳しいと考えるのではないでしょうか。中国共産党100周年の式典は、基本的にはこれまでの成果を国民にアピールする場ですが、もし政策軟化の兆しがあればグローバル経済に大きなプラスと考えられます。
先週の米国市場では、テクノロジー/グロース株への物色が継続するとともに、インフラ投資計画の進展で景気敏感/バリュー株も反発しました。性格が両極端な投資対象を組み合わせる「バーベル型ポートフォリオ」が有効な局面となっている可能性がありそうです。同様の物色傾向が続くか注目です。
経済指標では、6/29(火)に米国の6月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の117.2から119.0に改善の予想)、6/30(水)に中国の6月製造業・非製造業PMI(製造業は前月の55.2から55.3へ改善の予想、非製造業は前月の51.0から50.8に低下の予想)、米国の6月ADP雇用統計(前月比55万人増の予想)。
7/1(木)に日本の6月日銀短観(大企業製造業DIは前回の5から16に改善の予想)、米国の6月ISM製造業景気指数(前月の61.2から61.0に低下の予想)、7/2(金)に米国の雇用統計(非農業部門雇用者数は前月比70万人増の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、マイクロンテクノロジー、ゼネラルミルズ、コンステレーションブランズ、ウォルグリーンブーツアライアンスなどの発表が予定されています。
再び動き出したバイデン大統領のインフラ投資計画
バイデン大統領のインフラ投資計画は、以下の経過をたどっています。
・3/31(水) バイデン大統領が8年間で2兆ドルのインフラ投資計画を提案
・5/22(土) インフラ投資計画を1.7兆ドルに圧縮
・6/8(火) インフラ投資計画を巡る共和党との交渉が行き詰まり
共和党代表との交渉が行き詰まった後も超党派の上院議員グループとの交渉は継続していることが伝えられていましたが、6/24(木)バイデン大統領は、同グループとの暫定的な合意に達したと発表しました。
ホワイトハウスのリリースによると枠組みの規模は8年間で1.2兆ドル、既に予算に組み込まれている「ベースライン」が半分以上を占め、新規支出分は5,790億ドルとなっています。
財源については、内国歳入庁(IRS)による徴税強化(課税漏れを減らす)、新型コロナ支援金の未使用分、石油備蓄の放出などを組み合わせるとしています。
同案を実現するためには、民主党、共和党内での支持者拡大のための説得・運動が必要となりますが、一歩前進です。
今週の5銘柄
上述のインフラ投資計画の新規支出分5,790億ドルの内訳は図表3にお示しした通り、土木工事、建設工事、鉄道建設などに多くの資金が配分されています。
これらに関連する銘柄から、ユナイテッド レンタルズ(URI)、マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)、セメックス ADR(CX)、ニューコア(NUE)、チューター ペリーニ(TPC)を選んでご紹介いたします。
図表3 バイデン大統領のインフラ投資計画(上院議員グループと合意した概要)
※6/24(木)付ホワイトハウスのリリースをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/25) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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ユナイテッド レンタルズ(URI) | 312.97ドル | 14.9 | 【建機レンタルの最大手】 ・米国最大の建機レンタルの会社で、架空リフト、空気圧縮機、圧縮機、コンクリート機器、地ならし機、フォークリフト、発電機などを提供しています。米国49州に1,000以上の拠点を展開し、2020年の米国市場のシェアは13%で、2位のサンベルトの9%を大きく引き離して最大です。顧客別の売上は、非住宅建設(インフラ建設を含む)が49%、産業その他が46%、住宅建設が5%となっています。 ・2020年12月期はCOVID-19の影響もあって売上が前年比9%減、調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)が同10%減となりましたが、2021年12月期はそれぞれ前年比6〜11%増、同4〜9%増へ改善するガイダンスです。バイデン大統領が目指すインフラ投資計画が実現する場合、米国売上が9割以上を占めるため、恩恵が最も大きい企業の一つになると期待されています。 | ||
マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM) | 359.27ドル | 29.1 | 【建設骨材の大手】 ・米国南東部ノースカロライナ州に本社を置く、骨材(砂利、砕石)、セメント・コンクリートなど建設資材を供給する企業です。南東部、南部、中西部を中心に26州およびカナダなどに事業展開しています。18年4月に同業のブルーグラスマテリアルズを16.3億ドルで買収、需要拡大に対応するために生産能力を拡張しました。 ・2020年12月期の売上は前年比横ばいにとどまりましたが、2021年12月期は骨材の数量が前年比1〜3%増、平均価格が同3〜5%増と売上の伸びは回復する見込みです。1-3月期は売上が前年同期比3%増、主に価格上昇によって粗利率が17.8%へ2.9%ポイント改善したことで、EPSは前年同期比2.5倍となっています。バイデン大統領のインフラ投資計画が実現するなら、道路の補修は中心的な課題とされ、恩恵が大きいと期待されます。 | ||
