米国企業の1-3月期決算はEPSが前年同期比8.7%減と低調ですが、株価は世界的な金融緩和の効果で比較的高いPERが維持されていると見られます。米国経済の先行きにより、米国株式市場について3つのシナリオを提示しました。3つのうち、景気回復の場合(ケースA)、景気減速が続く場合(ケースB)の可能性が高いと思われます。
今後の物色の方向性は市場がどちらのシナリオに沿った動きになるかで大きく異なると見込まれます。ただ、現状ではAになるかBになるかの見極めが難しくなっています。そこで今回はどちらか一方にベットするよりは、いずれのケースでもある程度の成果が期待できるよう、1-3月期決算が好調と考えられる以下の5銘柄をピックアップしてご紹介いたします。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価(5/10) | 52週高値 | 52週安値 |
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アマゾン ドットコム(AMZN) | 703.07ドル | 703.07ドル | 418.36ドル |
ファイザー(PFE) | 33.80ドル | 36.46ドル | 28.25ドル |
アルトリア グループ(MO) | 64.60ドル | 64.16ドル | 47.31ドル |
ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMY) | 71.53ドル | 73.06ドル | 51.82ドル |
マクドナルド(MCD) | 131.60ドル | 131.50ドル | 87.50ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米国株、決算後の3つのシナリオ |
終盤に近づいている米国企業の1-3月期決算は、EPSが前年同期比8.7%減(5/10時点)と過去2四半期よりも減少幅が拡大して低調でした。ドル高の影響が緩和したもののGDP成長率の鈍化で一部相殺されたと見られ、一気に回復とまでは至っていません。
米国株式市場の投資環境は、(1)世界・米国とも成長率が減速気味、(2)企業業績は停滞、(3)予想PERは17.8倍(5/10時点)で安くはなく、継続的に上値追いが期待できる状況ではなさそうです。
一方、米国を除く世界では強力な金融緩和が続いて投資資金は潤沢で市場センチメントは決して悪くなく、上記のような投資環境でもS&P500指数は最高値(2015/5/20の2,134.72ポイント)に近い位置をキープできていると考えられます。
米国株式相場の今後を考えてみると、相場の焦点になると考えられる米国経済の先行きによって、図表3に示したような3つのシナリオが考えられるでしょう。
「米国経済が回復」に向かうAのケースでは、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ期待が高まり、ドル高が進むことで一時的に株価は調整する可能性があるでしょう。その後は、景気回復を背景とした「業績相場」に移行して上昇すると見込まれます。景気敏感セクターやバリュー株が物色されやすいでしょう。
「減速傾向が続く」Bのケースは現状に近く、相場はもみ合いとなりやすいでしょう。ドル高修正が進む場合には、EPSが改善することでPERの割高感が解消、株価は上昇余地が出てくると見込まれます。物色はディフェンシブセクターが優位で成長株がアウトパフォームしやすいと見られます。
足元の経済指標の動きからはAまたはBの可能性が高いと見られますが、どちらに傾くかなかなか見極めがつかないというのが現状ではないでしょうか。そこで今回はどちらか一方にベットするよりは、いずれのケースでもある程度の成果が期待できるよう、16年1-3月期の決算動向がしっかりした銘柄をご紹介いたします。
図表2:S&P500指数の予想PERは緩和的な金融政策を背景に高水準が維持されています
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:米国株式市場の3つのシナリオ
ケース |
米国の景気動向 |
FRBの利上げ動向 |
米国株式市場 |
株式物色動向 |
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A |
年初の減速から回復へ |
年2〜3回 |
一旦反落? |
景気敏感 |
B |
減速傾向が継続 |
年内0〜1回 |
もみ合い |
ディフェンシブ |
C |
リセッション入りも懸念 |
年内0回 |
株価は調整へ |
高配当銘柄 |
- ※各種資料をもとにSBI証券が作成
1-3月期決算が好調な厳選5銘柄 |
S&P500指数採用企業のうち5/9(月)までに16年1-3月期決算発表が終わった443社について、以下の条件でスクリーニングを行っています。
