「情報技術」セクターの株価が大手企業を中心に好調です。4-6月期決算がドル高の影響が和らいでいることもあり、市場予想を上回っていることが要因です。また、「ポケモンGO」の世界的なヒットがAR(拡張現実)などの技術への期待を高めた可能性もあるでしょう。同分野は年末に向けて物色の柱になることが期待できそうです。個別銘柄はなかなか難しいという方には、下に挙げたセクター指数に連動するETFでも良いでしょう。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価 (8/2) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
フェイスブック(FB) | 123.09ドル | 128.33ドル | 72.00ドル |
アルファベット(旧グーグル)(GOOG) | 771.07ドル | 789.87ドル | 565.05ドル |
アマゾン ドットコム(AMZN) | 760.58ドル | 770.50ドル | 451.00ドル |
アップル(AAPL) | 104.48ドル | 123.82ドル | 89.47ドル |
マイクロソフト(MSFT) | 56.58ドル | 57.29ドル | 39.72ドル |
(ETF) | |||
バンガード 米国情報技術セクター ETF(VGT) | 114.63ドル | 115.91ドル | 77.11ドル |
テクノロジーセレクトセクターSPDRファンド(XLK) | 46.19ドル | 46.63ドル | 31.32ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
「情報技術」の株価が好調!! |
最近NYダウに対してナスダック指数の好調が目立っています。8/1(月)までNYダウが6日続落となっているのに対してナスダック指数は5連騰です。
ナスダック指数の好調には、情報技術銘柄とともにバイオ医薬品銘柄の回復も寄与していますが、今回は情報技術に絞って見てみます。
図表2はS&P500指数の情報技術の業種指数とS&P500指数の動向を比較していますが、S&P500指数が徐々に頭打ちとなる中、情報技術は高値を更新し続けて、力強い動きとなっています。
同指数の時価総額上位銘柄について、過去30日の株価騰落率を見たものが図表3です。情報技術指数の上昇率が7.9%であるのに対して、上位の主力銘柄は10%前後の上昇となっていて、アップル、アルファベット、マイクロソフトなど大型の銘柄が上昇を牽引していることがわかります。
久しぶりにテクノロジーの相場が来そうな気配もあります。好調の背景について確認してみましょう。
図表2:「情報技術」の株価が好調!!
- 注:最後のデータは8/1(月)です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:時価総額が大きい主力銘柄が牽引
- 注:8/1(月)時点のS&P500指数の情報技術業種指数の時価総額上位15銘柄です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
株価好調の背景は? |
情報技術大手の株価が好調な背景として、まず、4-6月期の好決算があげられます。
図表4は、情報技術大手の4-6月期決算について、実績の売上・EPS、前年同期比、市場予想からの乖離率、1-3月期の前年同期比と並べたものです。尚、アマゾン ドットコムは小売セクターに分類されますが、重要なネット企業でもあるため、ここに加えています。
図表の赤色でハイライトした「予想からの乖離」では、いずれも市場予想を上回りました。特に、インターネット大手のアルファベット、フェイスブック、アマゾン ドットコムは前年同期比2割以上の増収で、さらに1-3月期から4-6月期にかけて増収率が加速して文句のない好決算と言えるでしょう。
一方、アップルは減収・減益が続いて、増収率は1-3月期から4-6月期に悪化しています。しかし、4-6月期の実績は市場予想を上回り、7-9月期の会社ガイダンス中央値は4-6月期からマイナス幅縮小の見通しとなっています。1-3月期決算に対する失望が大きかったため、4-6月期が底入れの形となることはポジティブに捉えられるでしょう。
マイクロソフトも前年同期比の成長率は低いものの市場予想を上回り、成長が期待されているクラウドの売上改善がヘッドラインの数字以上にポジティブに捉えられているようです。
また、これら企業の業績に共通した要因として、ドル高の影響の緩和があると見られます。グローバルに展開しているため、昨年まではドル高の影響により売上・利益が目減りしていましたが、ここに来て前年同期比で横ばい程度となってほぼ解消しています(図表5)。
プロクター&ギャンブルやコカ-コーラなど同じくグローバル展開でも新興国の売上比率が高い企業は依然ドル高の目減りが大きくなっていますが、情報技術の企業は先進国の売上比率が高く、ドル高の影響の緩和度合いが強いと見られます。
もう一つ、情報技術セクターへの物色意欲が高まっている背景として、累計ダウンロード数が既に1億を超えたと言われ、世界的に社会現象となっている「ポケモンGO」の成功があげられるでしょう。
同ゲームには、カメラを通して見る現実の風景にコンピュータで画像や情報を重ね合わせて表示するAR(拡張現実)という技術が使われています。いままで考えられなかったような成果が出たことで、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、AI(人工知能)など、今後の成長を牽引すると注目されている技術に取り組んでいる企業への期待を高める効果があると考えられます。
アップルのクックCEOは「ポケモンGO」について、「革新的なアプリとエコシステムを開発して、世界に供給することができれば、どれほどのことが起こりうるかの証左と言えよう。」と称賛しています。