セメックス ADR(CX) | 8.66ドル | 12.0 | 【セメント・コンクリートで米国2位のグローバル企業】 ・セメント・コンクリート、骨材を中心に世界50ヵ国に展開するメキシコのグローバル企業です。セメント・コンクリートでは米国で欧州企業のラファージュホルシムに次ぐ2位、世界でも5位に位置します。2020年12月期の地域別売上は、米国が31%のほか、メキシコ22%、欧州中東アフリカアジア34%、中南米11%、その他2%となっています。米国のインフラ投資計画が実行される場合は、業績拡大をけん引すると期待されます。 ・2020年12月期はCOVID-19のパンデミックによる混乱から売上は前年比1%減、営業利益が同3%増にとどまりました。2021年12月期のガイダンスは、セメント、コンクリート、骨材とも販売数量の増加を予想、営業利益は前年比18%増に相当する29億ドル以上を見込んでいます。 | ||
ニューコア(NUE) | 96.69ドル | 6.6 | 【米国最大の鉄鋼メーカー】 ・米国最大の鉄鋼メーカーで、2019年の粗鋼生産量は世界14位です。小規模な電炉による効率生産が特徴で、鋼板、棒鋼から加工品までを製造・販売しています。インフラ投資に使用される鋼材との関連性が高い鉄鋼メーカーです。 ・2020年12月期は、パンデミックによる打撃を受けて売上は前年比11%減、EPSは同43%減となりました。一方、2021年1-3月期は非住宅建設、自動車向けなどがけん引して電炉事業が好調で、売上は前年同期比25%増、純利益は9.4億ドルで四半期ベースの過去最高を記録しています。4-6月期も電炉事業の製品価格上昇とマージン改善により、過去最高の利益を更新する見通しです。 | ||
チューター ペリーニ(TPC) | 13.93ドル | 6.9 | 【鉄道建設の工事比率が高い】 ・建設中堅で、高速道路、橋梁、トンネル、公共事業、商業ビル、教育施設など幅広い工事の設計・施工・監理を請け負います。21年3月末の受注残81億ドルのうち、土木が59%、建設が20%、専門工事が21%を占め、土木の8割を占めて主力となっている公共交通機関向けが全体の48%を占めます。 ・1-3月期は、売上が前年同期比3%減、EPSが同4%減、2020年の売上が前年比20%増と伸びたことから期末の受注残は前年同期比23%減となっています。2021年12月期のEPSは前年実績の2.12ドルに対して1.8〜2.2ドルと中央値は減少の見込みです。一方、カリフォルニア高速鉄道など複数の大プロジェクトに入札していることから、今年度の受注は活発化する見込みです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2021年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
28(月) | ・モバイル関連見本市(MWC)(バルセロナ、7月1日まで) | |
29(火) | ・20ヵ国・地域(G20)外相会合(イタリア) ・米S&Pコアロジック住宅価格(4月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(6月) |
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30(水) | ・日本鉱工業生産(5月) ・中国製造業・非製造業PMI(6月) ・ユーロ圏消費者物価指数(6月) ・米ADP雇用統計(6月) ・米中古住宅販売成約(5月) |
マイクロンテクノロジー、ゼネラルミルズ コンステレーションブランズ |
7月 1(木) |
・日銀短観(6月) ・中国共産党創建100周年式典 ・財新中国製造業PMI(6月) ・OPEC総会・OPECプラス閣僚級会合(オンライン) ・米新規失業保険申請件数(6月26日に終わる週) ・米ISM製造業景気指数(6月) ・米自動車販売台数(6月、2日までに発表) |
ウォルグリーンブーツアライアンス |
2(金) | ・米雇用統計(6月) ・米製造業受注(5月) |
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5(月) | ・米国市場休場(独立記念日) | |
6(火) | ・ドイツZEW景気期待指数(7月) ・ユーロ圏小売売上高(5月) ・米ISM非製造業景気指数(6月) |
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7(水) | ・EU夏の経済見通し発表 ・米求人労働異動調査(5月) ・米FOMC議事要旨(6月15日、16日分) |
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8(木) | ・米新規失業保険申請件数(7月3日に終わる週) ・米消費者信用残高(5月) |
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9(金) | ・中国生産者・消費者物価指数(6月) ・中国資金調達総額(6月、15日までに発表) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成