【スクリーニングの条件】
(1) 1-3月期決算の売上は1%以上、EPSは5%以上、市場予想を上回った
(2) 1-3月期決算の売上は1%以上、EPSは5%以上、10-12月期の増加率から加速した
(3) 通期予想EPSの過去4週間の修正率がプラス
(4) 通期予想EPSが増加予想
抽出された銘柄を時価総額の大きい順に並べたものが図表4になります。ここにあがってきた銘柄はすべて注目できると考えられますが、今回は比較的に知名度があり時価総額が大きい5銘柄(赤字で表示)を取り上げてご紹介いたします。
全体の傾向としては、医薬品、医療機器、食品・飲料、レストラン、小売など、大雑把に捉えて消費関連の企業が多く抽出されています。産業景気の低調を受けて同関連企業は少ないものの、その中でここにあがってくるということは、個別に良い材料をもった企業だと考えられ、ハネウェル インターナショナル(HON)、E.I デュポン(DD)など注目できるでしょう。また、目に付くのが建材大手の2社、バルカン マテリアルズ(VMC)、マーチンマリエッタ マテリアルズ(MLM)が入っていることで、米国のインフラ投資市場の改善が窺えます。
今回のスクリーニングでは、(2)の条件により抽出から漏れましたが、フェイスブック(FB)の1-3月期決算は好調が目立っていました。今年の米国株式市場を牽引する代表的な銘柄として引き続き注目できるでしょう。
尚、前回の四半期決算レビューレポート「続くか!?米国株の反発。決算が突出して良い企業とは?」(2016/2/17掲載)で取り上げた5銘柄の株価騰落率を検証したのが図表5です。S&P500指数の上昇率8.2%を上回ったのは3銘柄で2銘柄は下回り、出入りが大きくなりました。フェデックス、ハスブロ、フェイスブックが上昇して、5銘柄の平均では12.6%と大きく上回っています。
図表4:1-3月期決算が良好な銘柄群
- 注:S&P500指数採用企業で5/9(月)までに決算を発表した443社が母集団です。「前期比変化(売上高)」は、{「1-3月期の売上増加率」-「10-12月期の売上増加率」}を計算したものです。「EPS修正率」「EPS増加率」は、通期予想EPSに関してです。表中の「黒転」は10-12月期の増益から、1-3月期は黒字転換していることを示します。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:前回(15年10-12月期)の決算レビューで取り上げた銘柄は平均でS&P500指数を凌駕
銘柄(コード) |
株価(2/17) |
株価(5/10) |
騰落率 |
---|---|---|---|
フェイスブック(FB) |
105.20ドル |
120.50ドル |
14.5% |
フェデックス(FDX) |
133.09ドル |
163.25ドル |
22.7% |
アルファベット(GOOG) |
708.40ドル |
723.18ドル |
2.1% |
ハスブロ(HAS) |
72.05ドル |
86.33ドル |
19.8% |
ウィンダムワールドワイド(WYN) |
68.94ドル |
71.72ドル |
4.0% |
5銘柄平均 |
- |
- |
12.6% |
S&P500指数 |
1,926.82 |
2,084.39 |
8.2% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注目銘柄のポイント |
銘柄名 | 株価 (5/10) |
703.07ドル | 予想PER (倍) |
68.2 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (5/10) |
33.80ドル | 予想PER (倍) |
13.8 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (5/10) |
64.60ドル | 予想PER (倍) |
21.1 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (5/10) |
71.53ドル | 予想PER (倍) |
27.6 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (5/10) |
131.60ドル | 予想PER (倍) |
23.7 | |
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ポイント |
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- ※注目銘柄(5銘柄)の株価週足チャートは、当社のチャートツールを用いて作成(2016/5/9時点)。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。