これらの技術に対する各社の取り組みを図表6にまとめています。「ポケモンGO」は消費者向けのアプリですが、これらの技術は産業向けにも広く応用が期待されるもので、非常に大きい市場を創造する可能性があると期待されています。
年後半の物色の柱として注目できるでしょう。年末のクリスマス商戦に向けて季節的にも同分野への物色は盛り上がりやすい時期と考えられます。
図表4:4-6月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回る
銘柄名(コード) |
|
4-6月期 |
4-6月期 |
4-6月期 |
1-3月期 |
---|---|---|---|---|---|
フェイスブック(FB) |
売上(億ドル) |
64.4 |
59% |
7% |
52% |
7月26日 |
EPS(ドル) |
0.97 |
288% |
18% |
83% |
アルファベット(GOOG) |
売上(億ドル) |
175 |
22% |
4% |
18% |
7月28日 |
EPS(ドル) |
8.42 |
48% |
5% |
14% |
アマゾン ドット コム(AMZN) |
売上(億ドル) |
304 |
31% |
3% |
28% |
7月28日 |
EPS(ドル) |
1.78 |
837% |
59% |
黒字転換 |
アップル(AAPL) |
売上(億ドル) |
424 |
-15% |
1% |
-13% |
7月26日 |
EPS(ドル) |
1.42 |
-23% |
2% |
-18% |
マイクロソフト(MSFT) |
売上(億ドル) |
226 |
2% |
2% |
2% |
7月19日 |
EPS(ドル) |
0.69 |
11% |
19% |
0% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:ドル高による業績の下押しはほぼ解消
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表6:各社のAR(拡張現実)・VR(仮想現実)・AI(人工知能)事業および取り組み
|
AR(拡張現実)・VR(仮想現実) |
AI(人工知能) |
---|---|---|
フェイスブック |
・傘下のOculus社がVRヘッドセット「Oculus Rift」を発売(16年3月)。360度カメラ「Surround360」を発表。 |
・ディープラーニングでテキストの内容を理解する人工知能エンジン「DeepText」を発表(16年6月)。メッセンジャーなどでテスト中。 |
アップル |
・ドイツのAR企業「Metaio」を買収(15年5月)、クックCEOは「ポケモンGO」を称賛して、この分野に多額の投資を行っていると発言(16年7月)。 |
・AIの新興企業「VocalIQ」を買収(15年10月)、音声アシスタント「Siri」の強化を狙っているとされる。 |
アルファベット |
・「ポケモンGO」を開発したナイアンティック社は同社から分離、出資している。 |
・AIを活用した「Google Assistant」を発表。ホームオートメーションの「Google Home」やメッセンジャー「Allo」に応用する。 |
アマゾン ドットコム |
・未参入ながら、関連特許の取得などから進出が予想されている。 |
・音声アシスタント端末「Amazon Echo」を販売中(14年11月〜)。 |
マイクロソフト |
・AR端末「HoloLens」を開発者向けに北米で限定発売(16年3月)。VRやAR技術普及に向け、半導体大手やパソコン大手など10社以上と提携すると発表。 |
・ツイッター上でツイートするおしゃべりボットの「Tay」を公開(16年3月)するも、不適切発言で調整中。 |
- ※会社資料、各種報道をもとにSBI証券が作成
注目銘柄のご紹介 |
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
16.12予 |
271 |
51% |
113 |
209% |
3.92 |
17.12予 |
364 |
35% |
150 |
33% |
5.07 |
株価(8/2):123.09ドル |
予想PER(16.12期): 31.4倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
16.12予 |
726 |
-3% |
238 |
48% |
33.96 |
17.12予 |
836 |
15% |
283 |
19% |
40.07 |
株価(8/2):771.07ドル |
予想PER(16.12期): 22.7倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
16.12予 |
1,365 |
28% |
53.1 |
786% |
10.79 |
17.12予 |
1,666 |
22% |
79.7 |
50% |
16.20 |
株価(8/2):760.58ドル |
予想PER(16.12期): 70.5倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
16.9予 |
2,155 |
-8% |
458 |
-14% |
8.28 |
17.9予 |
2,245 |
4% |
473 |
3% |
9.00 |
株価(8/2):104.48ドル |
予想PER(17.9期): 11.6倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.6予 |
941 |
10% |
226 |
32% |
2.89 |
18.6予 |
998 |
6% |
246 |
9% |
3.20 |
株価(8/2): 56.58ドル |
予想PER(17.6期): 19.6倍 |
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- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。