米国では11/24(木)は感謝祭の祝日で、翌日の「ブラックフライデー」から年末商戦が本格化します。10月の小売売上高が前年比4.3%増と14年来の伸びを示し、今年の年末商戦への期待は高まっていると見られます。さらに、法人税減税、米内需景気浮揚、ドル高というマクロ環境からも、「トランプ・トレード」の一環としても小売株は注目できるでしょう。今回はそのような観点から、以下の5銘柄をご紹介いたします。
図表1:注目銘柄のリスト
銘柄 | 株価 (11/23) | 52週高値 | 52週安値 |
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ホーム デポ(HD) | 131.21ドル | 139.00ドル | 109.62ドル |
ベスト バイ(BBY) | 46.96ドル | 46.98ドル | 24.96ドル |
メーシーズ(M) | 44.91ドル | 45.50ドル | 29.94ドル |
ロス ストアーズ(ROST) | 69.25ドル | 69.81ドル | 50.42ドル |
アルタ サロン コスメ & フレグランス(ULTA) | 262.02ドル | 278.62ドル | 146.77ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
「トランプ・トレード」でも注目の米小売株 |
米国では11/24(木)の感謝祭、11/25(金)のブラックフライデーから年末商戦がスタートして、小売セクターへの注目が高まる時期ですが、世界の金融市場を席巻する「トランプ・トレード」という観点からも注目できると考えられます。
トランプ次期大統領が、「法人税減税」「インフラ投資拡大」を打ち出したことで、景気浮揚への期待が高まり、長期金利が上昇して世界の資金はドルに集中し、ドルの総合的な価値を示す実効レートは過去最高を更新しています(図表2)。
米国株式は世界の投資家が注目し、見直す資産になっていると考えられます。ただし、急激なドル高はグローバル企業の業績にマイナスに寄与することが懸念され、また、トランプ氏の保護主義的な通商政策が貿易の混乱を招く可能性にも懸念があります。
そこで、世界で「1強」のドル資産を保有する手段として、米国の小売株に注目できるでしょう。
トランプ氏の勝利以来、米国では「トランプ・トレード」として、金融株やインフラ関連への物色とともに小型株への物色が目立っています。大型株の中では以下の点で小型株と同じような特性をもつため、今後小売株への物色が強まることが期待されるでしょう。
(1)米国事業の構成比が高い企業には法人税減税の恩恵が大きい
(2)米国内景気浮揚の恩恵を受けると期待される
(3)ドル高は米国民の購買力を高めるため恩恵となる企業も多い
例年、小売セクター指数のパフォーマンスは年末商戦が意識されて、10月、11月にプラスとなる傾向がありますが、今年の場合は10月にマイナスとなっているため、まだチャンスがありそうです(図表3)。
図表2:ドル「1強」で、ドル指数は高値更新!
- 注:ドル指数は、ユーロ、日本円、英ポンドなど主要通貨に対するドルの価値を示す指数です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:小売セクターの月次パフォーマンスを見るとまだチャンスが!?
- 注:S&P500指数の小売セクター指数(17業種分類)の月次パフォーマンスです。16年の11月は11/23までです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米小売セクターのマクロ環境は良好 |
米国小売セクターの事業環境を確認してみましょう。
足もとの米国小売売上高は改善しています。商務省発表の米小売売上高は15年前半から前年比1.5〜2.5%増のレベルを中心に推移していましたが、9月は同3.2%増、10月は同4.3%増と伸びが高まっています(図表4)。
マクロ環境は良好と考えられます。雇用の回復が続いたことで失業率は完全雇用に近いと言われる4.9%まで低下していますし、資産効果にも期待できる状況です。図表5の通り、住宅価格は前年比5%増前後で安定している上に、株価の前年比も改善傾向です。
FRB(米連邦準備制度理事会)が公表している家計の純資産に関する統計では、前年比伸び率は13年10-12月の13.7%をピークに低下基調をたどり16年7-9月期は3.1%まで低下していますが、10-12月には改善が期待できそうです。
当面の不透明要因であった大統領選挙を終え、また、想定外となったトランプ氏の勝利もその後の株式市場の反応などから安心感が広がっているようです。その政策は米国に景気浮揚効果が期待され、米国の消費者の心理も明るくなることが期待できるでしょう。
全米小売業協会が10/4に発表した年末商戦(11月と12月の売上合計による)の見通しは前年比3.6%増で、過去10年平均の2.5%、金融危機以降7年の平均3.4%を上回る堅調予想です。さらに、足もとの状況を考え併せると、この予想を上回ってくる可能性が高まっていると言えそうです。
図表4:米国の小売売上高は直近1年半にわたる停滞から脱出!?
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:消費に対する「資産効果」が期待できる状況へ!
- 注:住宅価格は、S&Pコアロジック住宅価格指数によります。直近値は、住宅価格が8月、S&P500指数が11/23(水)です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要小売企業から注目銘柄をご紹介 |
米国の主要小売企業から注目銘柄をご紹介いたします。
図表6に主要企業をサブセクターごとにリストアップしています。S&P500指数の24産業分類で「小売」および「生活必需品小売」を構成する40銘柄のうち、時価総額が100億ドル以上の29銘柄です。
銘柄選択は「米国の減税と景気浮揚からの恩恵が期待できる」「期待が高まっている年末商戦で恩恵を受けやすい」という観点から、(1)米国売上が80%以上を占める企業、(2)景気感応度がある程度高い業態(リストは上から下へ景気感応度が高いと見られる順に並べてあります)を条件としました。
このような観点から、住宅関連指標の上振れで注目されるホームセンターからホームデポ、景気感応度が高いと考えられる百貨店・アパレル小売から、足もとの業績は厳しいものの今後の改善が期待される百貨店のメーシーズ、今後景気浮揚から恩恵が期待されるアパレルディスカウンターのロス ストアーズ、年末商戦の売上貢献が高い家電量販店のベストバイ、米国の小売セクターを代表する成長企業である、化粧品販売のアルタ サロン コスメ & フレグランスの5銘柄を選んで、以下にご紹介しています。
尚、米国の小売セクターで最もトレンドが良いのはアマゾンドットコムで、今回の年末商戦でもシェア拡大が当然のごとく期待されています。また、その他にもインターネット小売には、大幅な売上増を遂げる魅力的な企業がありますが、今回は米国売上比率の観点から選んでいません。
図表6:米小売セクターの主要企業
- 注:データは11/21(月)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
銘柄名 |
株価(11/23) |
131.21ドル |
予想PER(倍) |
18.3 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(11/23) |
46.96ドル |
予想PER(倍) |
13.7 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(11/23) |
44.91ドル |
予想PER(倍) |
12.6 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(11/23) |
69.25ドル |
予想PER(倍) |
22.2 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(11/23) |
262.02ドル |
予想PER(倍) |
33.4 |
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ポイント |
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- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。